『川越の建物 蔵造り編』取材先の老舗店から手紙が届いた。
先日、原稿を持参したところ、タイミングが悪く、ご主人とお話ができなく、おそらく原稿の修正の件では…と、開封が怖くなった。
というのも、印刷会社への入稿・校正の締め切りが明日に迫っていたからである。
厳しいご主人のことを考えると、大幅なレイアウト変更や、大量の赤字修正も考えられる。
しかし、その予想に反し、手紙の内容大きく異なっていた…
この老舗店への取材は今からちょうど1年前になる。
全18箇所紹介する蔵造りのうちの取材1箇所目で、ご主人による丁寧な説明は多岐に渡り、建物の魅力を聴くことができた。
ただ、聴いた内容を原稿に記すのは1年前の段階では難しい状況であった。
正直、原稿にするための私の知識と情報が少なく、上手くまとめることができなかった。
これは建物や、ご主人が経営する業務、商品に対し、無知なため、これらを補完するためには徹底的に調べあげることが必要と感じた。
また、発行スケジュールの大幅な見直しを行うことにした。
そのため、これまで連日、図書館や博物館に通い、時間をかけて調べてきた。
調べていくと、建物で用いられている建材は、他の蔵造りにはあまりなく、その特徴や製造法など調べていくと奥が深いことに気付く。
また、ご主人が経営する業務や、取り扱い商品の歴史や製造過程などを追うと、歴史の変遷や、製法の特徴が分かり、新たな発見もあった。
建材ひとつにしても、その製造工程や、その過程で得られる素材の変化が、建物の特徴にも家主のこだわりにも繋がり、それが理解できると建物の部位を見るのが楽しくなっていった。
「この楽しさ、面白さを誰かに伝えたい。」
建物を見る面白さ・楽しさを上手くまとめ、読者に伝えるのが、本にする意味であり、「本づくり」の魅力でもある。
取材1箇所目でそのことを再認識することができた。
手紙には原稿への賞賛が綴られていた。
厳しいご主人からの賞賛には正直嬉しさもある。
それと、取材1箇所目で、様々なことに気付くことができた経験と、本づくりの軌道修正ができたことには、ご主人への感謝しかない。
建物の魅力、こだわり、また、それを見る楽しさを多くの人に届けられたら、という想いを込めた『川越の建物 蔵造り編』は9月30日発行。
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