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版画展に行って版画の魅力を感じた休日の午後

過去記事で2024年夏アニメ義妹生活すげーよかったという話をしましたが、そのイラストを担当されているHiten先生の版画展が秋葉原で開催されているという広告をyoutubeで見かけたので行ってきました。

https://hiten-event.net/

義妹生活はアニメやラノベの他、youtubeチャンネルを開設しています。私はアニメ後にチャンネルの動画を一通り視聴していたので、きっとその辺りが引っかかって広告が出てきたんでしょうね。まんまと釣られました。

今私の中で話題の義妹生活を担当されている、Hiten先生の版画展が開催中!という広告を目にしたら行きたくなりますじゃないですか。公式サイトを見ればちょうど秋葉原にて今週末まで(2024/10/21)ということだったので、ちょうど外出する予定に合わせて行けるな、と。
入場無料来場予約特典もあるということだったので、予約を入れて気軽な気持ちで行ってきました。

来場予約特典のクリアポスター


さてここで白状すると、実のところ版画という手法は小学校の図工の授業でやる程度の知識しかありませんでした。なので、版画展というものを今まで行ったことのあるイラスト展や原画展の延長みたいなものかな~という(今思えば的はずれな)認識だったんですね。
たまに有名なイラストレーターさんの版画展が開催されているという話題を見かけたことがある気がしますが、見に行くまでではありませんでした。

そんな認識のもとで今回の版画展でその版画作品たちを見たわけですが、正直いろんな意味で舐めてました。


版画という技法の魅力

まず一つが、昨今イラストを見る機会としてはデジタルイラストをディスプレイ越しが多いですが、版画ではそれらとはまた違う視覚体験でした。

絵の良さを表現する語彙をあまり持ち合わせていないので難しいのですが、一番わかりやすいところだと絵の立体感、奥行きが非常に表現されている絵になっているところでしょうか。
特に、公式サイトのギャラリーにある『Claire』は、背景の水槽の前に描かれている少女が本当に水槽の前に居るように見えており、なんだこれは……!と魅入られました。
会場スタッフの方から熱心に営業トークを受けたのですが、インクを何層も重ねて印刷しているので実際に立体的になっているとのこと。
ゲーム特典でよくあるタペストリーやポスターや複製色紙などはパッと印刷して(実際はそんな簡単ではないにしても)量産していると思いますが、それとは全く違う印象を受けますね。

紙だけでなく金属にも印刷した作品があり、今回よく拝見できた作品だと夜の水辺でランタンに照らされる少女とホタルを描いた『Hazy Light』がそれでした。
ベースが金属なので、照明を当てたときの印象がガラリと変わるんですよね。金属的な反射が見られたり、ランタンやホタルによって照らされた明かりの反射光のような色味が出ていたりと、紙に印刷する場合では決して見られないような印象がありました。

他にも独特な表現としてはラメが入っており、これも照明によってキラキラと光る効果になり作品の良さを際立たせていました。
公式ページのギャラリーにはない絵で、満開の桜を背景に大きく描かれた少女の絵(冒頭ポスト2枚目正面右奥)を近くで見させて頂いたのですが、桜の花びらを形作るようにラメが入っていました。これに照明を当てると、まるで桜の花びらから透けて見える太陽光のようにも見える表現に感じました。


『Hazy Light』と桜と少女の絵に照明を当てると~という話の背景としては、スタッフの方の営業トークの一環で、実際に展示しているサンプル絵をイーゼルに立てかけ、スタンド式のスポットライトを当てて頂く流れがありました。

冒頭で軽く触れましたが現代ではデジタルでイラストを見る機会が多いですが、それはイラストレイターさんが見せたい色が必ずしも再現できるわけではない、という話はよく聞きます。
その意味でも現物で絵を用意する意義はあるわけですが、版画の場合は照明の効果によってより色の深みが表れるようになる、という話でした。
残念ながら私の目と知識は色の良し悪しを判別し言語化できるような性能は持ち合わせていないので、照明を当てて見たときはなんかすごいきれい!みたいな言い方になってしまうのが惜しすぎるわけですが。
調べた感じだと、重ねられたインクの層それぞれが光に当てられることで反射光が複雑に重なり合い、独特の色味を作り出している、といったところでしょうか。

一般的なポスターや複製原画のような印刷物との一番の違いはここで、制作工程においては光を当てたときの印象を緻密に設計、監修されているとのことでした。
正直、これは現物を見てくれ、としか言えません。版画の魅力はその目で光を当ててみて初めてわかると言っていいです。
『Hazy Light』に限らず、現地で拝見した絵の魅力はディスプレイを通して見た公式ページのギャラリーで感じるそれの100倍はあります。
これだけでも見に行った価値があるのは間違いありません。

話の中でこれらの版画を自室に飾ったところを想像してみてください、という流れもあったのですが、考えてみるとめちゃくちゃいいな……となりました。
先ほど光を当てると素晴らしい、という話もしましたが、例えば夜、仕事から帰ったときの暗い部屋で版画に備えたスポットライトを点けて浮かび上がる版画とかいいですよ、と言われて、ああそれはすごくいいな……と。いいしかいえないのか?すまん

今回の訪問は予定と予定の間の空いた時間だったのでちょっと慌ただしかったのですが、そんな中でも素晴らしい絵を鑑賞することができたと思います。


版画のお値段


さて、先ほど多少含みを持たせた言い回しをしたところで、もう一つすごかったところの話。
下調べもせず何も知らずにこの版画展に参加したわけですが、展示されている作品の下にあるキャプションには作品名に加えてウン十万円というお値段が表示されていたんですよね。ウン十万円!?!?となったわけです。
先述したようにかなり軽い気持ちでイラスト展のイメージでいたので目ん玉飛び出ましたよ。

過分にして知らなかったのですが、アールビバンが主催しているアールジュネスの版画展は展示している版画の販売もそこで行っていたんですよね。事前アンケートで絵を買ったことがありますか?の設問があった意味がわかった瞬間です。
ただ、この価格感もあってか結構悪評が書かれていたことを帰路に調べていて知りました。なんなら詐欺とまで言われているところもあり驚くばかりです。

そういった評判を聞いた上で個人的な印象ですが、そんな言われるような悪いことは全然ないと思いました。むしろイラストレーターが魅せたい表現を版画として再現しており、その魅力を会場スタッフの方もよく理解されていると感じられました。
また、私自身スタッフの方との会話などを通してより版画の魅力を感じることができました。
確かに営業トークはかなりぐいぐい来るので押しに弱い方はビビるかもしれませんが、購入を強制するようなことはないです。

価格は確かに高いです、とてもわかる。給料ウンヶ月分はキツイ。

ですが、簡単に先述したように版画では通常の印刷物よりも色味について非常に精緻に表現することができる商品です。企画段階からイラストレーターの方が入って監修、修正しながら、職人の方が1枚ずつ丁寧に作成し、最後にその出来を改めて監修してサインとナンバリングを入れる、という工程を踏んでいるそうです。
1枚ずつ制作されるため量産できず完全受注生産で、制作期間も3ヶ月程度。たまに最後の監修でNGが出て再制作することもあるそうです。
絵の劣化についても考えられており、前面のパネルは当然UVカット、額縁は酸化剤を入れて完全密封されており、屋内に飾る場合では70年保つらしいです。聞けば、最近来られたある客は30年前にここで購入されたものをまだ飾っているとか(営業トークかもしれませんが、それくらいの自信を持っているということで)。

手間を掛ければいいという話でもないですが、実際に見た版画の魅力はその工程を踏んだだけはあると思わせるものを備えている、と私は感じます。
また、好きなイラストレーターの素晴らしい絵が劣化することなく自室に一生飾ることができると考えれば、決して高くもないんじゃないかなと思います。
あとほら、よくあるじゃないですか。クソな上司にイチャモンつけられても俺は家に帰れば数十万の素晴らしい絵を飾ってるんだぞってやつです。

まあいろいろ書いておきながら、時間の都合もあって今回は購入していないのですが。
数十万円をポンと買える側の人間であればよかったのですが、残念ながら普通の庶民なのでそうでもなく。
数千円で付くような特典とは違い版画は一種の芸術品だと思うので、頑張ってやりくりして買うものでもないでしょうし。

ただ個人的な考えとしては、ああいうすごい絵も1つくらい所有してみるのもいいな、となりました。
私の部屋も最近は気に入ったタペストリーやアクスタなんかを置いてQOLの高い環境にしていますが、もし様々な機会が重なって買える場面に合ったときは、その作品を自室のよく見える場所に飾ることで非常に高い充足感を得られるような気がします。
お金が全てではないですが、自分の価値観でもって数十万円に相当する価値を認めたものを所有している、デスクの前に飾っていつも目にすることができるのは心が満たされそうです。
あと、「うちには数十万の絵を飾ってるんだぜ!」って言ってみたい(最近の某40万こわいちゃんチケットでもらえる一点もの色紙を思いながら)。


版画展は見るだけでも楽しい

さて、いろいろお金の話はしましたが、版画自体の素晴らしさはもちろん、スタッフの方は非常に親切に解説、対応して頂けますし、営業トークは上手いですが無理やり高い買い物をさせられることもないので、版画展は購入するつもりがなくても楽しめる空間になっていると思います。
もしちょっと気になった方は(買うつもりがない場合は買わないと伝える意志を強く持って)訪問されてみるとよいのではないでしょうか。


最後に拙作ですが、義妹生活が良かったという過去記事です。

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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