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アンラベル・トリガー感想

まえがき

2024年3月29日にArchiveから発売された「アンラベル・トリガー」の感想(考察?)です。約1万文字

本編のネタバレがあるため、未プレイの方は注意してください。

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各ヒロインの歩んできた過去、そして未来に進むためのきっかけを順に確認していき、最後にアンラベル・トリガーとは何かを考えます。

記事内のスクリーンショットはすべてArchiveの著作物です。

レイリルート

■生きる道しるべとしての復讐

レイリは戦争によって両親を目の前で殺されました。そのショックは大きく、一度は線路に向けて一歩を踏み出してしまうほどに。かつてはプロ野球選手になる夢や情熱を持っていましたが、戦争によって未来への夢も希望もなくしてしまいます。
そんなレイリに若葉が提示した生きる目的が両親を殺したヴァンプへの復讐でした。戦争によって多くを失くしてしまったレイリにとっては、前に進むためにはたとえ復讐であっても未来に進むための道しるべとして必要なものでした。

しかし、常識で考えれば復讐、ヴァンプ殺しなんてものはやるべきではないし、レイリ自身そのことをよく理解しています。
その彼女の心を支えたのが若葉という親友、そしてカイです。
若葉はレイリに道を示した後も長い時間をともに過ごし、レイリの居場所であり続けていました。
レイリの話から、復讐という褒められたものではない目的に対して心無い言葉を何度となく掛けられたと思われます。また合衆国内では、ヴァンプへの憎しみで溢れていることも想像できます。
レイリがそれでも最後までヴァンプへの憎悪に呑まれず正しく復讐する道を進むことができたのは、空っぽだった心を埋めた若葉と過ごした時間があったためだと考えられます。
また、若葉以外で復讐を初めて応援してくれたカイにも勇気づけられています。
カイ自身が紗衣奈を殺すことを目的にしている、ということもありますが、それ以上にレイリにとって復讐が必要なものだったことを認めてくれたのです。倫理的にアウトであっても、未来に進むために必要なものだとレイリが信じている、その心を理解してくれたことでレイリはその決意を新たにしました。

Reiri First Episode

■新しい夢

蓋を開けてみればレイリの復讐の真実はとてもあっけないものでした。
その真実を前に、レイリは再び心の中に空虚を感じてしまいます
復讐のために生きてきたこれまでに意味はなかったのか。
それに対して、今度はカイがレイリに意味を与えました。道しるべにしていた目的を達成することはできなくても、復讐を頼りに今日まで生きてきて、ここにいる。それだけで十分だと。
戦争によって両親を亡くした当時とは違い、今のレイリには若葉やカイ、それにミリィたちも居ます。レイリ自身も自分の力で立って前に進めるだけに成長できました。かつてのレイリが復讐を目標にして歩みを進められたことで、この未来まで繋げることができたのです。

では、復讐を終えたレイリにとって次の目標として何を見つけたのか。
それは、戦争を止められる国作りでした。
幸運にもレイリは、戦争に巻き込まれながらも復讐を道しるべに今日まで生き、そして過去の憎しみからも解放されて明日へと進むことができました。
それはレイリが、復讐を目的にしていながらも、その本質である未来へ続く道を進む意思を失わなかったからでした。
しかし、世情を見れば多くの人は戦争によって大切なものを亡くしたまま、その憎悪をなくせず過去に囚われたままといえます。カイがレイリの復讐を肯定したように、その憎悪もときには必要なものですが、それだけで生きることは困難でもあります。
そうした過去への復讐を生むことなく、平和な世の中で未来への夢を持って人々が生きていける、またそんな夢を新たに見つけられる国を作ることが、過去と決別して明日へと進み始めたレイリの新しい目標となりました。


ソフィアルート

■高い志を支える建前

ソフィアもまた革命という戦火によって両親や祖国を失った一人でした。
革命によって祖国や両親、そして名前すら失ったソフィアは、首都から逃れる際に両親に残された、ルーラー帝国の栄光を取り戻せという言葉だけを拠り所に、長い時間をかけて緻密な準備を進めてきました。
また、ルーラー帝国の復興という希望は、革命によって訪れた連邦の腐敗政治に絶望していたアリーシャにも進む道を示します。

さて、ではその帝国復興の夢はソフィアにとっても希望だったのか。ソフィアはいくつかのシーンにおいて、自身の道について疑問を持つ素振りが見られます。

カイがルーナと飲み仲間であることを見たソフィアは、自分のするべきことが正しいのかと考えています。加えて、カイの紗衣奈への復讐が亡くなった仲間のためでなく自分のためであると語ることに対しても羨ましいと口にしています。

Episode 5

また、カイのノーブルによって自身が何らかの操作を受けていた可能性に至り、そのときはカイを殺すと言ったときの表情は、そこはかとなく悲しげなものでした。普段は目的の障害になるならばカイでも切り捨てると言いながらも、いざそうなったときに天秤にかけられる程度の夢とも言えます。

それらのことから、ソフィアにとって帝国復興は、皇族唯一の生き残りとして託され、またアリーシャのように現状を憂い復興に希望を見た同志を導くための目標、建前だったのだと考えることができます。

■本心に向き合ったことで生まれた信頼

ソフィアが多くの建前で対人関係を築いていたのは彼女の環境において周りは敵だらけ、一歩間違えればすぐに粛清されるものだったことがあるでしょう。それによってソフィア自身が自らの本音や感情に関心が薄くなっていました。そんなソフィアにとって本心に向き合うことは簡単なことではありません。
ではその切っ掛けが何かといえば、やはりカイのノーブル解除のシーンでしょう。
カイのノーブルは対象の記憶を操作するものであり、ソフィアは自身の意思に疑問を抱くようになりました。実際にはソフィアへのカイの信頼はノーブルを解除したとしても消えるものではありませんでしたが、そこでソフィアは自分自身の本心や信頼という曖昧なものに否応なく向き合うことになったのです
最初は計略で互いに利用し利用される関係ではありましたが、長い時間を共に過ごしたことでカイの意思の強さに信頼を寄せられるようになっていました。

本心に向き合い信頼するという振る舞いはそれまでのソフィアになかったものです。
側近であるアリーシャをソフィアは頼りにしているようではありますが、それでもアリーシャはソフィアの道に希望を見た側です。それ故にソフィアは、自分が進む道に対して抱いた不安は(たとえ察せられたとしても)アリーシャには見せられないでしょう。
アリーシャたち同志に見せるようなソフィアの人々を導くような強い側面だけでなく、進む道への不安や格好悪いところ、弱い側面を共有できる存在としてカイが居てくれることに、ソフィアは支えられ勇気づけられました。

さて、信頼する、とはどういうことか改めて考えてみます。
ソフィアが独立戦争を始めた後、紗衣奈と行動を共にしたカイは、ソフィアを信頼する考えについて「受け身じゃない、信じたいから信じる」と述べています。

また、進退窮まった段階でのミリィの提案に対して、ソフィアは理屈ではなくミリィの想いを信じてみたいと言いました。

このことから、信頼とは相手の意思の強さを頼りに信じて託す心を指しているように感じられました
紗衣奈が最後にカイを庇ったことについても、カイを通して見たソフィアの道を信じられたからこそ、ソフィアにとって大切なカイを庇い未来を託したのではないか、と考えることができます。
未来に進もうとする自らの意思のもとで交わした互いを信頼することで得られたカイやミリィたち仲間とともに、ソフィアはよりよい明日を目指す一歩を進むことができたのでした。


ミリセントルート

■ミリィ自身の平和を望む意思

ヴァンプの国である帝国とヒュームの国である合衆国は過去の戦争によって互いに憎悪を向ける世論が主流になっていました。その中でミリィは帝国の皇女でありながら様々な種族が手を取り合える平和な世の中を目指している異端な少女です。
しかしながら、ミリィを傍で見たカイをはじめ、レイリやソフィアですら、ミリィの平和を求める意思の強さや行動力を物語の序盤から強く感じ取っています。
実際、ミリィが無力感を悔いながらも平和のために政治を志したように、レイリもまた両親を救えなかった無力な過去と決別し合衆国の政治家を目指し始めました。また、疑うことが常だったソフィアは、強い意志を持ちながら友人としても気安く信頼を寄せてくれるミリィに憧れてもいました。

完璧ともミリィの理想を求める姿はしかし、明かされた過去の真実によって揺らぎます。孤独な中ミリィの理想を応援してくれていた母親は裏で孤児を殺戮しており、種族が違っても同じ人なのだと気づくきっかけとなった紗衣奈は今やテロリストです。
理想の元となった過去は虚像であることを突きつけられたミリィは、しかし皇女として真実に向き合い、最後には自身の信念を改めて立て直すことができました。
それは、過去に導かれた道を断ち切る強い意思に加えて、ミリィ自身がこの中立特区で出会い、話し合い、交友を深めてきた経験があったためです。
幼いミリィが今日まで理想の道標にしていた母親は紗衣奈の言葉ではなく、中立特区で過ごしたミリィが、自身の経験から感じ取った意思をもって改めて平和を望み平和のために進む決意を新たにしました。

■皇女としての選択

レイリルートやソフィアルートと同様に、ミリィもまた過去と決別し自らの本心に向き合うことで未来に進む意思を固めました。
しかし、現実はミリィの決意一つですぐに変わるものではなく、合衆国と連邦の密約により帝国への軍事侵攻が計画されており、すでに止められない事態にまで進行していました。再びミリィは皇女として現実に向き合い、そしてヴァンプという種族を残すために争いの道を選択します。

世界は様々な人がそれぞれの意思や理想をもって複雑に関係しながら構成されています。
多くの人は建前上は平和や安寧を望みながらも、心の内は争い憎悪する相手を排除したいという考えに囚われています。合衆国のヴァンプ憎しという民意、そして領地拡大を目指す連邦を前にして、ミリィの相互理解や協調による平和への道へ人々を導くことは困難を極めます。
ミリィが中立特区で過ごしたように時間を掛ければ可能性はあるかもしれませんが、こと目前に迫っている戦争への対処としてはあまりに無力でしょう。

そして、ミリィはただの平和を理想とする少女ではなく、帝国民を導く第一皇女という側面も持ち合わせています。
いつか訪れる理想のもとに争いのない平和を説くために対話をするのか、今ここにいる国民を救うための行動をとるのか。この二つの道を前にして、ミリィはミリィとしての本音や感情を押し殺し、皇女としての建前と理性でもって現実を選択したのです

平和を訴えてすべてを救う理想の道を探し続けることを諦め、隣の人を突き落としてでも多くの人を救う現実の選択は、ミリィが進み始めた平和のための争いのない道とは相反するものです。その現実にミリィは激しく苦悩し、その重さに耐えかねて処刑されることで現実から逃れようとするほどです。その意思は固く、ミリィを最も傍で見ていて幸せを願うシルヴィアの訴えであっても変えることはできません。
しかし、ミリィが誰よりも平和を望んでいたことをカイたち全員が知っており、誰しもがミリィに生きてほしいと願いました。
では、自ら選んだ平和への道を諦め再び理想を失ってしまったミリィに生きるという選択をさせるために必要なものはなにか。それは、残されたヴァンプを導く希望としてのミリセント・フリード・レオンハルトという道でした。

Millicent Last Episode

平和という理想は遥か遠く、それに対して今のミリィはあまりに小さく弱く、現実を選ばざるを得ませんでした。
しかしそれは、理想を諦めたのではなく、いつか理想に届くための明日に繋がる選択だったとカイたちは信じています。それを伝え、再び理想を求めるミリィを支えるために、ミリィが明日を生きる建前を用意したのでした。
カイの言葉を受け取ったミリィは、今日の選択の後悔に涙を流し、そしてミリセントとして生きる道を選んだ弱い今をいつか過去にするために、再び明日へと進むことを決めました

■空が黒くても手を伸ばし続ける

人が人である限り争いは終わることはなく、ミリィの進む未来には再び今回のような選択を迫られることがあるでしょう。その度に、ミリィはミリセントとして現実を選び、そして救わなかったヴァンプの命を捨てずに背負い続ける地獄の道を歩まなければなりません。

それでも、カイがミリィの隣りでその手を取っていてくれるならば、ミリィとしての理想を見失うことなく争いの続く現実においても戦い続けることができる、その覚悟と強さをミリィは手にしました。


アンラベル・トリガー

アンラベル・トリガーとは何か。
アンラベル(unravel)の辞書的な意味は「(もつれた糸などを)解く」というものです。また、作中ではヴァンプを殺すための弾丸だとされています。
ところで、ヴァンプ、吸血鬼を殺す弾丸といえば銀の弾丸、シルバー・バレットがありますが、本作ではこれをアンラベル・トリガーと呼びました。
では、なぜ本作ではヴァンプを殺す弾丸をアンラベル・トリガーと称し、また作品タイトルにしたのかを考えてみます。

まず、作中においてミリィにアンラベル・トリガーを渡した紗衣奈もまた、ミリィと同じように平和な世界を志して行動をしていました。ただし、紗衣奈の選んだ方法は争いのもととなる人々すべてを滅ぼすもので、争いのないだけの世界を実現しようとしたものです。
確かに紗衣奈の示した道は問題そのものを無くすという最強の方法であり、困難な問題に対する特効薬としてのシルバー・バレットそのものとみなせます。
ですが、それは同時に未来に続く道すらも絶つ方法です。
レイリ、ソフィア、ミリィ、そしてカイは中立特区で過ごす中で、過去を乗り越え、未来への希望を見つけて前に進むことを選べる強さを身につけることができました。そんな彼らにとって、紗衣奈の提示する未来のない道は受け入れる必要のないものです

一方で、ミリィの選択した道は、何としてでも種族を存続させ、いつか訪れる平和のためにあがき続けるというものでした。この道はカイが認め紗衣奈が指摘しているように、人と人の間で争いがなくなることがない以上、絶対に叶わない理想を掲げて進む道です。
沢山の人が住む世界において人の数だけ意思があり、それらは複雑に絡み合っています。その関係をすべて解消することは不可能でも、少しでも多くの人が互いのことを理解して問題を解決し、よい未来を選べるきっかけを誰もが見つけられる世界を目指そうとしたのがミリィの理想です。
この、多種多様な人々の間で複雑に絡み合った関係を解きほぐす引き金こそがアンラベル・トリガーであり、ミリィが目指す明日だと考えることができます。


補遺:紗衣奈の選んだ道

最後に、個別ルートが実装されていないだけで実質的にメインヒロインである紗衣奈について考えていきます。

共通ルートEpisode 1で意図的に描かれていましたが、ミリィと紗衣奈には多くの共通点が見られます。平和を実現したいという理想にはじまり、その意思の強さを感じさせる言動に対して、カイは昔の紗衣奈の姿をミリィに重ねて見ています。
では、紗衣奈はなぜ昔の仲間を殺害し、カイと敵対する道を選んだのでしょうか。

紗衣奈は自身の目指す平和の姿として、争いを起こす人間をすべて滅ぼすことで争いの種そのものを絶った世界を描きました。
さて、紗衣奈はこの道を自分の意思で選んだのでしょうか
紗衣奈がミリィルートの最後の最後まで本心を隠し通したことからも、一見すると紗衣奈が誰にも助言をもらわず自分の意思で選んだようにも考えられます。
しかし、紗衣奈のノーブルやカイとの約束を考えれば本当に望んだ形ではなかったことが伺えます。

紗衣奈はノーブルによって相手の思考を読むことができました。この能力によって、紗衣奈は相手が望むように振る舞うことができていましたが、このことで多くの人が紗衣奈の意思とは無関係に彼女に希望を見るようになりました
成長したミリィほどの強さを持っていてなお、戦争において救いを求めるであろう帝国民すべてを救うことを諦めざるを得ませんでした。また、合衆国大統領のジョージ・パーカー氏は民衆の声に一度は誤った選択を下しそうになり、帝国のハインツ皇帝も争いを望み続ける帝国民に自身の力のみで平和を説くことを諦めていました。
それほどの困難に対して、紗衣奈は幼い頃から晒され続けていたことになります

もしここで、紗衣奈がカイやナトレといった当時の仲間に相談する勇気があればよかったかもしれません。或いは、恋心を寄せていたカイだけだとか自分にとって大切な人にだけ応えられればいい、といった(今のカイのような)境地であれば別の道もあったでしょう。
しかし、紗衣奈は持ち前の優しさとおそらく幼さからくる純粋さから、すべての人に応えたいという気持ちを捨てきれなかったのだと思います。そうして長い時間向けられ続けた希望に応えようとした結果、紗衣奈自身の意思は押しつぶされてしまったかもしれません。
そして、不幸にも単独の戦闘力が半端に強く、加えて向けられた希望と同量かそれ以上の人の悪意に触れ続けたため、紗衣奈はあの道を選ばざるを得なかったのかもしれません。

そんな彼女にとって最後までなくさずに持ち続けた自分の意思が、幼い頃にカイと交わした約束であり、紗衣奈が選んだたった一つの未来だったと考えることができます。そうであれば、どのルートでも最後まで紗衣奈がカイとの約束にこだわったのも納得できます。
一方で、紗衣奈にとってはこの約束しか道がなかった、という見方もできます。進む道の選択という側面で各ルートのヒロインを思い返すと、今に至るまでの道を必ずしも自分で選べたわけではなく、物語を通して過去の自分と決別し未来への道を自らの意思で選ぶことができるようになったと見ることができます。
そのことを踏まえるとミリィルートでの紗衣奈の最後は、過去のカイとの約束でもましてや彼女に向けられ続けた希望や悪意でもない、本当の彼女自身の意思で未来に進み始めた姿だったと考えることができます。



雑感

以下はとりとめのない感想です。

■ソフィアかわいい

マイベストヒロイン

ソフィアが本心や感情とは対極の建前と理性側に置かれて物語がスタートするので、それらに初めてちゃんと向き合ったときの反応は初々しく大変かわいらしい様子でアリーシャさんといっしょにあらあらうふふという感想が溢れかえってました。かわいい。モーニングコールして。

■ヴィルレーベン卿かっこいい

マイベストサブヒロイン

ヘンリエッタ・フォン・ヴィルレーベン卿、ルートによって敵になったり味方になったりするにもかかわらず、彼女自身の信念は全く振れていないと感じさせるテキストは素晴らしいと感じました。主義主張が異なってもミリィの立ち振る舞いは認めていたし、ミリィルートの終盤ではそのミリィの覚悟に対して心からの忠誠を誓う様に、ヴィルレーベン卿の強い意思が見られて信頼できます。
あとノーブルがかっこいい。血の弾丸はロマン。

■ナダル・カーストン

ミリィルートの最後に、ナダル・カーストンがカイに対して父親らしい仕草をしたって匂わせてましたが、ソフィアルートでしっかり「ヴァルター・フォン・ゲーテル」と名前が出てましたね。

ミリィルートではこの記憶がなかったので、思わせぶりな地の文に「まさか??????」となり、豪華版特典の資料集に父親ですと明記していて驚いていました。
ところで、3つのルートの共通する点として、どのヒロインとも最初は両親から道を示され、その先で改めて自分の道を歩み始めたという構造を見ることができます。特にミリィはその道を父親である皇帝にぶつけており、皇帝は種族を未来に繋げる可能性の賭けに勝った様を見ることができました。これをナダルくんとカイに当てはめるなら、本当の息子を導けなかった代わりに遺伝的息子であるカイに、自分の息子に託したかった道の先にあったかもしれない可能性を見たかったのかもしれません。感傷……

■争いの止められる国

レイリルートの最後に、レイリは「合衆国を、戦争を止められる国にした」という夢を語りました。
この「戦争を止められる国」という表現は中々によくできているな、と思います。争いのない国を目指すならば「戦争のない国」という方が直接的だからです。
そうではなく”止められる”国としたのは、人と人の間で争いを無くすことが現実的ではないことを踏まえているように感じます。
人の間で争いがなくなることはないという現実を踏まえた上で、できる限りの行動をして戦争のような悲惨な事態に陥ることを防げるようにしたい、という強い覚悟が見えました。

■春の訪れ~スノウドロップいいよね

アンラベル・トリガーの楽曲はどれも最高で無限に聴けますよね。
その中の1曲として、レイリ、ソフィアルートエンディングで流れたスノウドロップの話をします。

中立特区はアーマゲドンの影響で一年中冬が続き雪が積もっています。
そこで、スノウドロップのラスサビ最後のフレーズである「雪解けの轍に春風が舞う」です(聞き間違いでなければ)。
轍とは車などの車輪が通った跡のことですが、雪の積もる中立特区でミリィたちが歩んだ足跡だと考えてみます。すると、作中で戦争の過去を象徴する雪の中を進み続けたミリィたちの姿と、その歩みによって過去のしがらみを解きほぐして少し先の未来である春の訪れを感じさせる歌詞に聞こえます
ミリィの歩く道は争いが絶えないかもしれなませんが、彼女が歩んだ後には確かに未来への希望があるように感じられます。

このことを踏まえて各ルートの最後のCGやタイトル画面を見ると、どれも桜色を基調にしており春の訪れを思わせるものといえます。いいですよね。


あとがき

まずは、ここまで長い文章を読んでいただきありがとうございます。以下の内容はゲーム本編とは全く関係なく、感想記事を書いた感想です。

今回初めて感想記事というものを書いてみました。
これまでも140字や280字程度の長さで殴り書く程度のことはしていましたが、偉大なる先人の感想記事を拝見しては憧れを抱いていました。憧れつつも時間がかかりそうだとかなんだとか考えて中々踏ん切りがつかないまま長い間いましたが、最近Xなどでノベルゲーム界隈に片足を少し突っ込んだことや、自分の中でもしっかりとした感想を積み重ねていきたい欲を改めて確認したことがあり、ちょうどアンラベル・トリガーで感じた軸や構造がいい感じに書けそうな手応えを感じたので、こうして長い文章を書くまでに至りました。
とはいえ、感じたことを筋道立てて書いていくことにそもそも慣れていないこともあり、何を書くべきか(書かないべきか)の取捨選択や、どういう順序と言葉で書いていくかに四苦八苦し、気づけばクリアしてから1ヶ月……GWに入り流石にここでやらないとと思って一気に書き上げました。
しかし、最初の記事ながら画像とキャプション含めて1万文字超、あとがきを除いたテキストだけでも9000文字に迫る量になってしまい、全体を通して筋道立って読みやすい文章になっているかどうか判断しずらくやりすぎでは?と自分にツッコミを入れてました。おそらく読みにくいところや辻褄のあってない或いは、読み違えているような箇所もあるかもしれません、精進したい。
一方で、今までなら300字に満たない文字数だったものをよくここまで掘り下げられたなと思う向きもあります。記事の文章を考えている中で新たな気づき(スノウドロップの話とかとか)も得られたりと、中々に有意義な時間でした。

今後も琴線に触れたところなどを(もう少しカロリーの少ない内容で)書いていければいいなと思います。

※(2024/05/08追記)NEXTON系列のスクリーンショット利用条件が1ページ4枚までだったので修正しました。


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