未来のために失われゆく書物を守る「アカシックレコード」の想い | SeLn
未来のために失われゆく書物を守る「アカシックレコード」の想い | SeLn
こんにちは、〈SeLn(セルン)〉広報部です。
今回は、〈SeLn〉が取り組んでいる昔の製版フィルムや絶版になった本を高解像度のデジタルデータとして保存することで、未来の世代に残すことを目指す「アカシックレコード」というサービスについてご紹介します。
こどもたちのために失われていく作品を消さずに残すという強い想いが込められたこのサービスの詳細とは!
アカシックレコードの理念と背景
「アカシックレコード」は、絶版になってしまった書籍や過去の製版フィルムをデジタルデータ化して半永久的に保存することを目指しています。
「アカシックレコード」という言葉自体は造語ではなく、“宇宙が誕生してからのすべての出来事、事象が記録された巨大なデータベースのようなもの”として近代神智学などで用いられる言葉です。いわゆる「アカシックレコード」が本当に存在するかしないかはさておき、この世に誕生したありとあらゆる書物のデータを保存し、未来に伝えるという強い意志を込めて「アカシックレコード」と名付けました。
失われゆく本を未来に残すために
昨今の出版業界では、需要の減少やコストの問題から、再版されることがも減り、多くの書籍が絶版になってしまっています。大量の新刊が刊行されていますが(ここ5年で、年平均7万点程度)、数年程度で消えていく本も少なくありません。また、古本屋で高値で取引されている、いわゆる「稀覯本(きこうぼん)」のような古書や限定版の書籍などもありますが、あくまでもコレクターズアイテムで、全ての古本が状態がいいわけではありません。製本が崩れてしまったり、破れてしまったり、日焼けしてしまったり、紙であるがために起こってしまう経年劣化もあります。
したがって、単にスキャンをすれば、作業完了というわけにはいきません。
丁寧な汚れやゴミの除去や歪みの補正など、あと工程処理も重要です。間違えて文字や絵柄を消したりしないよう細心の注意を払って、作業を進めていきます。
時代が進んでいる以上仕方がないことでもありますが、本の中にはその時代その時代の想いや貴重な知識や文化が詰まっており、それを失うことは非常に惜しいことです。
「アカシックレコード」は、このような失われゆく本をデジタル化し、高解像度のデータとして保存して、未来の世代に伝えることを目指しています。
高解像度スキャンとデジタル化のプロセス
「アカシックレコード」では、書籍を丁寧に解体した上で、書籍を単にスキャンし、余すことなく高解像度でデジタル化し、細部まで鮮明に保存します。このプロセスには、最新の技術と細心の注意そして本にかける愛情が必要です。
製本の解体や修復からスタート
1ページ1ページの重なりで書籍は出来ています。この重なりを丁寧にほどきながらも、順番を変えてしまうことが無いよう、丁寧なスキャン技術をしています。
先ほどご紹介した書籍『バブーフとその時代 フランス革命の研究』(豊田尭 著)も表紙と本文用紙に分けてスキャンを行いました。
フィルムスキャンとカメラ撮影の融合でデータをつくる
皆様のイメージするようなスキャナーを用いてのスキャンだけでなく、「アカシックレコード」では1億画素の超高解像度のカメラを使用してスキャンを行うこともあります。デジタルフォト方式で、製版フィルムのデジタル化に取り組んでいるところは珍しいと思います。
通常の印刷用のデータとしては、1200dpi(絵、写真もの)、600dpi(文字もの)という密度のデータを作成しますが、「アカシックレコード」では最大4800dpiの高密度のデジタルデータを作成します。AIによる補正もかけ、元の版ではつぶれていた網点の再現も可能にし、フィルムの細部まで鮮明に保存しているのです。
デジタル化をほどこし、オンデマンド印刷対応も!
デジタル化の工程では、書籍をページごとにスキャンし、それぞれのページが正確にデータとして保存されるようにすることが大切です。特に、元の書籍とスキャンしたデータの順番や落丁がないかを確認する工程は非常に重要。もちろん、データが正確に保存されているかを確認するために、データと書籍を比較する作業も行います。
また、カラーものだと製版フィルムがCMYK(青、赤、黄、黒)の4色に別れた版を使ういます。この色ごとの版を正確にデジタルで再現しないと「版ずれ」と呼ばれる、文字や線の輪郭がぼやけたり、画像がブレたような仕上がりに繋がってしまうため、この辺りも熟練が必要です。
なお、「アカシックレコード」では、スキャンしたデータをJPEGではなく、最終的にPDF形式に変換して保存します。この形式にすることで、データの管理が容易になり、そのままオンデマンド印刷に利用することが可能になります。オンデマンド印刷の大きな利点はすでに以前の記事でご説明した通りです。これにより、絶版になった書籍でも、デジタルデータがあればいつでも再版が可能になります。
書籍だけじゃない、アカシックレコード。
漫画のフィルム原稿も未来に残す!
今からたった40年ほど前の1980年代は、まだまだ手書き制作された原画からつくられた「製版フィルム」で漫画を印刷していた時代でした。実際にこちらの工場にはデジタル化を待つ多くのフィルムをお預かりしており、懐かしの貴重なフィルム原稿などが保管されています。
1980年代の印刷工場では、増刷に備えて、人気漫画のフィルム原稿をストックしていました。が、DTP化(印刷物をパソコン上で作成することや、作成した印刷データを出力するといったデジタル化)が進み、現在ではデジタルデータから直接製版をするため、「製版フィルム」は使われなくなっています。昔の作品のフィルムは、今では増刷もなく、権利を持っている出版社にとっても、保管している工場にとっても、宝の持ち腐れになってしまっている場合が多いんだとか。しかもフィルムは、通常8ページ分で1枚なので大きいのです。管理するのも大変で、長期保管で貼り付いてしまったり、波打ってしまったりとだんだんと劣化してしまいます。
ですが、そんなフィルムには、漫画家が手描きで描いた線やトーンが克明に残されており、当時の制作過程や技術を知る貴重な資料にもなります。また、印刷前に台詞を差し替えた場所なども分かるのでファンとしては垂涎ものでしょう。
「アカシックレコード」は、未来において貴重な書物に触れることができるようにするためのプロジェクト。絶版になってしまった書籍やフィルムをデジタル化し、高解像度のデータとして保存することで、未来の世代に貴重な文化遺産を伝えることを目指します。
こどもたちにとっても過去の書物や文化に触れることは非常に重要です。これらの書物には、時代時代の歴史や文化、科学技術など、多くの情報が詰まっています。「アカシックレコード」は、これらの本を未来に伝えるための重要な手段となるのではないかと考え〈SeLn〉で実行しています。
もし、お近くに眠っている貴重な書籍、また製版用フィルムがあればぜひご連絡ください。一緒に「アカシックレコード」にしていく出版社はいつでも募集中です。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、絶版書籍や原稿フィルムのデジタル保存とオンデマンド印刷について焦点を当ててみました。オンデマンド印刷の真価は、ただ迅速に書籍を生産するだけでなく、“今”のものも“過去”のものをも一緒に扱えることや、経年劣化を超えて、安全かつ効率的に顧客に情報を届けることにもあるのです。
また、〈SeLn〉ではサイトリニューアルも予定中。新しい〈SeLn〉として、一緒に出版文化を愛し、発明していきたい方も探しています。あなたの想いやご感想、あなたの思うよりよい出版文化の在り方がもしあれば、いつでも pr@seln.com までご連絡ください。
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