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(今日の言葉8) 少子化問題を考える。 安岡正篤の3原則と明石市の実践!
市の職員から市長まで上り詰めたある方は、モノを考える上で大切にしている3つの原則を話されていたことがあります。それは、人生の師父と言われる安岡正篤(やすおか・まさひろ)氏の次の言葉です。
第一は、目先にとらわれず、長い目で見る。
第二は、物事の一面だけを見ないで、できるだけ多面的・全面的に観察する。
第三は、枝葉末節にこだわることなく、根本的に観察する。
では、皆さんが市長だとして、この3原則を当てはめ、我が国の少子化問題をどのように捉えますか?
現在、兵庫県明石市の子ども施策は、全国的に注目されています。この明石市の事例をもとに安岡流3原則を当てはめながら、その本質を捉えていきたいと思います。
1. 目先にとらわれず、長い目で見る
明石市は、長期的な視点で子ども施策を実施しています。これは、「子ども」から始めれば「経済」も回るとしている点です。つまり、明石市は、1子ども施策、2安心、3人口、4賑わい、そして5財源確保という好循環をイメージした施策を打ち出しているのです。その最初の一歩である独自の子ども施策として、「5つの無料化政策」を導入し、子育て世帯の経済的負担を大幅に軽減しました。
「5つの無料化」
1. 18歳までの医療費無料
2. 第2子以降の保育料無料
3. 中学校の給食費無料
4. 公共施設の遊び場無料
5. おむつ定期便(満1歳まで)無料
これにより、子育て世帯が安心して子どもを育てられる環境を整え、長期的な人口増加を目指しています。その結果、明石市は、五年に1回実施される国勢調査において、2020年と2015年を比較し、およそ1万人もの人口が増加し、中核市のなかで伸び率が第1位となっています。
2. 物事の一面だけを見ないで、多面的・全面的に観察する
どこの市町村でも、ひとり親家庭や両親のどちらかに重度障がいがある場合などに支給される児童扶養手当は、単にお金を振り込むことを目的にしているかと思います。しかし、明石市では、児童扶養手当をきちんと子供のために使われるようにすることを意識しています。そのため、次のお金が入るまで生活が苦しくならないよう、2ヶ月分を年6回、まとめて支給する従来の制度について、希望される方は毎月支給を市独自で実現しています。
また、福祉のポイントは、「早期、総合、継続支援」であるとし、明石市は、子ども本人に100%必ず会う「乳幼児全数面接」も実施しています。夜間でも休日でも、健診会場で会えない子どもたちにも100%会うことを目指し、市民からの貴重な税金が子ども一人ひとりの栄養や愛情に変わっているところまで見届けることをしています。
健診会場でお会いできる親子は、ほとんど心配ない。それより、何らかの理由で健診会場まで足を運ぶことができない親子の家庭環境を心配しているのです。これが手当を支給する、乳幼児検診だけをするということではなく、多面的、しかもその子どもたちのために本当になっているのかといった全面的に観察し、実行するということだと思います。
3. 枝葉末節にこだわることなく、根本的に観察する
泉さんは、20歳の時、自主制作の雑誌にこんなことを書かれたそうです。
「わがままのススメ」
一人ひとりの幸せは異なるから、それぞれの幸せをしっかり応援できる社会こそが望ましい。周囲に遠慮し、我慢して合わせるのは、かえって不幸を招く。
泉さんは、子どもの頃から市長になられても、このまちづくりに対する想いは変わっていないとのことです。この太い幹があるからこそ、様々な施策も単に「こなす」だけではなく、「一人ひとりが人間らしく生きられる幸せ」に繋がる政策が打てるのだと感じます。
新型コロナウイルス感染拡大の時にも、個人商店にすぐに100万円など、市独自の「3つの緊急支援策」を打ち出した泉さん。当時、その記者会見で記者に配布された発表資料には、泉さんが職員へのメッセージとして走り書きした次の言葉が添えられていました。
困っている市民に
手を差し伸べるのが
行政の使命・役割
偉大な実業家も国や行政のリーダーも、人々の幸福という使命が根本にあります。その根本を常に意識し、今私たちが行なっている事業や施策は、根本につながっているのだろうかという検証が必要かと思います。
安岡正篤氏のモノの見方は、リーダーのみならず、多くの社会人にとって、必要な3原則だと感じました。