【SELFの本棚】#037 来るべき民主主義 國分功一郎
(文:ふるかわりさ)
今からちょうど10年ほど前に東京で繰り広げられた小平市の森を貫通する都道の建設をめぐっての住民投票を求める運動をベースに民主主義の課題を丁寧に掘り下げた本です。
まさに現在鹿児島はドルフィンポート跡地への体育館建設をめぐって様々な場所で議論が繰り広げられている渦中にあり、この本に書かれていることは事例や考察を含めてどれも全く他人事とは思えない、まるで今の鹿児島を描いた本であるかのような錯覚に陥ります。
議会民主主義には欠陥がある
近代の政治理論では、立法府こそが統治に関わる全てを決定する最終的な決定期間であるという前提があり、主権者である国民は自分の意見を代弁してくれる議員を選挙で選び、その選挙で選ばれた議員からなる議会がその機能を担っているから「民主主義」が成立する。
私たち一般市民も多くの人がその前提を疑ったことはないかもしれません。
しかしそれは事実なのでしょうか?
行政は単に法律、政令、条例等に基づいた執行機関としての役割だけでなく、実は統治に関わるほとんどのことを決定していて、議会はそれを「承認」するという役割しか担っていません。
哲学者である國分氏が、「この問題に応えられなければ、自分がやっている学問は嘘だ」と、当事者として住民運動に飛び込んだ小平市の問題。
この本に書かれている様々な具体例や課題、その解決のための提案などを丁寧に読み込み、よりよい鹿児島のあり方や県民としての関わり方を模索していくための手引きとして多くの方と共有したい一冊です。
『来るべき民主主義』目次
第1章 小平市都道328号線問題と住民投票
第2章 住民参加の可能性と課題
第3章 主権と立法権の問題
第4章 民主主義と制度
第5章 来るべき民主主義
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