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薩摩会議 特別番外編 ドルフィンポート跡地にはハコモノではなく街を作ろう 第一部:観光 天空の森 田島健夫氏(後編)

薩摩会議特別番外編として開催した「ドルフィンポート跡地にはハコモノではなく街を作ろう」というシンポジウム。第1部は天空の森 オーナーの田島健夫さんと、SELF監事坂口修一郎との対談・後編です。

前編はこちら👇

坂口:体育館の話も食の話もそうですが、大量生産大量消費のモデルですよね。観光も何万人も連れてきて、安いものをたくさん食べてもらうのではなくて、これから地球規模で人口が減っていく時にはクオリティをあげて単価をあげていくしかない。

田島:そうです。ドルフィンポートは、そういうものに付加価値を付けれられる。付加価値を付けるための一つの場所であるということ。鹿児島の観光経済を考える時にそれを間違えないでほしい。徹底的に議論していただきたいと思います。

坂口:それは本当に思います。
現状でも南埠頭と北埠頭とあって、種子島屋久島に行く航路、これはコロナ前でもアジアやヨーロッパからも離島に行く人がけっこういらっしゃるんですけど、ここに来て船に乗って島に出かけて、戻ってきてそのまま帰ってしまうというような本当に惜しい状況があるんです。
そのような視点で見た時も、ここがスポーツコンベンションで本当に足止めができるのか、心地よく過ごしていただけるのか。そしてここに何千人も来るので、ここに駐車場も建てようとしています。
一般的に車でここにきたら、そのまま車で帰ってしまいますよね。

貴重な鹿児島の資源をどう活用するか

田島:10年後、今の12~13歳は世の中を知り尽くしている世代ですよね。その時に「僕達のために作ってくれた、僕達が世界に誇るものだよね」と思ってもらえるような物になればいいですよね。
そんなことを考えますと、今世界の観光客の富裕層はどこに旅行に行けばいいのかと右往左往しているんです。京都に行っても人が多い、東京も、九州の有名な観光地もどこもかしこも人が多い。行く場所がないんです。
今、二次交通はすでに立体交通になっていて、どこもヘリコプターが使われています。鹿児島で言うと大隅半島や薩摩半島は陸の孤島。東京よりも遥かに遠いですよ。そういうところに富裕層は行きたいにもかかわらず3時間も4時間もかかっていては絶対に行かない。
南大隅や坊津方面には、量的には多く獲れない非常に貴重な海産資源があります。鹿児島空港からここに来て、ここからヘリコプターでそういうところに行く。そういう意味で考えたときにコンベンションセンターというのはあまり重要視して考える必要はないと思います。
それをしないと未来の収入源となる仕事がない。働く場所がないから若者たちが県外に流出しているんです。
働く場所を生み出すような世界レベルの品質を持つものがあるにもかかわらず、考え方が言葉は悪いですが、本当に島国的。グローバルな視点が必要です。
私のような年齢のものだけで話すよりも、10代の若者たちや、未来を本当にみることのできる人たちと一度は話をしてみたいですね。

坂口:そうなんですよね。もし、ここに体育館が立ったとしたら250億かかると言われているんですが、良いものができるならお金をかけてもいいと思っています。しかし、ここでなくても成立するなら他の場所に作ってもいいと思うんです。

田島:その考えはとても重要です。あるべき場所がここなのか。ここでなければならない理由と、ここでなくてもいい理由を並べてみると面白そうですね。

新総合体育館整備候補地の評価

坂口:実は県は、この新総合体育館の整備候補地の評価に対して意見を募集しているんです。そこに191件の意見が寄せられていて、そのうち反対が127件、賛成は中立の意見を含めて64件なんです。みなさんかなり考えていらっしゃるんです。本当にこの場所でいいのかと。

田島:民主主義ってなんでしたっけ、、。

坂口:そうなんですよね。だから、このように意見が全然吸い上げられないままに進んできているのは、けっこう問題だなと思います。

田島:この数字とても大事だと思います。170数名がそうじゃないと言い、60数名がまぁいいでしょうと言った。この重みというのは私たちは絶対覚えていなければならない。それでもやりますというのであれば、リーダーは未来に責任を持つわけですから。私たちはこの数字は絶対に認識しておく必要があります。でも取り返しはつかないですけど。

未来世代の声をどう反映するか

坂口:そうですね。一回建てばおそらく50年は持つと思うんです。
日本人の平均年齢って48歳くらいらしいんです。30歳未満の人口は全体の26%。全有権者に占める30歳未満の有権者の割合って13%しかないんです。
そういう視点で言うと、若い世代の声って政治に届かない構造になっているんです。

田島:かもしれませんね。

坂口:だけど、体育館ができたらその若い世代が50年くらい使い続けていくわけなので。少子化で人の数も減っている中、本当にそれでいいのかということをどうやったら伝わるんだろうかと、僕もわからないんですが、、、。
21年の衆議院選挙ありましたよね。その時の全投票者に占める30歳未満の割合は8.6%しかなかったんです。

田島:ということは、私たち年寄りのための未来だったんですね。

坂口:そういうことです。その30歳未満の8%の人たちの一番上の世代が80歳になる頃まで、(体育館ができたとしたら)そこにあることになるんです。

田島:宝物になるか、重たい荷物になるかこんな時こそ歴史をみる必要があると思うんですけど、江戸から明治へと切り替わる時に、薩摩武士たちはそこをみて未来を決めてきたわけじゃないですか。今こそその視点が必要な時ですね。

坂口:そうですよね。本当に大量生産、大量消費、観光も大量に呼んできて大量に消費させるという考え方。それがそろそろ古くなってきて、制度疲労を起こして次に行かなきゃならないとコロナを通してみんなが気づき始めている。

オーバーツーリズムの罠

田島:本当にそれを考えないと。観光ではオーバーツーリズムと言いますけれど、例えば沖縄県。観光客数はついにハワイを超えてしまったんですよ。相当沖縄のものを消費するわけですから、県民所得や個人所得は上がったのかな?とみてみますと、日本47都道府県のうち47番目なんです。

坂口:なるほど。

田島:だから、観光産業はボリュームじゃなくて質の高さに切り替えていく前のスタートラインに今私たちは立っているわけですからね。今ここは考え所で、それの肝がここ(ドルフィンポート跡地)なんです。
例えば、鹿児島の黒豚は今世界に誇る素材であるにもかかわらず、まだそんなに評価されていないんですよね。ドイツとかイタリアを超える品質。本当にうまいらしい。日本のお隣の中国、いまどんどん成長していますよね。成長していくと何を飲むかというとワインなんです。ワインの肴というのは生ハムなんです。鹿児島は、本当に未来の一次産業をなんとかしようと思っているのなら、そういう高付加価値高単価の農業に切り替えていく必要がある。その最中にあると思います。今農業予算にしろ観光予算にしろ、国は未来に通ずるような予算を出そうとしています。そういう上でのドルフィンポートの未来のあり方を考えてみてください。

視点を変えて見てみよう

田島:鹿児島は空港から市内まで列車がないから交通の便が悪いと言われますが、あれ嘘なんですよ。鹿児島空港の近くに嘉例川駅というのがありましてね。あそこを嘉例川駅としないで「鹿児島国際空港駅」と仮設の名前をつけて、鹿児島駅を「天文館駅」とするんです。多くの国内の観光客は何を求めているか。天文館に行きたいんですよ。

坂口:今天文館には駅がありませんからね。

田島:「天文館駅(鹿児島駅)」で下りると、昔の鹿児島のエッセンス、旧市街、名残堀、鹿児島の誇るものがあるんです。少し視点・視座を変えないと、いきなりこの体育館の話に入るのは本当に怖いですね。

坂口:本当に解像度が低い、0か1かみたいな話になっていて、それをもう少しステップを踏んでですね。今後50年、今の建築技術で言うともっと持つかもしれないものが建てられようとしている時にですね、「10年議論したじゃないか」とよく言われますけど、そんなに長く未来に残るものであればもっと時間をかけていいくらいの問題だと思うんですよね。それを「今年発表しました、再来年には作ります」というのは非常に性急すぎると思います。
僕が生きている間はずっと残る建物だろうとすると、本当に特に若い人たちを含めて対話が必要だと思います

田島:否定していないですよね。

坂口:否定してるわけじゃないんです。全然否定していない。体育館も必要ですし、コンベンションも必要です。ですが、この場所でいいのか、今でいいのか。コロナで戦争もあって、いろんな問題が渦巻いている中で、見切り発車をして本当にいいのかというのは対話をし続けていきたいと言うのが僕らの主張です。

世界の富裕層・スーパーヨットの寄港地に

田島:本当ですね。
鹿児島はですね、スーパーヨット。日本にはスーパーヨットはないんです。スーパーヨットって、ボートじゃないですよ。ヘリコプターを載せたりして富裕層が世界を回っているんけど、錦江湾は屋久島、薩摩硫黄島、開門岳、桜島と見てここに入ってくるとね、本当に条件的には世界のスーパーヨットを呼べるんです。モナコとかそういうところにあるんですけど、そういう人たちが東南アジアの方から北米大陸にいくその中継地点になるんです。そうした時にそういう人たちは鹿児島の最高の素材を船に積み込みます。大体1回で数千万円分積むと言われていますね。お肉だとかハムだとか、そういう世界のオピニオンリーダーが鹿児島の素材をもって「これは素晴らしい」と言えばね。ブランディングというのは今その人たちがしているんです。そういうことも考えていって、そういう視点で見た時にこのドルフィンポートの活用をここで2人で話していると言うのは、いささか漫画チックですよね。(笑)

坂口:そうですね。人数が少なすぎましたね。この問題は引き続きたくさんの人たちと議論していきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。


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