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自由進度学習ってなに?

自由進度学習ってなに?

自由進度学習を聞いたことはありますか。
今までの画一的、一斉的な教育とは180度異なる、個々で自由なペースで学習を進めていく学習方法です。
まだまだ普及しているとは言えませんが、その高い学習効果が認められ、徐々に導入校が増加しています。
今日はそんな自由進度学習について紹介します。

自由進度学習について

令和3年の中央教育審議会「令和の日本型学校教育を目指して」で、2020年代を通じて実現すべき姿に「個別最適な学び」が挙げられており、指導の個別化と学習の個性化が重要視されるようになりました。

「個別最適な学び」が進められるよう,これまで以上に子供の成長やつまずき,悩みなどの理解に努め,個々の興味・関心・意欲等を踏まえてきめ細かく 指導・支援することや,子供が自らの学習の状況を把握し,主体的に学習を調整することができるよう促していくことが求められる

R3.中央教育審議会 答申

1つの教室に数十人の生徒を集め、みんなに同じ内容を同じペースで授業を行う従来までの一斉的な指導方法から、それぞれの学習進度や興味関心に基づいて指導を行う個人型の指導への転換が目指されています。
理解が進んでいる子にはさらに先を、遅れている子には基礎から丁寧に指導を行うことが出来る、個々に適応した学力アップが期待できそうな気がしますね。それでは具体的にどのように行うのか、いくつかの導入校を例にとって説明します。

自由進度学習のやり方

導入例とそのやり方についてです。
鹿児島県の星峯西小学校では、教師が想定する学習計画表が配布され、各項目ごとに教科書・プリント・実験などから、子どもが自分で選択して学習を進めていきます。学習の方法を選択して、好きなペースで学びを深めていく形になっています。
長崎県の三重中学校では、決まった特定の単元に対して実施されています。単元の導入時にその概要や教師の想定している時間配分などが記入されたガイダンスプリントを配布し、プリントに沿って自分のペースで学習を進めていく形になっています。他の導入校でも似たような形での実施が多い事から、教師がある程度の大枠を設定して、その学習単元ごとに自由進度での学習を推奨していることが分かります。

単元の導入は全員に向けて画一的に行い、そこからの進度は子どもが自分のペースで学習し、最後の到達目標まで個々の理解度を持っていく。入口と出口は決まっており、その中の学習方法やペースといった学習計画を子どもと共有して一緒に進めていくイメージですね。

自由進度学習のメリット

それでは自由進度学習のメリットとはどのようなものでしょうか。
メリットの1つ目は、子どもにとって「待つ」「置いて行かれる」が起こりえない点です。従来の指導方法では、理解が進んでいる子にとっては退屈な授業が多かったかもしれません。逆に理解が遅れている子には難しかったかもしれません。学校の先生1人で40人全員が満足する授業を全体に向けて提供することは非常に困難です。しかし自由進度学習では、子ども1人1人が自分で目標を設定して、自分のペースで「勝手に」進んでいくので、教師は学習支援が必要な子どもに寄り添うことが可能になります。

2つ目は、ゴールから逆算して取り組む力が身につく点です。入口(導入指導)と出口(到達目標)を事前に伝えて行う自由進度学習では、いつまでにどの項目まで進めている必要があるかを、体験的に学ぶことが出来ます。論理的思考力と言い換えることが出来ますが、この逆算して今何をしなければならないかを考える癖をつける事は、子どもの将来に非常に有用だと言えます。

3つ目は、教室内のコミュニケーションが増加する点です。これはクラスの雰囲気次第ではありますが、同じ項目に挑戦している子ども同士で考えを話し合ったり、分からない所を教えあったりする環境が整っていけば、必然とクラス内のコミュニケーション量が増加し、話し声や笑い声の多いクラスへとなっていきます。また、教えるという経験で理解度が深まり、より主体的に学ぶ姿勢の育成にもつながるかもしれません。

自由進度学習のデメリット

デメリットとしては教師の裁量に委ねられる部分が大きい点です。
自由進度学習では教師には塾講師のような役割も必要になってきます。これはある程度決まった指導を全体に向けて行う従来の教師とは異なり、個人個人の学習進度つまづきにフォーカスした指導や言葉選びが求められるという事です。個々にフォーカスするためには教師の知識量も今まで以上に必要になります。知識量や指導方法に幅のある教師と、それが乏しい教師の間に生まれる差は、今までの比ではないほど大きな差になり得るでしょう。

また、確立されたマニュアルやメソッドがまだない中で行われるので、正しい指導かが分からない点も見逃せません。教育の正解はかなり未来に分かるので今論じる事は難しいですが、例えば
・分かった「つもり」の子どもに気づけるのか
・教えあう環境が整っていないクラスでの効果はあるのか
・ゆっくりのペースで学習を進めている子は嫌な思いをしていないか
 など疑問点は多く残ります。
さらに、学校での成績評価についても懸念は残ります。現在の評価項目は自由進度学習を想定したものではありません。自由進度学習の導入により、教師が生徒に寄り添って指導が行える事で、点数による評価を行う事は難しくなります。しかし点数を完全に除いた評価だと、人間性や普段の生活での評価割合が多くなってしまい、教師の主観が介入する余地が大きくなりすぎてしまいます。この辺りについても、まだまだ議論の余地はありそうです。

まとめ

自由進度学習では、今までの単元時間よりも短い時間で学習が完了したという声もあり、導入によって一定の効果は上がっているように感じられます。しかし自由進度学習によって、教師による差、学校環境による差、家庭環境による差など、今まで以上に差が生まれてしまわないように注目する必要があります。子どもが自分なりに楽しく学習を進めていける環境を、私たち大人は考えていきたいですね。

最後になりますが、本記事についてのご意見ご感想をコメントでお待ちしてます!
読んでいただきありがとうございました。


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