己の心の醜さが仕事で現れた話
1年前の、前職での話です。
誰に話してもドン引きされるエピソードがボコボコと出てくるとんでもないモラハラ社長の下から逃げ出し、京都の極小の会社で僕は一応社員として雇用されました。社会保険を払いたくないという理由だったのか、僕が会社初めての社員でした。(僕以外の労働者は全員業務委託扱い)
-----------------------------
1ヶ月ほど働いた頃、社長が僕より先に入っていた同い年の同じ大学の子を僕の下につけると言い出しました。そもそもまだ働いて1ヶ月なのにもう下に人をつけるのか?それも僕より先に働いている人を?と思ったし、社長としては「同い年で同じ大学の子だから気兼ねなくできるでしょ」という気遣いだったかもしれないが、僕は全然嬉しくありませんでした。
そもそもその人(Aさんとします)は、入社当時からあまり良い印象が無く、ボソボソと喋るし笑顔を1度も見たことがないので取っ付き難いな……と思っていました。しかし仕事だけの付き合いです。割り切るしかありません。
社長はAさんのミスや仕事の遅さに辟易していたようで、度々呼び出して強く叱るところを見ていました。時には僕と比較したりして、勘弁して欲しいとさえ思いました。社長はAさんを僕の下につけると宣言した後に僕一人を呼び出し、「Aさんは本当はクビにしたいんだけどね、Aさんにも生活があるでしょ?だから何とかして雇ってあげてたいなと思って。四十万さんに教育して欲しいわけよ。四十万さんが上手く教育しないとAさんクビになっちゃうからね、そこんとこ宜しくね」と言い渡しました。僕には人1人の生活の保証なんか出来ませんし、そこの采配は僕なんかではなく雇用主のあなたでは?と心底困惑してしまいました。
-----------------------------
そもそも自分自身も相当人間と関わるのが下手くそな部類の人間なので、Aさんに仕事を振りなさいと言われたものの、何まで頼んでいいのか分かりませんでした。とりあえず山ほど仕事はあったので、そのうちの1件の「キャンペーンポスターの作成」をお願いしました。
この時点で「自分に人間を使う能力はない、自分は一生下に人間がつかなくて構わない」と思ってしまいました。
人に仕事を振るだけで
・使用する画像の指示
・画像データがどこにあるのか
・過去のデザインはどんなものなのか
を少なくとも教えなくてはなりません。自分も教えてもらった立場なのに、そう思ってしまう非情な人間だと思い、嫌な気分になりました。
しかしここまでは序章に過ぎませんでした。
とりあえずAさんには「デザインラフを見てから細かいところを指示するので、ざっくり文字とかデザインのパーツだけ配置して、出来たら見せてください。数点作って下さると助かります。14時くらいには出して貰えると助かります。分からないことがあったらいつでも聞いてください」と伝えました。自分としては2時間でデザインラフ1点は作れるだろうと見込んでいたのです。これでも自分の作成速度の倍に設定しました。Aさんは10時出勤。4時間の期限があれば十分だと考えたのです。
14時になっても提出が無く、Slackで「進捗いかがでしょうか?1度見せていただけると助かります」と送ると、何故か作成中の画面のスクショが送られてきました。その画像を見た時の衝撃は忘れられません。まさか同じ大学、同じ学年で同じ学科、画像加工ソフトは今まで仕事でも使用していたようなのに、何故それで仕事をしていたのか本当に信じられないようなクオリティで、未完成のデザインラフを提出してきたのでした。だからスクリーンショットなのか、と納得しましたが、それと同時にこれから指摘しなくてはならないことが山ほどあるという事実にげんなりとしました。
僕はできる限り相手を傷つけないように、僕が過去に言われたようなことは絶対に言ってはならないと思いながら、
・フォントはデフォルトで入ってるやつじゃなくて、可愛いなって思うフリーフォントを自分でダウンロードして欲しい
・全部横真っ直ぐじゃなくて、斜めにしたりして欲しい
・配置がバラついてるからこの本を参考にして欲しい
・画像の切り抜きが荒いからこうやって切り抜いて欲しい
等、細かく修正をお願いしました。ちなみに、このことを伝えている間、一切メモも取らなかったし、質問も聞かれませんでした。やんわり「もう少し速度を上げて欲しい」ということも伝えた上で「2時間くらいで今言ったところを直して欲しい、分からないことがあれば言って欲しい、この辺の本とか参考にしてるから使って欲しい」と言って、本を渡して自分の席に戻りました。
Aさんは17時退勤でしたが、ついに定時までに作業は終わらなかったようで、17時になってもなにも言って来ませんでした。Slackで「退勤前に進捗報告お願いします」と送ると、14時の時と同じようにスクリーンショットが送られてきました。びっくりするほど変わってない、色がちょっと変わったくらいかな……と思う程度の変化。うわあ、と思ったものの、定時だしな……と思って「提出ありがとうございます。お疲れ様でした、修正点はまた明日お伝えします。」と送りました。こんなに時間かけてろくなもの1点提出出来ねぇのか、同い年同じ大学の同じ学部卒なのに……と思いました。ちなみに、Aさんは作業の間僕が渡した本を1度も開きませんでしたし、質問もしてきませんでした。
-----------------------------
Aさんが帰ったあと、僕は社長に呼び出され、今日のAさんの作業報告をしました。盛っても仕方がない話なので、僕はそのまま社長に伝えました。
次の日、Aさんは社長に呼び出され、1時間は戻ってきませんでした。社長はAさんに仕事を振ったのか、昨日のポスターの作業は僕がやるように指示しました。昨日のやり取りは全部無駄になってしまいました。それでも、昨日僕が言ったことはいつかAさんがまたデザインをやるときに役に立つだろうと思っていました。僕自身がそうだったので、あれだけ指摘があったらバネにして勉強してくれるだろうと思っていたのです。
また次の日、Aさんに店内ポップの作成をお願いしました。ダラダラと話していても仕方が無いのでその日の結果を話すと、ポスターの時と何も進歩していませんでした。僕はまたできる限り優しく、要点をまとめて指示をしましたが、またしても定時までに終わらずにAさんは定時退社しました。
-----------------------------
そしてその翌日からAさんは無断欠勤をして、そのままばっくれていなくなってしまいました。
正直僕にAさんの生活の責任なんかは持てなかったし、勉強して見返そうという気力もなく、ただ時間が過ぎるのを待っているだけの仕事をするような人の世話はしたくないと思っていたので、内心安心していました。しかし、そう思ったと同時に前の会社の人たちは僕のことをこう思っていたのかもしれない、僕はなりたくなかった「嫌な会社の上司」になってしまったのか、と気づいたらとても嫌な気分になりました。