コンセプチュアル・スキルの育成
スキルのことを調べようとすると、必ず出てくる「カッツ理論」というのがあります。
ロバート・L・カッツさんが、1955年(昭和30年!)のハーバード・ビジネス・レビューに論稿したものですが、それが2023年(令和5年!)でもまだ生き続けているというのは驚きです。
運用改善の教科書を書いた時に、20年後の1974年に回顧録付きの再録版をリプリントして取り寄せました。
カッツ理論に関する記事は多いですが、原本にあたって書いていると思われる記事は少ないので、特に興味深かった箇所を引用しながらまとめてみようと思います。
カッツ理論の細かい説明は割愛します。
知りたい方は以下のサイトなどで確認してください。
コンセプチュアル・スキルとは
カッツ理論、というか、ビジネススキルの中で、最も重要でもっとも不可解なものは「コンセプチュアル・スキル」です。
コンセプチュアルスキルとは…
……まぁ、簡単にいうと経営能力です。
色々なサイトで、コンセプチュアル・スキルとして、論理的思考(ロジカルシンキング)、批判的思考(クリティカルシンキング)、水平思考(ラテラルシンキング)などに言及していますが、カッツさん自身はこれらがコンセプチュアル・スキルだとは明記していません。
後続の研究者が、「コンセプチュアル・スキルなら、このあたりでしょう」という感じで割り当てたのだと考えられます。
コンセプチュアル・スキルの育成
コンセプチュアル・スキルの育成ですが、1955年と1974年では異なることを言っていて興味深いです。
まずは1955年。
この時は、まだ楽観的です。
これはいわゆるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)ですね。
これはヒューマン・スキルの育成にも有効だと言っています。
そして、1955年にはもう1つ挙げています。
これは部署異動ですね。
見込みのある若手には旅をさせろ、ということでしょう。
たしかに、経営に必要な力はつきそうな気がします。
・・・が、20年後の1974年になると、だいぶトーンが変わってきます。
少し長い引用ですがお付き合いください。
・・・カッツ、諦めないでくれよ、カッツ!
コンセプチュアル・スキルは、あとから会得できないのかよ!
ただ、残念なことに1974年のカッツさんのコメントには、無数に思い当たる節があります。
何も教えていないのに大局が見えている若手。
とんでもない量の経験を積んでいるのに、抽象的な会話ができない中堅社員。
逆に、まったく柔軟性のない若手や、知的好奇心と想像力に富んだシニアエンジニア。
テクニカル・スキル(技術スキル)が経験年数に比例するのに対して、コンセプチュアル・スキルとヒューマン・スキルに年齢は関係ないのです。
これらを踏まえて、若手の頃はさまざまなことを経験して得意・不得意を見極めて、30歳を超えて中堅社員になってきたら自分の得意分野で勝負するべきでしょう。
カッツさんは、「新たなスキルを身に着けるのは難しい」と言ってますが、すでに身についているコンセプチュアル・スキルを高めることができると言っています。
また、テクニカルスキルは何歳でも身に着けることができます。
そうでなければ、脱サラして蕎麦屋に転身することなど無理でしょう。
私も含め、中年になってきたら「自分の得意を伸ばす」「新しい技術や製品に継続的に触れる」ということを続けてスキルを伸ばしていくのが良いかなと思っています。
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