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意思決定支援と欲望形成支援

運用改善コンサルティングという仕事は、広義の意思決定支援だと考えています。
ちなみに、狭義の意思決定支援は看護や介護における以下となります。

意思決定に困難を抱える人が、日常生活や社会生活等に関して自分自身がしたい(と思う)意思が反映された生活を送ることが可能となるように、その人を支援することやその仕組み

https://niben.jp/service/soudan/kojin/management/column/entry/post_18.html

運用改善コンサルティングもほぼ同じもので、コンサルティング実施の流れはだいたい以下のような感じです。

  • その企業を取り巻く状況の確認、内部のデータの分析、関係者へのヒアリング結果などから情報システム部の課題を明らかにする。

  • 課題解決に向けて今後取り組むべき施策をいくつか策定する。

  • 施策ごとのメリット/デメリットをまとめる。

  • 情報システム部の部長などの意思決定者が、今後の取り組むべき施策と方針を決める。

最後の「意思決定者が今後の施策と方針を決定する」という瞬間のために、我々は何週間もエビデンスを探して積み上げて、施策をひねり出してわかりやすく説明するのです。
その最後の意思決定の時に「他社さんはどうやってますか?」と聞かれると、正直ズッコケます。
今後の方針を決定する際に、自分たちで導き出した目指す姿ではなく他社の事例を基に決定したら、施策実施への熱量は下がり施策が成功する可能性は大きく下がります。
そもそもそれなら分析なんかする必要はなく、他社に頭を下げてやり方を聞いて実践すればよいだけです。

改善や改革には熱量が必要で、成功のカギは意思決定者の強い想いです。
なぜ熱量がなく「決断を他者に求める」ことが起きてしまうかと考えると、おそらく「こうしたい!」という欲望が存在しないということではないかと思います。

目指す姿がない、やりたいことがない、夢がない。

これらの元を正すと、個人や組織に「欲望」が存在していないことが原因だと思います。
自主的に仕事をしているのではなく、やらされているという状態。
この状態ではどれだけ良い分析を行って、良い施策を立案しても主体的になにかを決定することはできません。

意思決定するための「欲望」が存在していない場合、本来であればまず「欲望」を形成するための支援を行う必要があります。
欲望を形成する方法はいくつかあると思いますが、以下のような方法があると言われています。

  • 外部からの影響を反復させる

  • 複数人で Yes/No ではないオープンな対話を続ける。結論はださない。(正論、説得、尋問、議論はしない)

  • 責任を外在化させて、責任を解除する。

要するに、責任の無いところで色々な人と「今後、どうしたらいいんでしょうねぇ」といった他愛もない話を続けていると、何となく自分がどうしたいかという欲望がむくむくと湧いてくるということです。

今の社会は短時間で結論を迫られること多く、欲望を形成するための時間とコミュニケーションが圧倒的に少なくなっていると思います。
昔であれば「飲みにケーション」みたいな場で漠然と行われていたことかもしれませんが、現在はそれも少なくなっています。

おそらく本当の意味で問題なのは、「人生の多くの時間を提供している仕事に対して、何の欲望もなくただただ時間を消化している」ということです。
欲望がない人が意思決定をし続けると、精神を病むことになります。
そのような結果は誰も望んでいませんし、何よりも本人にとってツラいことになってしまいます。
そういった意味だと、仕事以外に好きなこと、やりたいことがあって、「仕事は定時まで労働力を提供するだけ」と割り切っている人は逆に問題ないと思います。

これからは、意思決定支援だけでなく欲望形成支援も行っていく必要があるのかな、と思う今日この頃です。


この記事は2019年7月12日の「100分de名著特別講座 スピノザ・中動態・精神医学をめぐって」に参加した内容を基に、ここ数年で考えたことを記載しています。


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