2020年の春

2020年3月10日㈫

マスクが手に入らなくなってから1か月、今度はトイレットペーパー・ティッシュ・生理用品までドラッグストアから姿を消した。一人暮らしなので、トイレットペーパーなんて年に数回しか買わない。2週間前くらいから紙製品不足がはじまったが、当初はデマのせいで買い占めが起こり、輸送が間に合わない状況で、しばらくしたら元通りになるだろうと言われていた。しかし、2週間経ってもドラッグストアに行ってもトイレットペーパーの棚はすっからかんのままだった。ついに私の家のトイレットペーパーも残り半ロールとなり、何とかして手に入れなければいけない。ふだんふつうに手に入れられるものが突然なくなるなんて、便利で快適な生活は決して当たり前ではないのだと痛感した。とはいえ、まさか自分も教科書で勉強したオイルショック時のトイレットペーパー不足を経験するなんて、思いもしなかった。

Twitterのタイムラインで「トイレットペーパーがないというのは悪質なデマです」と、事実に反した情報と買い占めを非難し、都内近郊のイオンが大量のトイレットペーパーを入荷したという情報をみた。その投稿から5日ほど経っているが今もあるのかどうか、Twitterの検索機能で調べてみたところ、週末には完売したという情報が散見された。これは手に入れるのが難しいかもしれない、と不安になり途中からなんでこんなことに、といら立ちがつのってきた。Twitterには都内で不足しているが地方はふつうに入荷している、という情報もあったので、非常勤先の千葉に住んでいる衛生士さんにきいてみるとホームセンターにたくさん並んでいると言っていた。確実にあるならそこに行くしかない、と行き方をグーグルマップで調べてみるとつくばエクスプレスを使えば意外と近かった。意を決して、トイレットペーパーを求めて流山までいこうと計画をたてた。

ひさしぶりに午前中に起きてでかける準備をした。家をでて駅に向かう途中念のため、とのぞいたコンビニに、なんとトイレットペーパー12個入りが2つ、棚に並んでいた。もちろん一人ひとつまで、と書いてある。感謝をこめてそのうちの1つのトイレットペーパーを買って家に戻った。

春は思い出すことが多い。とくに夜に外を歩くと春のにおいがする。3月の少し湿っぽくて生暖かい空気と冷たい風が混じり合う夜は、別れを惜しんでよく集まってかえって親密さが増した記憶がよみがえる。今年の春はコロナである意味特別な年になっている。来年の今頃、トイレットペーパーの騒動も懐かしく感じられるのだろうか。

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