日本酒専門誌「酒蔵萬流」033(2022夏号)~地に根差し 無二を極める(7月25日発行)
日本酒専門誌『酒蔵萬流』033・ 2022 SUMMERが、醸造用精米機メーカーの新中野工業さんから出版されました。
山忠本家酒造(愛知)
重家酒造 横山蔵(長崎)
丸尾本店(香川)
三千櫻酒造(北海道)
花の舞酒造(静岡)
田中屋酒造店(長野)
土田酒造(群馬)
番外編 稲とアガベ(秋田)
今回わたしは「酒蔵紀行」コーナーで「水尾」田中屋酒造店(長野県)、「酒場めぐり」コーナーで「六兵衛」を取材担当しました。
「水尾」田中屋酒造店(長野県)
田中屋酒造店は、長野県の最北端エリア・飯山市にあります。3月7日に降り立った時には、日の当たらない路肩にはまだわずかに雪が残っていました。わたしが日本酒の世界に入るキッカケの大きなひとつは、長野県のお酒でした。思い出深い地です。そして飯山を訪れるのは、同市の「北光正宗」に行った以来。本当に久しぶり。
「水尾」といえば、金紋錦。福光屋さんが守っていた状態から、どのような経緯で長野県全体で使うようになったのか?その辺りの事情を詳しく聞きました。デリケートな内容のため、誤解が生じないよう書くのが難しい部分もありました。蔵元様とかなり擦り合わせしたので、事実に則してもちろん間違いはなく、サラリと読めて理解しやすい文章になっていると思います。
誌面から泣く泣く削った😢こぼれ話…
「水尾」の火付け役は、近くの野沢温泉でした。
仕込水である水尾山もこの近くにあります。
最初は全然売れなくて、営業回りをしている時。
お菓子屋の傍らに酒売り場があるようなお店でのある日のおばちゃんと田中社長との会話。
「これ野沢の水使ってるって言ってたよねー?」と。
「そうですよ、うちの酒は野沢の水ですよ!」
「じゃあ書いておかなくちゃいけないね」
おばちゃんが、空いた菓子箱の端っこをちぎって「野沢の水でつくった酒」と手書きして貼ったら、それだけで、3倍くらい売れるようになって、他店でもポップを作ってもらって、そのうち要望があり、首掛けをするようになり。
トントントン…と売れるようになっていったそう。
そんなひょんなキッカケだったそうです。
「伝えること」の大切さを感じるエピソードです☺
その他にも、酒販店さんの意見を聞いて取り入れ、人の声を拾い、ここまでやってきた田中屋酒造店。派手さはないけど、しみじみ飲みたい「水尾」。見かけたら飲んでみてください!
そして、2019年の水害も記憶に新しいです。飯山全体が水没状態になり、酒蔵の1階部分が浸水しました。四ツ谷「日がさ雨がさ」の宮澤さんが現地に行ったり、義援金口座を開設したりしていた投稿を覚えています。
復旧、復興、歩みはどうなっている?と、ドキドキしながら行くと、立ち上がった後でさらに世代交代など新しい課題に取り組み、若者たちが活躍する「イマの水尾」と出会いました。また水害を機に地元に戻った田中社長の長男・匠さんの力も大きいことが分かりました。
詳しくはぜひ記事をご覧ください。
六兵衛 田中屋酒造店紹介(長野県)
アットホームなお店でした。店主の木内さんが名物、と聞いていきましたが納得。
料理の専門学校を卒業して、「料理の鉄人」にも出ていた職人さんの割烹料理店などで修行をして、帰郷。父と一緒に店を営むかたわらで、趣味の基礎スキーを再開。その後、ひょんなことから町おこしのためにフリースタイルスキーをやると開花。選手として活躍したのち、全日本フリースタイルスキーのコーチに!!長野五輪、ソルトレークシティーと引率したらしい。里谷多英さんの指導もしていた…ってそんなことある?!笑っちゃうくらい驚きの経歴でした。店内にもスキー関連のギアやサインなど飾っています。
自分で山菜を採ってきたり、オール飯山産にこだわったりと、何事にも手を抜かない、めちゃくちゃ凝り性な人なんだろうな~。そしてとても器用。それが全然辛そうじゃなくて、楽しんでやっている感じ。性分なのでしょう。
スキー場に来る車中泊の常連さんに、「夜中に店のトイレ使っていいよ」って店を預けちゃうこともあった、というエピソードも優しすぎて、人間味に溢れていました。木内さん、素敵な方でした。
取材にご協力くださった皆さま、出版元の方々、制作に関わる皆さま、本当にありがとうございました。興味を持った方はぜひ一度、読んでみてくださいね。
●酒蔵萬流について
●33号のページ
●「酒蔵萬流」購入ページ
※専門誌のため誌面/web版ともにネット購入のみ