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映画『一献の系譜』・能登地震復興チャリティ上映会レポート
2024年1月11日(土)、池袋シネマ・ロサで開催された能登半島地震チャリティ上映会『一献の系譜』に参加しました。このイベントは、石井かほり監督が手掛けたドキュメンタリー映画の特別上映で、能登の酒蔵を支援する目的で行われたものです。
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2024年1月の地震で奥能登エリアの酒蔵11軒のうち半数が全壊、残りも半壊や一部損壊する甚大な被害を受けました。それでも他の蔵に間借りするなどして酒造りを続けようと奮闘しています。今回の上映会では、被災した3つの酒蔵の蔵元を特別ゲストに迎え、トークセッションが行われました。
開催概要
日時:2024年1月11日(土)13:00~
場所:池袋シネマ・ロサ
料金:3,000円(税込、日本酒1種類含む)
登壇者:
白藤酒造店(輪島市):「奥能登の白菊」白藤暁子さん
松波酒造(能登町):「大江山」金七聖子さん
鶴野酒造店(能登町):「谷泉」鶴野晋太郎さん
石井かほり監督
石井監督の冒頭挨拶
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石井監督は、来場者に向けて次のように語りました。
「お正月の貴重な時間を割いて足を運んでくださった皆さんは、相当、お気持ちを能登に向けてくださってる方々だと思うんです。今の能登は、能登以外の人間が想定するペースでは物事が進みません。雪や雨などで支援が滞ることもあります。長い時間をかけて寄り添い、一緒に歩んでいける応援をいただけたら嬉しいです。」という挨拶からスタートしました。
3つの酒蔵からの言葉
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白藤暁子さん(白藤酒造店)
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「令和6年がすっぽり抜けたような感覚です。地震で蔵の一部が倒壊し、自宅も全壊しました。地震直後はまるで別の世界に来たかのようで、輪島市からは多くの人が去りました。私は美しい能登が好きです。地元の文化や経済を担う、という大それたことは言えないけれど、その要素のひとつとして酒造りを再開することは本当に大切なことだと思っています。」
白藤さんは、2007年の能登半島地震時に再建した部分は今回倒壊を免れた、と語りました。昨年12月に解体は全て完了。釜場の地盤改良を終え、炉が新しく組み上がり、仕込み蔵などの修繕、補強もスタート。
「決して早いとはいえませんが「奥能登」という地理的条件が悪いと言われるなかで、一年かけてここまできました。とにかく今ある建屋のなかで、最低限の条件を整え、3月から酒造りを始めようと思います。はじめからフル生産とはいきませんが、来年以降も造りながら整えてまいります」と、白藤さんは語りました。
さらに近隣の飲食店が再建を試み、奮闘していた矢先、豪雨による被害で断念せざるを得なくなった話を語り、「そういうことが日常的に起きています」と、涙ながらに悲痛な思いを滲ませました。「以前のように色んなものは揃っていないけれど、能登に来てほしい」との訴えは、訪れることの重要性を改めて感じさせられました。
金七聖子さん(松波酒造)
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「地震で酒蔵と自宅が倒壊し、その後の豪雨でさらに悪化しました。現在は能登を離れて暮らしながら、時々戻っています。Makuakeの支援プロジェクト『能登の酒を止めるな』が本当にありがたかったです。」
金七さんは、地震直後に送られてきた無数の励ましや現状確認の連絡に感謝しつつ、「必要なものを考える余裕すらなく、どう対応すればいいか分かりませんでした。一つ返せば、こちらも返さなければならない。(充電など物理的にも心ももたないので、)返信することができませんでした。」と当時の混乱を振り返りました。
「必要だったのは知恵です。」日常では当たり前に考えられることがまったく考えられなくなり、「こうすればいいでしょう」と言われても、周囲の景色も一変して、家もなくなり、それはどうやって?という環境だったそう。申請書などを取りに行くにも電波がなかったり。ラジオもテレビもない。どこにアクセスすればいいかも、何もわからないような状況だった、と語りました。
その上で「パソコンを持ち出したことで、少し時間が経過してからは色んな情報がわかり、あらゆるパスワードなども把握できたので良かったです。もし何かあったらパソコンは持って逃げてください」と語り※、さらに、先回りして物資を直接届けてくれた人には特に感謝の気持ちを述べました。
現在は更地になっており、トレーラーハウスを活用した酒造りを計画中とのことです。
※個人の感想です。余裕がある場合に限ります。人命最優先を心がけてください。
鶴野晋太郎さん(鶴野酒造店)
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「私は地震で、事務所、酒蔵、店舗、従業員住宅のすべてが全壊する被害を受けました。私たちの町はもともと“プリンの上に家が建っている”と言われるほど地盤が緩い地区で、昔から危険性が指摘されていました。その言葉通り、町全体で3分の1の家屋が倒壊する甚大な被害を受けました。」
地震で生活基盤を失った後も、鶴野さんは前向きな取り組みを続けています。「解体は2023年8月20日に始まり、本来10月で完了する予定でしたが、水害や台風の影響で周囲の家屋が倒れてしまい、それを片付けてからでないと進められない状況です」と説明した後、「それでも将来的に、仮店舗を作るつもりで進めています」と意欲を語りました。
「酒造りに関しては、全国の酒蔵の皆様から多大なるご支援をいただき、なんとか続けることができています。聖子さんも話された『能登の酒を止めるな』という復興支援プロジェクトでお酒を作らせていただいたり、石川県内の酒蔵からも支援をいただいてタンクをお借りし、多くの酒を醸造することができました」と感謝の気持ちを述べました。
地震直後は通信環境が完全に遮断されていたため、連絡を取るのも一苦労だったといいます。「周囲に電波がなく、山に登ってようやくメッセージを確認し、充電の限りで返信するという作業を繰り返しました」と当時の厳しい状況を振り返りました。それでも、「全国の支援に支えられて酒造りを続けられることに感謝しています」と語り、復興と新たな挑戦に向けた強い決意を示しました。
鶴野さんの妹である薫子さんが、2016年に大学卒業後、家業である酒蔵に入社。同年杜氏に就任しました。その後、鶴野さん自身も2018年に大学卒業後のIT企業勤務を経てUターンし、家業に入りました。その矢先の能登地震。厳しい現状ながらも、前向きな言葉に安堵しました。
3蔵の日本酒が振る舞われました
映画上映後には、登壇した3つの酒蔵の日本酒を1杯、振る舞い酒として提供されました。能登酒ファンのお客さんの中には、チャリティをして3蔵のお酒をすべて味わっている方も。「美味しい」と、みんな嬉しそうでした。
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映画『一献の系譜』の感想
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映画『一献の系譜』は、能登四天王(三盃さん、波瀬さん、中さん、農口さん)など石川県能登地方の酒蔵を中心に、日本酒造りに情熱を注ぐ能登杜氏たちの姿を描いた110分のドキュメンタリーです。公開から10年が経った今、観るこの映画には新たな感慨がありました。
私は2022年2月に白藤酒造店を訪れたことがあります。その時、輪島の歴史の厚みを感じる街並み、田んぼや海の風景、行商の魚売りのおばちゃんの人情など、能登の美しさに心を打たれました。取材前夜には居酒屋で魚介を堪能し、地酒を楽しみ、もう1軒飲み屋で地元の人々と語らい、能登杜氏の早朝の仕込みを目にするためにいつもより早起きした経験も忘れられません。
映画の中に、私が心を動かされたその風景が確かに残っていました。しかし、それらが地震によって様変わりしてしまったことを想うと、涙が次から次へと溢れました。
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私の決意
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地震発生後からイベントに行くまで、「私が行っても邪魔なのでは」と思っていましたが、「訪れることで元気になる人がいるなら、今年こそ行こう」と決意しました。そしてその情報を多くの人に伝え、能登の魅力と現状を発信していきたいと思います。
活動を続けている石井かほり監督に心から敬意を表します。私もチャリティ上映会を企画するなど、少しでも能登に貢献できることをしていきたいです。その第一歩として、映画のDVDを購入しました。この映画を多くの人に届けたい、そう心から願っています。
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