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「ゆきの美人」秋田醸造(秋田市、1919年創業)/秋田県・日本酒の旅

秋田県庁さんからのご依頼で、冬の秋田を訪問しました。

一般見学を受け入れていない酒蔵ですが、蔵やつくり手の背景を知ることで、お酒がより一層味わい深く感じられるはずです。ぜひお付き合いいただき、秋田旅行の際には居酒屋さんで飲んでみてください。

※本記事の情報は、2023年2月に訪れた時点のものです。営業時間や見学可能な状況など、変更がある場合もございますので、旅行計画の際は最新の情報をご自身でご確認ください。


ゆきの美人|秋田醸造

秋田市内のマンションの1階にある酒蔵「秋田醸造」。その規模を知って驚きました。敷地面積はなんと1000坪、66戸のマンションが建つ中に製造所が併設されています。


社長・小林忠彦さんという人物

「おう!久しぶりっ!」と元気よく迎えてくださったのが、小林忠彦社長。
現在では全国的に知られる「蔵元杜氏」というスタイルを、秋田県で最初に実践した方です。

その後、「新政」の佐藤さん、「春霞」の栗林さんといった方々も、小林社長を訪ねてアドバイスを仰ぎ、「ゆきの美人」の在り方から多くを学んだそうです。

研究熱心な小林社長は、他社のお酒も常に利き酒し分析を行いながら、トレンドを意識しつつも「ウチの会社はこう。」という信念を貫かれています。率直で気さくなお人柄と論理的な思考、合理的で先進的な姿勢に、話していると自然とその哲学に引き込まれました。


酒蔵の歩み

秋田醸造は大正8年創業。2000年に父親の代から受け継いだ酒蔵を改築し、翌2001年に現在の社屋を完成させました。新蔵3年目には山内杜氏の制度を廃止し、小林社長自らが杜氏を務めるようになりました。

大量生産ではなく、品質を重視した小仕込みの設備に転換。冷蔵設備を完備した環境のもと、徹底した低温管理でお酒を仕込んでいます。製造所は約180坪で、広々とした空間が確保されています。

製造チームは10人。お盆明けの8月から酒造りをスタートし、すべて純米酒で仕込まれています。仕込み水は、秋田市太平山麓から汲んできたものを使用。原料米は全量手洗い、限定吸水で丁寧に仕込みます。


醸造技術と蔵内の美しさ

蔵内は清潔そのもの。麹室は秋田杉を使用した木製で、日東工業所が製造したもの。非常に立派で美しい麹室があり、ここがマンションの一階であることを忘れてしまうほどです。

「ゆきの美人」の酒質はモダンさとクラシカルな旨みが融合しており、どの銘柄も米の個性が際立つ仕上がりです。特に「ゆきの美人 純米吟醸 活性にごり生」は、フレッシュな味わいが楽しめる人気商品です。

お酒は貯蔵せずすぐに出荷されるため、冷蔵管理で年間を通じてフレッシュな新酒が楽しめるのが「ゆきの美人」の大きな特徴です。


秋田で「ゆきの美人」を訪れて

秋田市内の住宅街に佇むこの酒蔵で生まれる「ゆきの美人」。その美しい酒質には、蔵の哲学と技術が詰まっています。

まだ試したことがない方、ご無沙汰している方は、ぜひ「ゆきの美人」を手に取ってみてください。きっとその魅力に引き込まれるはずです。

最後に

今回の訪問では、秋田醸造さんの取り組みと酒造りへの情熱を深く感じることができました。このような貴重な機会をいただけたこと、酒蔵の皆様と秋田県庁の皆様に心より感謝申し上げます。


※情報は、2023年2月に訪れた時点での情報です。

【特記事項】
2023年7月の記録的な大雨により、秋田市楢山登町にある酒蔵が床上1メートル以上の浸水被害を受けました。この被害により、麹づくり専用室を含む設備が大きく損傷し、専用室の解体と再建が必要となりました。
復旧支援として、地元の酒販店や豆腐専門店が協力し、チャリティー飲食会を開催するなど、多くの支援活動が行われました。
現在では、設備の変更や手直しを経て、再び通常通り酒造りを行っています。ただし、訪問時と現在では設備が一部変更されていますので、ご留意ください。

※秋田醸造は見学ができません。売店もありません。「ゆきの美人」取り扱いの酒販店でご購入下さい。


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