「働けなくなった時の保障」と言われて高度障害保障を提案された人が読むnote
こんにちは!
いきなりですが、まずは以下のやり取りをご覧ください。
保険営業「○○さん、もしあなたが働けなくなってしまったら収入ってどうなりそうですか?
収入が下がってもし介護まで必要となったら、ご家族の生活ってどうなっちゃうと思いますか?
そのリスクが初めからわかっているのなら、今から備えておいた方が安心じゃないかな〜なんて私なんかは思っちゃうんですが、○○さんはどう思われますか!?」
相談者「働けなくなるなんてちょっと想像できないですけど、もしそうなったら確かにかなり困りますね…」
営「そうですよね〜実は生命保険には高度障害保障というものがありまして、ごにょごにょ」
相「え!そうなんですか!?
死亡時だけではなく働けなくなった時にもちゃんとお金がもらえるんですね」
みなさんは保険営業からセールスを受けて、このように言われたことはありませんか?
その提案もう少し冷静に考えてみましょう!
そもそも高度障害とは?
誰でも「高度障害」という文字を見れば、それがどんな状態なのかある程度は想像がつくでしょう。
具体的な内容は各保険会社の約款に記載されており、会社が変わっても内容はほぼ変わりません。
生命保険文化センターによると、主に以下のような状態が高度障害として認定されます。
どれも言い回しがややこしいので、それぞれ少し掘り下げて確認していきましょう。
〜両眼の視力を全く永久に失ったもの〜
矯正視力(メガネやコンタクトレンズをつけた状態)を測定し、0.02以下で回復の見込みがない状態です。
ただし、眼瞼下垂や視野狭窄(説明は省きます)などの視力障害は含まれません。
〜言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの〜
言語機能を失ったものの中には、口唇音・歯舌音・口蓋音・こう頭音(こちらも詳細は省きます)の4種類のうち3種類以上の発音が不能で回復の見込みがない状態が含まれます。
また、声帯を全摘出した場合や、脳言語中枢の損傷による失語症などで意思の疎通ができず回復の見込みがない状態も該当します。
そしゃく機能を失ったものには、流動食以外を摂食できない状態などが挙げられます。
〜中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの〜
大脳・脳幹・小脳・脊髄全体または精神に障害があり、常に介護を要する状態です。
常に介護を要する状態とは、食物の摂取、排便・排尿・その後の始末、および衣服着脱・起居・歩行・入浴いずれもが自分ではできずに常に他人の介護を要する状態で、1つでも自分でできるのであれば、原則として高度障害状態には該当しません。
〜両上肢とも手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの〜
両手首から先を失った状態、または肩関節以下が完全麻痺していたり上肢の各関節が完全硬直で動かせず、回復の見込みがない状態です。
〜両下肢とも足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの〜
両足首から先を失った状態、または両足股関節以下が完全麻痺していたり下肢の各関節が完全硬直で動かせず、回復の見込みがない状態です。
〜1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの〜
左右いずれかの上肢のうち手関節、肘関節、肩関節のどれかを失い、かつ左右いずれかの下肢の足関節、膝関節、股関節のどれかを失うか、下肢がその用を全く永久に失った状態です。
〜1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの〜
左右いずれかの上肢がその用を全く永久に失い、かつ左右いずれかの下肢の足関節、膝関節、股関節のどれかを失った状態です。
高度障害がどんな状態か少しイメージができましたか?
これはかなり厳しい状態だな〜と思ってくれた人は、きっと正しい感覚をお持ちだと思います。
この状態に認定されると、契約内容によっては保険会社から高度障害保険金を受け取ることができます。
高度障害保険金について
多くの死亡保障がある保険において、「死亡保険金=高度障害保険金」となっており、高度障害に認定された場合は亡くなった時に遺族が受け取るはずだった死亡保険金を高度障害保険金としてご自身が非課税で受け取ることができます。
高度障害になってしまった時に保険金を受け取れるのはとてもいいことですが、注意すべき点もいくつかあります。
① 高度障害の原因となる事故や疾病が、保険の責任開始日以降に発生していなければ支払われない
② 回復の見込みがあると支払われない
③ 保険契約者や被保険者の故意の場合は支払われない
④ 死亡保険金と重複して支払われない
主なものを紹介しましたが、特に保険加入時に注意しなければいけないのは④です。
高度障害保険金は死亡保障とセットで同額という場合がほとんどで、高度障害保険金を受け取ると保険契約自体が消滅してしまいます。
高度障害で保険金を受け取ったが、自分が亡くなった時には遺族に保険金を残したい、ということは1つの保険では基本的にはできません。
逆に言えば、死亡保障は欲しいが高度障害保障はいらない、ということも基本的にはできません。
そういった注意点を考慮したうえで、本当に保障が必要なのかを検討するといいでしょう。
働けない状態=高度障害?
さて、ここからが本題です!
そもそも「働けなくない状態=高度障害」と考えていいのでしょうか?
既にみなさんもお気付きの通り、そんなことはないですよね…笑
それぞれの範囲を考えればこうなるでしょうか。
働けない状態>高度障害
「高度障害→働けない状態」は割と納得できる部分はあるかもしれません。
ただ、高度障害に認定されても仕事をして収入を得ている人がたくさんいます。
その背景まで想像すると、お金がないから無理をしてでも働かなければいけない人もいれば、夢を追い続けたいなど本当に様々だと思います。
そんな不測の状態になってしまった時に経済的な手助けをしてくれるのが保険なわけですから、その状況を考えて保障が必要であれば保険でしっかり備えましょう。
預金で高度障害に備えるのは事実上不可能だし非効率です!
はい、ここで少しまとめます。
結局は何が言いたいのかというと、働けなくなった時の保障を本気で考えたいのなら、高度障害だけにフォーカスするのは得策ではないということです。
語弊を恐れずストレートに言うと、もしあなたが保険営業から話を聞き提案を受けて、「働けなくなった時の保障」として高度障害の保障しか提案されなかった場合、その保険に加入していいのか、さらにはその人に担当を任せていいのか少し疑った方がいいと思います。
理由は大きく分けると以下の2つです。
「働けない状態=就業不能・就労不能」は高度障害だけではない(というか、むしろそれ以外の方が範囲が広いし大事)
保険会社によっては大きな保険金額で死亡保障の契約をお預かりすると社内で評価が高くなる場合がある
まず1についてですが、働けない状態に備える保険は高度障害保障だけではなく、他にもたくさんあります(また別の機会に詳しく説明します)。
働けなくなることを考えるのであれば高度障害だけではなく、障害年金や障害者手帳、入院や在宅療養、精神疾患などその他にも考えなければいけないことがたくさんあります。
営業がそういった情報提供をして選択肢を提示したうえで高度障害保障の提案をしている場合には問題はないでしょう。
もしそうでない場合は、単純に知識がない(新人の駆け出しである程度は仕方ない場合もあります)か、自社商品に都合良く誘導しようとしている確信犯の可能性があるので注意が必要です。
営業は自社商品でお客様の課題を解決するのが仕事です。
自社商品を自信を持って販売することは何も悪いことではありません。
ただ、これを保険営業と考えると、お客様の役に立つはずの一般的な知識がない(勉強をしていない、するつもりがないのかも)、もしくは自分は知っているのに隠して言わない、こういう人に自分の大切な保障を任せて長くお付き合いしていけるでしょうか?
心当たりがある人は、ぜひ一度考えてみるといいと思います。
次に2についてですが、そういった会社が実際にあります。
保険はあくまでも保障が大事で死亡保障なんだ!個人的にはその文化はまったく否定しませんし、むしろとても素晴らしいと思っています。
正々堂々と死亡保障を販売し切ることは中途半端な保険営業にはできないんです。
営業としては顕在的なニードがある医療保険とかがん保険を販売している方がハッキリ言ってすごく楽なんです。
ただ、適切ではない(高額すぎる)死亡保障を販売するのはどうでしょうか。
一般的に若い独身の人にそこまで高額な死亡保障は必要ない(もちろんその人の状況による)と考えられます。
いきなり高額な死亡保障を持ちましょうと言っても当然ピンとこないわけですが、営業としては「働けなくなった時の保障」と言って話題を高度障害にすり替えるととても話がしやすいですよね。
「高度障害保険金=死亡保険金」なわけですから、高度障害の保障が必要だ!と思ってもらえれば、若い独身の人にも高額な死亡保障を契約してもらえる可能性があるというわけです。
ちなみに僕が今までお会いした中では、24歳で一般的なごくごく普通の会社員が1億円以上の死亡保障に加入していたことがあります。
いろいろとヒアリングをすると、本人はそんな高額な保障だと思っていなかったり、保障範囲も営業から聞いていたのとなんか違うとか、そういう提案はダメでしょう…
結局はその営業次第ということになってしまいますが、営業を受ける側にも受動的にただセールスを受けるだけではなく、事前に情報収集をしたり積極的に質問をするなど能動的な姿勢が必要なのかもしれませんね。
まとめ
「高度障害」を軸に解説しましたが、みなさまいかがでしたか?
この記事に限らず僕がこういった発信をすることで、少しでも多くの人が自分に合った最適な保険や担当者と出会う手助けを微力ながらできることを心から願っています。
この話の続きにも繋がりそうな「正しい保険の入り方」については、また後日改めて更新できたらと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます!