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ぼくらの「アメリカ論」

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ぼくらのどこかに、いつも「アメリカ」がある。 高知、神戸、東吉野。文学者、建築家、歴史家。居住地も職業も違う3人が、互いの言葉に刺激されながら自分にとっての「アメリカ」を語る、こ…
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#911

6 オフィスビルという欲望の建築の終焉 光嶋裕介

人間の生活と建築は常に密接な関係にあり、社会が大きく変化するたびに新しい建築が生まれてきた。 白岩さんの言うように、アメリカ先住民族は「大建築」を遺さなかった。だが、世界が高度に近代化した20世紀は、人間が集まって生活することを選択した時代となり、都市化が進んだ現代はまさに「大建築」の時代となった。生活の大きな部分を働くことが占め、資本を生み出す労働の場は工場からオフィスビルへと変わっていった。労働力は賃金となって分配され、モノやコトをお金で交換する経済活動が世界を覆い尽くし

3 私の人生に「アメリカ」は、関係がないと思っていた。 青木真兵

なぜアメリカについて語り合いたくなってしまったのだろう。まずはそのあたりから話を始めていきたい。 幼いころからアメリカを意識したことはなかった。行ってみたいと思ったこともないし、特段のかかわりもなかった。祖父が海軍にいたので先の戦争の話は聞いていたし、もちろんその戦争はアメリカと戦ったもので、数えきれないほどの空襲や2度の原爆投下で日本人がたくさん殺されたことは知っていた。それでもすごく遠い国、自分とは関係のない国だというイメージがあった。だから今、アメリカと聞いて頭にパッ