創作「途方落日」 一
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角部屋。定輔の住む、長方形が外の道路に従って図々しく削れた台形型をした101号室、そろそろ煙草の黄色い脂(ヤニ)が目立ってきているその薄い壁の向こうから声が聞こえてきた。長らく住人の居なかった隣りの部屋に誰かが引っ越しをしてきたようだ。男二人で何やら楽しげな会話をしながら荷物を運び入れている。天気だけは良い日曜日の午前中、定輔は携帯電話でタクシーを呼んだ。駅前のパチンコ屋へ行く為である。験担ぎ、徳を積む、そんな訳でもないが、まずはタクシー代金六百円を世の中に投げれば、周り