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柱の傷

柱のあちこちにきざまれた傷は

家族の背丈の記録

たとえば七歳の息子が

「お父さんの七歳に勝ったよ」と

目を輝かせたり

たとえば五歳の娘が

「お母さんの五歳と同じよ」と

目を丸くしたり

東京にもまだ多く残る

木造の家々には今も

そんなひと幕があるかもしれない


数値やデータでは語れない

あたたかな歴史と

その柱が支えている家


(第38回メトロ文学館入選)