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ポスト

町はずれの小道に

たたずむ古参のポストがいます

ここ幾日か降りつづいた雪の

わたぼうしをかぶって


若いころから寸胴で

今じゃ肌つやもあせてきましたが

それでも律義にきまじめに

口だけはいちども閉じぬまま


底冷えするこんな朝にも

かれは凛と立ち 待っています

礼状や お見舞いや 恋文が

人々の手より投げこまれるのを


からだが赤くほてっているのは

カンシャや イタワリや コイゴコロが

腹の中で冷めてしまわぬよう

必死にあたためているから


そのせいでしょうか

木々や野原につもる雪より

かれの頭のわたぼうしが

ひと足さきにとけ出すのは


(「詩とファンタジー(冬晶号)掲載作」)