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夕焼けの種

ある春の夕方

半球型の天体図をしょって

きみはやってきた

ちっちゃなくせに

お天道様の名をしょって

きみは茎をのぼる


そんな細い足じゃ

さぞかし重かろうね

そう話しかけても

きみは知らぬ顔で

アリマキをたいらげては満足気

味の評価に

七つ星なんぞつけて


ねえ どこから来たの

そうたずねても何食わぬ顔で

葉の先に凛と立ち

ひとつ深呼吸をすると

不意にきみは飛び発つ

ねえ どこへ帰るの

宇宙や太陽をしょったまま


西の空に

ひと粒の種が吸い込まれると

あとには大輪の

夕焼けが咲いた

(「詩とファンタジー春夢号」掲載作)