【選は創作なり】飯田龍太句集『麓の人』『忘音』『春の道』
四十代最後の一年となりました。この十年を振り返ってみると、人並みにいろいろとありました。人によっては、自身の人生を句材にするようなことはしない、という方もいるでしょう。しかし、そういう人であっても、時間と無縁に生きられる人はいない以上、その人の時間がなんらかのかたちで俳句に刻まれているように思うのです。
飯田龍太は大正九年(一九二〇年)生まれ。四十二歳のとき父蛇笏、四十五歳のとき母菊乃が相次いで亡くなります。龍太は二十代のとき、戦争と病気で三人の兄を亡くしています。三十代は