【感想】死にたくなったら電話して 李龍徳
1.あらすじ
内容(「BOOK」データベースより)
「死にたくなったら電話して下さい。いつでも。」空っぽな日々を送る浪人生・徳山は、ある日バイトの同僚に連れられて十三のキャバクラを訪れる。そこで出会ったナンバーワンキャバ嬢・初美から、携帯番号と謎のメッセージを渡される。猛烈なアプローチを怪しむも、気がつけば、他のことは何もかもどうでもいいほど彼女の虜に。殺人・残酷・猟奇・拷問・残虐…初美が膨大な知識量と記憶力で恍惚と語る「世界の残虐史」を聞きながらの異様なセックスに溺れる徳山は、やがて厭世的な彼女の思考に浸食され、次々と外部との関係を切断していき―。ひとりの男が、死神のような女から無意識に引き出される、破滅への欲望。全選考委員が絶賛した圧倒的な筆力で、文学と人類に激震をもたらす、現代の「心中もの」登場!第51回文藝賞受賞作!
2.感想
★★★★☆ ダークな世界観が好きな方におすすめ。
徳山が徐々に洗脳されていく様子が印象的だった。
近くにカリスマ性を持つ初美のような人物がいると、現実でもこういったことが起こるのだろう。
徳山と初美の力関係は、作中の中盤まで徳山が主導権を握っている(ように見える)が、終盤では完全に逆転していた。
初美自身は、一緒に心中してくれる人を今まで探していのだろうか。
しかし、終盤は徳山と本当に心中する気があるのか疑問を抱くほどであった。
また、形岡に対する初美のメールの代筆は、悪意の塊すぎて読んでいる最中に笑ってしまった。
3.疑問点
・入学金の行方
⇒ やはり初美が隠したのだろうか。徳山と心中するために。
初美は形岡に対するメールを代筆しているが、その際に徳山が大学に行かない旨を伝えている。(=入学金の件を知っていた?)
・なぜ初美は結婚を拒んだのか。
⇒ これは最後まで分からなかった。
まぁ、そのうち二人とも死ぬのに、呑気な提案だと思ったが
初美が両親の反対で結婚を拒むというのは、今までの行動上考えにくい。
初美の徳山に対する気持ちが覚めてしまった可能性も、メールの代筆から考えた。
僕もいつかはいまの彼女に飽きてしまうでしょう。~(中略)
人間には必ず飽きが来る。~(中略)
型に嵌まった遣り取りに疲れて、無難な唯一の道として、沈黙する。
形岡に対するメールの代筆のため表向きは徳山視点だが
これは初美の今の心理状態ではなかったのだろうか。
4.印象に残った言葉
しんどくなったり死にたくなったら電話してください。いつでも。
人類なんてものがいつの世も、どの地域に生まれても、本質的にあまり変わらずに、どいつもこいつもクズばっかりっていうのがこういう本読んでるとよくわかります。ていうか、そういうのを読むと私は安心するんです。
死にましょうよ。心中しましょう。それが私たちの取れる唯一の脱出策です。唯一の、まともなままでいられる生き方。意志と目的と結果が一致してしかも成功の一点がそのまま永遠となる唯一のアイディアです。ね?心中しましょうよ