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短編 永久機関
あんた、かわってるね
と、泌尿器科の先生は背中をみせたまま渇いた声で、そう告げた。
次の言葉を待つも、何もでてこない。
じっと待ってると、チラリとこちらを見て、もうそれしまっていいよ、と促された。
慌ててパンツを履きベルトを締めながら、何でだろうと気になったが、質問する気にもなれなかった。
帰りの電車でも、どうやってアヤちゃんに伝えようと、記憶を巡らせる。
2ヶ月前、会社の先輩にのせられて、風俗に行った。正確にはヘルス。
調子に乗って、目隠しオプションまで付けてしまった。
そのあとアヤちゃんともセックスしたから、多分自分です。と伝えようか。馬鹿か俺は。
そんなこと言ったら全部終わるかもだけど、こういうのパートナーに伝えないの、なんとかハラスメントだよな、とスマホでゲーム実況を見ながら考える。
そうしたら、実家の母さんから、LINEがきた。正月帰ってくるのか聞いてきた。今年は山名達とスノボに行く予定だから、一日だけ寄ると、伝えた。嘘はだめよ、と言われた気がした。
俺は腹を決めて、その夜アヤちゃんを家に呼んで伝えた。
ごめん、俺、性病なっちゃって。
早く楽になりたくて、アヤちゃんが家に着いてコートを脱ぐのも待てなくて、思わず言ってしまった。最低だ。
アヤちゃんは眉をひそめ、たっぷり間をとって、
はぁ?と怒気ついた。
最悪なのは、その後アヤちゃんに問い詰められて、お店の名前まで口走ったことではなく、アヤちゃんが、まじもう無理と言ったあと、斉藤さんになんて言おうって泣き出したことだった。斉藤さんも生なんかい。とは、もちろん言えなかった。
そんな最悪の年末をすごして、山名達とスノボに行って、年を越して、実家に帰った。
風呂上がり、裸のままで脱衣場にいたら、母がたまたま入ってきた。気にせず身体を拭いていたら、
あんたかわっとるねぇ、チン毛剃っとん?
コットンみたいに言うな、と心の中で突っ込みながら、ああ、あの医者、と思った。
だが、これは違う。違わないが違う。
病気とかではなく、俺はいつもパイパンなのだ。
一人暮らしをはじめて、自分が掃除好きということに気づいた。こだわればこだわるほど、掃除する度に落ちている陰毛が気になる。
俺が生やして、俺が落として、俺が掃除する。なんだこの時間は、と、ある日この永久機関に気づいただけなのだ。
アヤちゃんと別れてから、しばらく葛藤した後、風俗へ通い出す。
金曜の池袋の風俗だけで、一晩で一体いくらのお金が動いているのだろう、と思いを馳せながらホームに颯爽と降りる。
お気に入りのお店の名前は、cokehead cutie pie(※)コケンキュッパ。
もちろん予約するときの名前は斉藤だ。
滅べ斉藤!
(※)inspaired from Nas "memory lane"