[聖書と映画 2] 「34丁目の奇跡」 ークリスマスとは目に見えないものを信じる時ー
1. 「信じる心」を取り戻す
「大切なものは見に見えない」とは、星の王子さまのことばですが、大切なものに思いを馳せるクリスマスの時が、やってきました。
今回、ご紹介する映画「34丁目の奇跡」は、クリスマスに「目に見えないもの」を信じる心を回復する家族の物語です。
舞台はニューヨーク。マンハッタン34丁目のデパートで働くキャリア・ウーマンのドリーと、サンタクロースを信じない6歳の娘・スーザンの前に、謎の老人が現れます。クリス・クリングルと名乗るその老人は、自分は本物のサンタだと言います。
老人は、ドリーのデパートでサンタ役として売上に貢献するものの、ライバル店の陰謀で精神病棟に強制送還されます。
しかし、老人は、クリスマス・イブに奇跡を起こし、ドリーの頑なな心を解きほぐし、娘スーザンにも、サンタクロースを信じる心を与えます。
この映画は、1947年製作の「三十四丁目の奇蹟」をリメイクしたものですが、キャスト、スタッフが素晴らしい。名優リチャード・アッテンボローが演じるサンタクロース(クリス・クリングル)が、実にいい味を出しています。
音楽も、クリスマスの気分を盛り上げてくれます。ナタリー・コール、エルビス・プレスリー、レイ・チャールズ、さらにはゴスペル女王アレサ・フランクリンまで、映画を彩るクリスマスソングの数々が聴きものです。
また、ジョン・ヒューズなど「ホーム・アローン」シリーズの製作スタッフもそろい、クリスマスらしい演出が散りばめられています。毎年、クリスマスになると観たくなる映画です。
2.私たちは信じる
「クリス・クリングルは、気の触れた哀れな老人か、本物のサンタなのか」映画のプロットでは、サンタは存在するのかという論点の裁判が、クライマックスへの「伏線」となります。
この裁判をめぐって、ニューヨークの市民が、「私たちは信じる(We Believe)」の看板をこぞって掲げて、サンタが存在することを信じると、支持します。
判決当日に、1ドル札に印字されている「In God We Trust(我々は神を信じる)」の文字が赤く囲まれたものが、少女スーザンから裁判官に渡されます。
その1ドル札をみて、裁判官は次のような判決を言い渡します。
アメリカ国民と政府が認めた紙幣に、神の存在が、したためられている。政府は、信じるという心のみで、物的証拠もなしに神の存在を認めている。同じように、市民の信じる心によって、サンタクロースの存在は認められる!
アメリカの良心を象徴しているかのようなシーンです。もちろん、アメリカ社会は、人種や格差問題などの闇も抱えています。
また、多様な宗教が認めら、物質主義も広がる中で「We Believe」の社会とは言い切れない部分も、あるのかもしれません。
しかし、アメリカという国自体、深い部分では、信じるという力の集積したコミュニティです。現在も「We Believe」というエートス(というか内在的論理)こそが、アメリカの強さ、明るさ、正義の原動力であることは、歴然とした事実なのでしょう。
夢、希望、そして創造主、これら目に見えないものを信じる心が、この映画の通奏低音を奏でています。
3. 憎しみや自己中心に打ち勝つ
サンタクロースであるクリスのセリフです。
サンタクロースを信じるということは、人の善意、希望、ゆるしの力を信じることだ、というメッセージです。
私たちは大人になるにつれて、自分の能力の限界をみせつけられたり、人に裏切られたり、傷を受ける中で、心を閉ざし、冷めた態度をとってしまうものです。現実世界を生きていくうちに、子供の時に持っていた信じる心は小さくなり、打算的にもなります。
もちろん、現実的に考えることは、非常に大事です。しかし、それだけで生きていくのは、あまりに寂しいし、潤いがない。また、憎しみを抱え、心を閉ざして生き続けるのは、しんどいものがあります。
小さな子供を見ていると、不思議な空想や夢を信じ、その空想の中で遊んでいます。ここで夢、空想とは「サッカー選手になりたい」「良い車をほしい」のようなものとも少し違う、大人から見ると滑稽とも思えるようなものです。
その空想の世界に生きている子どもたちの目はキラキラしていて、嫌なこともすぐに忘れて笑っています。ケンカした相手とも、すぐに仲直りして遊んでいます。
私たち大人も、もう少し、子供のような想像力、夢があってもいいのかもしれません。クリスマスの時期、目に見えない大切なものを感じる、温かな時間となりますように。
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