雑記:唐寺と孔子廟
長崎市内には、「唐寺」と呼ばれる近世に華僑の人々によって建てられた寺院が複数存在する。
主として唐人の菩提寺(寺請制度の創始によって華僑独自の檀那寺を建立する必要が生じたため)として開かれた寺院で、隠元隆琦が来日するとそれらは黄檗宗の寺院となった。
代表的な唐寺の一つである興福寺は、日本最古の黄檗宗の寺院で「南京寺」と通称される。
本堂に当たる大雄宝殿(下の写真二枚目)は重要文化財に指定され、また航海の女神である媽祖を祀る媽祖堂(下の写真三枚目)もある。
福建省・浙江省・江蘇省出身の信徒が多いため、媽祖堂を有するのが唐寺の大きな特徴の一つである。
なお、媽祖堂に向かって左側にある門(下の写真四枚目)は、唐人屋敷の門を移築したもので、現存する唯一の江戸期の唐人屋敷の建造物として重要文化財に指定されている(門は長崎市所有)。
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崇福寺も著名な唐寺であり、中国様式の寺院としては日本最古であり、福建出身者の手によって建立されたことから「福州寺」とも呼ばれる。
特徴的な様式の山門は重要文化財に指定されているが、門自体は日本人大工の手によるものである。
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山門先の石段を登った所にある第一峰門(下の写真一枚目)と、本堂に当たる大雄宝殿(下の写真二枚目)は国宝に指定されている。
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崇福寺にも媽祖堂があるが(下の写真二枚目、大雄宝殿の向かって右側)、こちらは媽祖門が付随しており(下の写真一枚目)、門を備える媽祖堂としては長崎唯一のものである(媽祖門は重要文化財、媽祖堂は長崎市指定文化財)。
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媽祖堂内部に祀られる媽祖像の他にも、同寺には関帝や韋駄天など中国様式の仏像・神像を多数見ることが出来る。
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華僑の人々の手によって造られた建造物としては、他にも孔子廟が有名であるが、オランダ坂などの観光名所で知られる旧外国人居留地のすぐ南にある。
長崎の孔子廟は明治期に清朝と長崎在住の華僑によって造られたもので、歴史こそ浅いが規模としては日本最大の孔子廟で、孔子廟の「総本山」とも言うべき山東省曲阜の孔子廟を模している。
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日本では最大級の孔子像を祀る大成殿(下の写真一枚目)の両脇には、儒教の賢人像が並び、大成殿前の広場では定期的に変面ショーも行われる(私が孔子廟を訪れた際には、あいにく大成殿の一部が改修工事中であった)。
大成殿奥には中国歴代博物館があり、北京の故宮博物院所蔵の陶磁器(ただし清末のものがほとんど)や孔子廟にまつわるパネル資料などが展示されている(料金は孔子廟と共通)。
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