東北地方の石造物⑱:中尊寺願成就院有頸五輪塔、月見坂有頸五輪塔(伝・弁慶の墓)
名称:釈尊院有頸五輪塔(宝塔)、月見坂有頸五輪塔(宝塔)
伝承など:弁慶の墓(月見坂有頸五輪塔)
所在地:岩手県西磐井郡平泉町平泉 中尊寺
奥州藤原氏四代の栄華を今に伝える平泉の中尊寺は、奥州藤原氏初代・藤原清衡が創建した寺院で、清衡・基衡・秀衡三代の遺体を安置する金色堂で知られるが、境内には藤原氏が造立に関わったと思われる多くの石造物も残されている。
中尊寺の塔頭である願成就院には、その代表とも言える有頸五輪塔がある。
同じ中尊寺内の釈尊院墓地にある仁安四年銘の五輪塔と同時期の作で、平安時代末期の造立と考えられる。
この形式の石塔は平泉周辺の地域でのみ、かつ平安時代末期から鎌倉時代初期の短期間にしか造立されていないもので、五輪塔と見なすか宝塔と見なすかで議論が分かれるものであるが、いづれにしても東日本における五輪塔・宝塔の祖型の一つと考えられる極めて古様の石塔である(「有頸五輪塔」の名称は石田茂作によるもの)。
また古様なだけでなく、小型ながら洗練された様式を持つ美しい塔で、石造美術としても極めて貴重である。
過去にも紹介してきたように、この「有頸五輪塔」は平泉周辺に数基存在するが、中尊寺へ登る月見坂の入口で、現在は駐車場の一角となっている場所にも一石で作成された小型の有頸五輪塔が一基ある(三枚目、四枚目)。
この石塔は、古くから武蔵坊弁慶の墓と言われており、それ自体はただの伝承であろうが、平安時代末期の造立で確かに弁慶の没年頃と同時期のものである。
三枚目の写真は横から撮影したものであるが、石塔は縦に割られて背面部分が欠損しているが、平安時代末期の貴重な石塔で、また笠の部分が円形と言う珍しい形式を持つ。
なお、現在月見坂入口にある石塔は精巧に模したレプリカで、実物は中尊寺内の讃衡蔵に保管されている(写真もレプリカを撮影したものである)。
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