続・時代劇レヴュー㊴:天皇の世紀(1971年)
タイトル:天皇の世紀
放送時期:1971年9月~11月(全十三話)
放送局など:TBS
主演(役名):田村高廣(阿部正弘)・田村正和(橋本左内)ほか
原作:大佛次郎
脚本:早坂暁・新藤兼人ほか
大佛次郎がライフワークとして取り組んでいた『天皇の世紀』は、膨大な史料を用いてペリー来航から戊辰戦争に至るまでを描いた史伝的小説であり、彼の絶筆ともなった。
戊辰戦争の途中まで執筆した所で大佛次郎が死去したために、未完のまま終わっているが、本作を下敷きにしたドラマが、1971年にTBSで放送されている。
なお、1973年10月から1974年3月にかけては、全二十六回で再現ドラマを交えたドキュメンタリー版が第二部として放送されており、ドラマ版は主として原作の前半部、ドキュメンタリー版は主として後半部を扱っている(一部重複する内容もある)。
作品の性質上、全編を通じての主人公はおらず、毎回異なる人物にフォーカスして物語は展開されるが、複数回にわたってその人物が登場する際には、同一キャストが当てられている。
一応ペリー来航から時系列に沿って物語は進むが、第三回のみは話が遡って天保年間のエピソードになっている。
以下、各話のサブタイトルと主人公的人物(トップクレジットで登場する配役)を列記する(括弧内は演じた俳優)。
・第一回:黒船渡来 阿部正弘(田村高廣)
・第二回:野火 吉田松陰(原田芳雄)
・第三回:先覚 高島秋帆(二代目中村翫右衛門)
・第四回:地熱 橋本左内(田村正和)
・第五回:大獄 長野主膳(天知茂)
・第六回:異国 木村喜毅(津川雅彦)
・第七回:黒い風 尾高長七郎(露口茂)
・第八回:降嫁 田中河内介(丹波哲郎)
・第九回:急流 田中河内介(丹波哲郎)
・第十回:攘夷 島津久光(佐藤慶)
・第十一回:決起 高杉晋作(原田大二郎)
・第十二回:義兵 坂本龍馬(山口崇)
・第十三回:壊滅 藤田小四郎(峰岸徹)
本作はドラマではあるものの、基本的にはドキュメンタリータッチで描かれるため、全体的には地味な印象があるが、史実に忠実に作られているために見応えがあり、骨太な作品である。
取り上げる人物には、非業の最期を遂げた者も多いため、物語のトーンは暗めであるが、作品としてはよく出来ていると思う。
登場人物はかなり多いが、いづれも手堅いキャスティングになっていて、特に天知茂の長野主膳はかなりはまり役であった。
また登場シーンは少ないものの、一橋慶喜役の松橋登も雰囲気に良く合っていたと思うし、ジョン万次郎役のマコ岩松も良い味を出していた。
エピソードによって扱う分量にムラがある点(例えば、第二回は吉田松陰のアメリカ密航計画の顛末をじっくり時間をかけて描いているが、第十一回は高杉晋作を中心にした幕末における長州藩の動向が一話でまとめられている)が若干気になった、と言うか、後半のやや駆け足で進む展開のエピソードには惜しい感があったが、全体的には非常によく出来ている印象で、幕末を舞台とした作品の中では屈指の良作であろう。
なお、本作はずっと以前にVHSが発売されているが、DVDやBDのリリースはされていない(時折、CSや配信サイトなどで放送されることがある)。
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