近畿地方の石造物㉞:都島神社宝篋印塔・金禅寺宝篋印塔(附・石山寺宝篋印塔)
名称:都島神社宝篋印塔・金禅寺宝篋印塔
伝承など:なし
所在地:大阪府大阪市都島区都島本通 都島神社
大阪府豊中市本町 金禅寺
大阪市の地下鉄都島駅にほど近い都島神社には、珍しい形式の宝篋印塔がある。
この宝篋印塔は、笠を三重に重ねた形式で、この形式は近畿地方に数例があるだけの珍しい石塔である。
基礎に鎌倉時代後期の嘉元二年銘があり、現存する三重宝篋印塔の中では最古の例に当たる。
この宝篋印塔は完形ではなく、各部の塔身と相輪は復元されたもので、当初のパーツは基礎と笠のみであるが、三メートルを超える大型塔であり、その珍しい形とも相まって迫力と存在感がある。
同じ大阪府の豊中市の金禅寺にも、同型の宝篋印塔(二枚目)が存在しており、そちらはほぼ完形(相輪のみ欠損)である。
こちらは南北朝時代の貞和五年銘があり、都島神社の塔よりも時代も下り、塔の高さも二メートル弱とやや小ぶりであるが、全体のバランスが良く端正な塔である。
大阪府以外では、滋賀県大津市の石山寺に三重宝篋印塔の作例が現存する(三枚目)。
この塔も二メートルを超える大型塔で、大きさとしては都島神社塔と金禅寺塔の中間くらいであり、造立年代も鎌倉時代後期と推定されるので、双方の間に位置する(無銘なので都島神社の塔よりも古い可能性もあるが)。
この宝篋印塔には紫式部の供養塔と言う伝承があるが、これはもとより紫式部が石山寺で『源氏物語』の着想を得たこと(こちらも伝承であるが)ことから生じたもので、元来は紫式部とは無関係の塔であろう(なお、石山寺のある他の石造物については、「滋賀県内の石造物⑩」を参照)。
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