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廃止されゆく高速道路地図

2022年、NEXCO中日本から無料配布されていた高速道路地図が廃止され、デジタル地図に移行された。その理由は、

・昨今のデジタル事情
無駄な紙を大量に出さない

そんな建前だ。最近、こういうあからさまでわざとらしい「合理化」を理由にし、中止、廃止するものが多い。消費増税時の便乗値上げGoToトラベルや全国旅行支援の便乗値上げと全く同じ構図に見える。

そして日本国民は相変わらずおとなしく、

いいことなのかもしれない

と思わされてしまうと、反対の声をあげにくい。そこまで大きなテーマにしなくとも、「世の中で良いとされていること」に反対すると、非国民のように思われ吊し上げられてしまう。SDGsなんかは、その最たるものではないかと思う。(SDGsに真っ向から反対しているわけではないが、スローフード、昭和の音楽・再ブーム、鉄道ローカル線乗り、レコードの復活、フイルムカメラの再興…のようなことがあるわけで、企業が「合理化」を推し進めている中で、暗にそれに逆行する流れがあることは忘れてはならないと思う。

かつて日本道路公団の時代、各高速道路別に発行されていた地図が、サービスエリアの案内所に行くと置かれており、無料でもらうことができた。縦長に折りたたまれており、広げるとA3〜A2くらいの大きさにまで広がりその高速道路全体を眺めることができる。それを見ながら、誰かと旅の計画を練ったり、単に地図を見ながら旅に出かけたような不思議な感覚になることもできた。

自分が今の地理の知識があるのは、この高速道路地図が大きな役割を果たしていたと思う。市販の地図は高いし、早くて1年に1回の改訂しかないが、高速道路の地図は当時3ヶ月ごとに内容が新しくなっていたのである。当初は、「インターチェンジ周辺案内図」という名前で、表面が地図、裏面が各インターチェンジの出口周辺の簡易マップが丁寧につけられており、近年の「SAPAガイド」「サービスエリアガイド」とは違っていた。

最近の高速道路では、サービスエリアそのものが作られなくなり、規模の大きなパーキングエリア、ハイウェイオアシスというものが作られるようになってしまった。当時、サービスエリアの定義は、「50kmおきにあるレストランや給油所も設置されているエリア」だった。パーキングエリアは、小さな、ちょっと小汚い立ち食いそばに毛が生えたようなスナックコーナーがあったくらいだった。

これも、時代なのだろうか。そんなことで片付けられることなのだろうか。今や、「50kmおきのサービスエリア、15kmおきのパーキングエリア」どころか、高速道路に70km以上全く休憩場所がなく、堂々と「インター降りたら道の駅があるからそこへ行け」「その代わり料金はそのままにしてやる」というような場所が多く、北関東道、新東名高速、東九州道など全国に渡っている。

残念でならない。

そこで、少なくとも高速道路の地図くらいは、自分で更新してやろうじゃないかと思い立ったのがこのプロジェクトである。細かいことは更新できないかもしれないが、新しい道路が開通するたびにわくわくしたり、「こんな変な設計にしたのはなんでだ!」とひとり憤ったり、そんなことに耽ってみたいと思う。

高速道路で配布されていた地図、いまやNEXCO東日本のHighway Walkerにしか残っていない。NEXCO西日本のマップはデザイン性が恐ろしく乏しく、見るに耐えない。NEXCO中日本はそもそも紙の地図がなくしてしまった。

そんなにデジタルがいいのなら、デジタルで継続してやろうと思う。
かつて、高速道路で配布されていたマップが好きな人は、日本道路公団時代の標識のフォントが好きな人と通じるものがあるのではないかと思う。なんの利益にもならないけれど、見て懐かしく思ったり、新しい気持ちになってくれたらいいなと思う。