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全国通訳案内士試験(スペイン語)に挑戦

以前、「通訳ガイド」という呼び名だった国家試験。

2018年ごろだったか、この免許を持っていなくても外国人を案内できるという、ヨーロッパでは考えられない緩い法律ができてしまったため、

「こんな資格なくても仕事できるんだ!」

とかなり多くの人が思ったでしょう。自分もその一人でした。ただ、自分の場合は1995年頃に一度受験したことがあるのですが、そのときは通らず。しかし当時は将来は旅行業界へなどとは考えもしなかったので、放っておきました。

そもそも、主に観光向けの通訳ガイドと、企業などで活躍する通訳とはちょっと違っていて、後者は特に資格は存在していなかったからです。

ところが、前述のように誰もが通訳案内士ができるようになったと錯覚を起こしてしまっていますが、実は業界では、有資格者と無資格者では、圧倒的に有資格者への依頼、賃金が違うことをご存じでしたか?いくら外国語に精通していても、無資格者にはそもそも依頼自体を取り下げられてしまう機会も多いのです。

スペイン語で言えば、日本スペイン協会の文科省後援スペイン語技能検定試験や、全世界的に行われるDELEという試験が存在します。日本国内の企業や活躍の場が限られるのであれば、スペイン語検定(略して西検・せいけん・といわれます)で十分通用します。ところが外国で活躍したいとなると、その目安は、このEUのオフィシャル資格であるDELE(しかもC1以上)を持っている必要があります。

西検は、全問マークシートではなく一部記述式で、さらに日本語との翻訳もあるため、正直言って日本国内で(観光以外の)通訳業務をするにはこれを持っている方がとてもわかりやすい目安になります。西検2級で英検1級、西検1級は英検1級以上の知識が求められます。日本語にする、日本語からスペイン語にする、この2つのプロセスがうまくできなければ、日本国内で通訳はなかなか難しいですよね。

一方でDELEは、スペイン語のみの試験のため、スペイン語で読み、スペイン語で理解し、スペイン語で答えるというもの。翻訳は必要ありません。そうなると、西検よりも簡単なのでは……と錯覚しがちですが、特にC1以上になると、TOEIC 990点(つまり満点)以上の語彙力が求められるため、例えば私のように5年ほどスペインや中米に居住歴があっても、その間にテレビでも新聞でも雑誌でも、見たこともないような単語が次々と現れるC1などはなかなか通りません。文学書や小説がとても好きでよく読んでいました……という人は、類義語で表現している文章がたくさんあるので、比較的難易度は下がるかもしれませんね。私はスペイン語の小説などほぼ1度も読んだことがありませんでした。

英語で言えば英検、あるいはTOEIC。通訳案内士試験は、そういったものの勉強では合格しないのです。過去問を一度見て頂きたいのですが、まず語学で言えば、観光に関する語彙ばかり登場します。さらに、日本語のまわりくどい言い回しの翻訳だったり、日本文化、習慣を説明しなければならず、TOEICで必死に覚えた語彙は直接的に全く出題されません

今突然、「わび・さびについて1分以内で説明して」と言われたとします。

どうですか?わび、さび自体を簡潔に、外国人にわかるように日本語で言えますか?それを英語やスペイン語に一瞬で言い換えられますか?

突然「床の間の由来と、今の住宅での現状を教えて」と言われて、英語やスペイン語で答えられますか?

いわゆるそういう語彙が必要になってきます。

一方で、外国人を日本国内で案内していると、日本のいろいろな事情についても聞かれたりしますよね?で、例えば、

「アメダスって何ですか?」

「オタクって何ですか?」

「おしぼりってなんで提供されるの?」

「日本の電車はなぜ時間どおり来るの?」

というような、社会事象についても聞かれます。当然、試験問題には観光関連以外の時事的な言葉も出題されます。

さらにこの試験の難しさは、1次試験で5科目(外国語、地理、歴史、一般常識、実務)が問われることです。いくらスペイン語ができたとしても、数ヶ月前に起こった大きな出来事についてまったく知らないでいると、まさかの「日本語試験で不合格」をもらうことになります。

今年のサンマの初値はいくらだったか覚えてますか?

普段からニュースをしっかり見て、いろんな事をメモしておくことも大切。これは外国人と接する機会があると、自然と身についている習慣でしょうが、これをもっと厳格化して、ちゃんと記憶し、説明できるようにしておかなければいけない。

歴史についてですが、ちょっと前の過去問題を見たときに、札幌の歴史についての内容がありました。私は北海道在住ですが、4問中3問わかりませんでした。住んでればわかるものではない……のは当然なのですが、北海道で観光業に携わっているのに、それでも「えっ?」とうろたえる問題が出るのです。

幸い私は他の国家資格を持っているため地理が免除になり1科目少ないのですが、今述べたとおり、日本全国各地域の歴史に関する問題が出されるため、いずれにせよ47都道府県の大まかな歴史はくまなくチェックしなければならないということです。

実は私が受験した90年代前半は、1次で語学が通ったら、2次試験で日本語の試験だったんです。しかし今は5科目全部が1次試験丸一日かかるようになってしまったんですね。しかも合格率が昨年は3.9%。低すぎる……。

すでにオリンピックに向けての人員増強は必要ないわけですから、2018年からは難化していると言われています。

怖い。

恐い。

もし今年が通らないとしても、この試験は一発で受かることが難しいと言われていて、司法試験よりも合格率が低いわけですから、7回8回と受けている人もいるそうです。どのような結果になろうとも、あまり気にせず、とにかく日々の勉強を続けていかなきゃいけません。

自分はあまり長いスパンだと勉強が持続しないので、割と日付が近くなってから勉強をし始めるのです。それで合格してきた試験もあれば、ダメだったときもあります。

今回は今日から数えて21日間。毎日何の勉強をしたか記録を付け、合格すれば万歳、しなかったら来年の試験に向けての備忘録として残せればいいなと考えています。

深く考えず、とにかくまず、やってみよう。