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4-2-1-1. インドが生んだ? イギリス産業革命 新科目「世界史探究」をよむ
世界貿易の花形 インドの綿織物
世界の主要産地であったインドの綿織物は、インド洋をわたり、世界各地の人々のファッションにとりいれられていた。綿花は染めやすく、その土地に応じた柄がプリントされた。
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たとえば江戸時代の日本では、インドの港サントメにちなむ桟留(さんとめ)が、江戸中期に町人の女性たちの間で流行し、やがて国産化が図られるようになった。
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出典:羽田正『東インド会社とアジアの海』講談社学術文庫より
西アフリカでも、支配階層の衣装として、あざやかなブルーの綿織物が奴隷貿易と結びつく重要な交易品となった。
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18世紀はじめに大西洋における独占的請負契約(奴隷、タバコ、麦などのスペイン領アメリカへの供給、徴税業務、鉱山・真珠の開発などに関し、スペイン王権が民間人との間に結んだ契約)を獲得したイギリスは、インドの綿布やタカラガイを持ち込み黒人奴隷を獲得しようとしたのだ。
資料 1713年のイギリス-スペイン間のアシエント条約の内容
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このへんの話は、歴史総合で学んだ内容を踏まえよう。
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インドの綿織物ブームが蒸気機関を生んだ!
このように、18世紀のイギリスにとっての綿織物は、奴隷を獲得する上で重要な商品であったわけだが、のみならず、イギリスの上中流階級が好んでインド製綿織物(南インドの集散地カリカットにちなみ「キャラコ」とよばれた)を消費したことも、綿織物需要に拍車をかけた。
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最先端の綿織物を「国産化」(輸入代替)しようとする動きのなかで、イギリスでは、炭鉱の排水用に使用されていた蒸気機関を、工場の動力源とする技術革新(イノベーション)が起きた。
これをイギリス産業革命という。
木炭から石炭へのエネルギー転換
では、そのような転換が起きたのは、他の地域ではなくなぜイギリスだったのだろうか?
すでにイギリスでは16世紀以来、以下の理由から森林破壊が進み、木炭から石炭へと燃料の転換がすすんでいた。
・「小氷期」とよばれる気候の寒冷化
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・毛織物工業、大航海時代を背景とする商工業の発展と、人口増加・都市化の進展、それにともなう食料生産の増加
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というわけで、枯渇のすすんでいた木炭に比べ、豊富な石炭を使用したほうが安価だった。
この観点から見れば、産業革命は木炭から石炭へのエネルギー革命の一環であったとみることができる。
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蒸気機関の普及によって森林破壊にはブレーキがかかった。
しかし今度は、石炭の放つ煤煙による大気汚染や、都市のインフラ未整備に起因する水質汚濁など、新たな環境破壊が問題となった。
イギリスでは世界に先駆けて民間による自然保護団体「ナショナル・トラスト」が結成されている。それは、イギリスが世界で初めて蒸気機関にもとづく産業革命を達成したからこそでもあるのだ。
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