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世界が価値があると認める最適なポイントを見定める (4/5)
長崎・天草については、もともと2015年に『長崎の教会群とキリスト教関連遺産』として推薦書が出されていた。当初は、キリスト教の伝来から禁教期、信仰復活の歴史を軸に、大浦天主堂(長崎県長崎市)をはじめとする14の資産の考古学的価値を強調した主張が要になっていた。
しかし、現地調査をしたイコモスの評価が厳しいものだったことから、いったん推薦を取り下げた経緯がある。そこで私たちは構成資産を12に絞り、禁教期に焦点を当てたストーリーを新たに構築することで再び登録を目指すことになった。
私たち日本人から見れば、1864年に建てられた大浦天主堂の建築としての価値に目が向きがちだ。しかし、世界全体を見渡せば、ケルン大聖堂(ドイツ)やモン・サン・ミシェル(フランス)など、巨大なスケールと歴史を持った教会建築がすでに世界遺産として登録されている現実がある。
大浦天主堂の「世界が認める価値」はどこにあるのか。それは200年以上もの間、禁教下の弾圧に耐えながら信仰を続けてきた潜伏キリシタンたちが、宣教師と出会う「信徒発見」の舞台となったことに他ならない。
潜伏キリシタンたちのひたむきな信仰心とその軌跡にこそ、世界が認める価値がある。すなわち、構成資産そのものの価値に加え、禁教下において長年キリスト教を信仰し続けた信徒の方々の生活や生涯に焦点をあてた説明戦略を展開したことも、世界遺産登録が決まる大きな後押しになったと考える。
高橋政司
ORIGINAL Inc. 執行役員 シニアコンサルタント
1989年 外務省入省。パプアニューギニア、ドイツ連邦共和国などの日本大使館、総領事館において、主に日本を海外に紹介する文化・広報、日系企業支援などを担当。2009年以降、定住外国人との協働政策や訪日観光客を含むインバウンド政策を担当し、訪日ビザの要件緩和、医療ツーリズムなど外国人観光客誘致に関する制度設計に携わる。2014年以降、UNESCO業務を担当。「世界文化遺産」「世界自然遺産」「世界無形文化遺産」など様々な遺産の登録に携わる。
テキスト:庄司里紗
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