テン年代リブート作品の先鋒であるビートたけしとシンエヴァとの共通点
『呪術廻戦』の想像力の限界
現在『週刊少年ジャンプ』で連載中の『呪術廻戦』は、「領域展開」という各キャラクターの個性を反映した、オリジナルワールドの展開を軸としたストーリー展開で話を引っ張っている印象がある。それはとても「呪い」とは関係がなく単に「個性の出力」としてのフィールドへの引きずり込みに過ぎない。バトルのバリエーション、シバキ合いと運動、アクション。いかにも場当たり的な少年マンガのセオリーで構成されている。それは良くも悪くも楽しく退屈である。現在の『呪術廻戦』は、同じく『週刊少年ジャンプ』で連載されている『HUNTER×HUNTER』のゲーム的センスを踏襲した物語展開をしている。バトルに勝つとポイントが貯まり、ポイント数に応じて願いが叶えられる、ゲーム性のある謎のトーナメント。そして、新キャラ同士がひたすらバトルをし、キャラのバリエーションがイコール話のボリュームとなっている。
そして、『呪術』のうまい点はそれだけではない。ハッキリ言って雑な絵柄を己の「個性」とした。しかし、それすらも、ハンタが先んじてやっていることだ。これらの薄っぺらさの原因は、参照元(オマージュ)が全てジャンプ漫画でしかないからだと考えている。
リブートものの先鋒であるビートたけし
では、現在いいオマージュをしている作品はなんだろうか。それは、例えば『金色のガッシュ!!2』や『ザ・ファブル The second contact』などのリブートもの、セルフオマージュものが挙げられる。リブートもの、セルフオマージュものは最近の流行りで、少女漫画や少年漫画、アニメ、映画などほとんどの媒体において行われている。今の時代に「あえて」続編をやるという試み。
このリブート作品について、特に意識的に行っていた先鋒であるのがビートたけしだと考える。
ビートたけしはシリーズものの終わらせ方の正解を提示した
それまでビートたけしは常に新規性を求め、一つ一つ完結した作品を作り続けていた。しかし、2010年に公開された『アウトレイジ』の続編である『アウトレイジ ビヨンド』を2012年に公開したことを皮切りに、さらにその続編である『アウトレイジ 最終章』を2017年に公開するなど、『アウトレイジ』シリーズを発表し続けた。ビートたけしは明らかにこれまでとは違った方向に転向した。すでにある程度その世界観を提示してした上での新たな物語の提示。それは海外ドラマ的であり、親しみのある世界の続編を延長し、紡ぎ直し、キャラクターを延命させる。『ビヨンド』と『最終章』は、ヤクザもの作品をずっと作り続けてきたキャリアと、一回終わった作品の続きを作る意味を自己に問いかけているように感じた。しかも『最終章』は一番盛り下がるような内容だった。そしてそれは意識してそのような話にしたのだと思われる。弔い合戦のような、作品自体の死に場所を規定するような……。話の中盤あたりで伏線回収を仕切った上で、エピローグを長めにとり余韻を持たせ弔うように静かに終わらせる。この弔うような終わり方は個人的に『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に共通していると感じている。ビートたけしはまず自身の作品のリブートにチャレンジし、面白いものを作る期待に応え、さらにシリーズものの終わり方の答えを出したのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?