長風邪

何ヶ月もの間風邪を拗らせているような気分だ。治りそうでやっぱり治らなくて、それを抱えながらもしなくちゃいけないことをこなして生活を送る。別に死ぬ程の病状では無いが、一寸油断したら死に至るものなるかもしれないといったリスキーな代物である。その風邪に「執着」という名前をつけた。

そいつは誰と何処へ行こうと執拗くついて回ってくる。どうにか紛らわそうと爆音でバンドミュージックをかけてみるが、逆効果。「執着」はバンドミュージックを聞かせるとさらに存在を大きくして私の気道に入り組んでくる。その理由として、私と「執着」の間にはバンドミュージックが鍵となる共通の記憶が無数に存在することが挙げられる。それ故に「執着」に首を絞められてしまうので当然息が詰まり一層苦しくなる。結局「執着」と向き合わざるを得ない状況となり、堂々巡りのゴールの無い思考に陥ってしまうのだ。そのまま息の根を止められてしまえば楽なのになあ、とか思うけど結局生きることを辞められない。

「執着」に取り憑かれているような言い方をしたけど、「執着」を掴んで離さないのは私の方である。馬鹿だね惨めだね何してんの辞めちゃいなよなんてことは自分が一番分かっている。解っている。わかっているのに辞められない。だってそれを離してしまったら忘れてしまう。この気持ちも過去の事も無かったことになってしまう。そうなってしまえば生きている意味が無くなってしまうのである。「執着」は今に私をころそうと、タイミングを見計らう。死に至らせようとするアレである。

「執着」の中身は忘れられないあの男。ごめんなさい、気持ちが悪い事をしていることはわかっている。でもお願い、まだ、まだ消えないでおくれ。私の世界で幽閉されていておくれよ。

これはくだらない、私と「執着」のはなし。

一方的な愛のはなし。

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