怒らないで聞いてほしいんだけど…
「この前、めずらしく早起きして、駅前のコンビニに行ったらさ」
「うん」
「店員さんの態度がすごく悪くて。買ったものを自分のバッグに詰め込んでたら、イライラした感じですごい急かされちゃって」
「あぁ。たまにいるよな」
「混んでたから、忙しいのはわかるんだけどさ。ため息とかついてて、朝から嫌な気分になっちゃったよ」
「うんうん」
「コンビニ出た後にさ、なんかモヤモヤしてて、そのモヤモヤさせられたことに腹立ってきてさ」
「あぁ、振り回されてるね、他人に」
「いや、ほんとそうなんだよ。気が小さいから一言いってやることもできないし」
「そういうときはさ、その相手の事情を想像すればいいんだよ」
「相手の事情?」
「そう。例えば、その店員さんは本当はその日シフトに入ってなかったのに、後輩がバックれちゃったから急遽呼び出された、とか」
「なるほど」
「あとは、前日の夜に恋人と別れて、夜通し泣いてたから、ほとんど眠れなかった、とかね」
「ああ、なるほどね。確かにイライラしてても仕方ないかもなってちょっと思えるな」
「そうそう、まぁ結局他人のことなんてわかんないんだからさ、それが本当であれ、嘘であれ、そうやって自分の心を平和に保てばいいんだよ」
「へぇ! たまにはいいこと言うじゃん!」
「まぁね。……あ、そうだ。そういえばさっき、お前が楽しみにしてたケーキ食べちゃったんだよね」
「は? 何してんだよ! 絶対食べるなって言っておいただろ!」
「ほらほら、落ち着いて。相手の事情を想像して、ね?」
「え!? ……あぁ、えっと……朝から仕事が忙しくて、何にも口にしてなかった、とか?」
「いや、普通にうまそうだったから」
「……」
「……」
「……おい!」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?