コミュニケーションで大事なのはリアクションです
「なぁなぁ、知ってた? 会話で大事なのってリアクションらしいよ」
「リアクション?」
「そう。コミュニケーションが苦手な人でもリアクションさえできてれば、なんとかなるんだって」
「ほんとかよ……。筋金入りのコミュ障をあんまり舐めるなよ?」
「いや、ほんとに。ポイントはちょっと大袈裟かも? ってくらいリアクションをするんだって。そしたら相手は、話を聞いてもらえてるって気分よく話せるらしいよ」
「大袈裟なリアクションねぇ……」
「そうそう。話が苦手なら、相手に喋らせればいいんだよ」
「そんなに上手くいくもんかねぇ……」
「だから、それをちょっと2人で試してみようぜ! 練習、練習!」
「え? まぁいいけど。俺もお前もどっちかっていうと話下手だしな」
「だろ! 一緒にコミュ障克服しようぜ!」
「わかったよ」
「よっしゃ!」
「……」
「……」
「……で? 何を話すの?」
「……え? あ、そうだなぁ……」
「……」
「……」
「……こういうところだろうな」
「え?」
「練習の話題すら見つからないって重症だろ……」
「いや、そんな始める前から落ち込むなって。うーん、そうだな。……うーんうーん。……あ!いや、これは違うか……」
「ああ、もうダメだ俺たち。スタート地点にも立ててねぇ……」
「いや、待てって! ……あ! ほら、そうだ! 今日何してた? 今日あったこと話してよ! こんなんでいいんだよ。何でも良いんだから話題なんて、うん」
「えぇ? 今日何してたか? うーん、そうだな……。まず、昼過ぎに起きて……」
「よし……リアクション、リアクション……っと。へぇ! そうなんだね! 昼過ぎに起きたんだね!!」
「え? うん……それで、お腹空いてたんだけど家に何もなかったから、コンビニに行って……」
「そうなんだ! 家に何もなかったんだ! それでコンビニ行ったんだね!!」
「え? ……うん……。それで……帰ってゴロゴロしながら、YouTubeみて……」
「へぇ! すごいね! ゴロゴロしながらYouTubeみてたんだ!!」
「……あ、うん。それで散歩でもしようかと思ったんだけど、面倒くさくてやめて……」
「そうなんだ! 散歩やめたんだね! 面倒くさかったんだね!!」
「あ……うん……。それで、気づいたら夜で……。今こうやって、お前と話してる……」
「そうなんだね!! 気づいたら夜だったんだね!! ずっとYouTubeみてたんだね!! すごいね!!」
「……もう、やめてくれよぉ……」
「え!? どうしたの!?」
「……煽られてるようにしか聞こえないよぉ……」
「……」
「……1日を無駄にしてゴメンよぉ……」
「……あれ? おかしいな」
「……気分よくなるどころか、最悪の気分だよぉ……」
「リアクションって難しいな」
「……たぶん、お前が何かを間違えてるんだよ」
「そうか。コミュニケーションって難しいな」
「もう、誰とも話したくない」
「症状悪化してるじゃねぇか」