くだらないかどうかを決めるのは自分の心だ
「あのさぁ、すごく好きで打ち込んでたのに、他人に否定されちゃって、なんだか、くだらないことに思えちゃうことってない?」
「ん? なんかすごい漠然としてるな。例えば?」
「俺、ガンプラが好きでさ。ちょこちょこ買っては、家に飾ってるのよ」
「うん、知ってる知ってる。かなりの数持ってるよな、おまえ」
「そう。でさ、このまえ友達が家に来て、並んでるガンプラ見て『こんなことしてる時間があるなら、仕事につながるようなことすればいいのに』って言うんだよ」
「うわぁ、嫌なやつだな、そいつ」
「こんなことって何だよ! って俺も思ったんだけど……、確かにそいつ、英会話を仕事に活かしてたり、たくさん本読んだりしててさ。……それで、自分でもなんかちょっと、くだらないのかもなって思っちゃって……」
「そんなこと思う必要全くないって! 好みは人それぞれなんだから、そいつには全く関係ないじゃん!」
「そうなんだよな。俺も、改めて考えてみて、やっぱりガンプラ好きだし、他人と比べてくだらないって思うこともないって。……でも、一瞬でも自分の好きなものを疑っちゃった自分自身にちょっとモヤモヤしてさ……」
「それは、その友達が悪いよ! そいつの価値観で決めつけてるだけじゃん!」
「うん、やっぱりそうだよな。ありがとう。自分のことのように怒ってくれて、なんか嬉しいよ」
「当たり前だろ! ……っていうのもさ、実はちょうど最近、俺も同じようなことを言われたんだよ」
「え? どんなこと言われたの?」
「会社の同期が次の日の仕事のために、家に泊まりに来た日のことなんだけど。ほら、うち会社に近いからさ」
「ああ、うん」
「俺がトランプタワー作ってたら『そんなことしてる時間あるの?』って」
「うわ、嫌な言い方だなぁ」
「だろ? そのあと、60秒ピッタリを時計を見ずにどれだけ正確に計れるかをチャレンジしてたら『そんな、くだらないことしてないで、他にすることがあるだろ?』って」
「もうはっきり『くだらない』って言ってるじゃん。嫌なやつだなぁ」
「だろ? そのあと、円周率を必死に覚えようとしてたら『そんな、くだらないことしてないで、他にすることがあるだろ? 明日が何の日か分かってんの?』って」
「うん?」
「だろ? そのあと、最初はグーに代わる新しいジャンケンの始め方を考えてたら『そんな、くだらないことしてないで、他にすることがあるだろ? 明日が何の日か分かってんの? 俺が今何してるか分かってんの?』って」
「その次の日は、何かの日だったの?」
「え? ああ、うん。会社の命運をかけた、新商品開発案のコンペの日だったんだよ」
「その会社の同期は、そのとき何してたの?」
「え? ああ、うん。そのコンペで使う資料の最終仕上げをしてたんだよ」
「そんな、くだらないことしてないで、他にすることがあるだろ!?」
「ええ!?」