山陽道をゆく chapter1-7 倉敷・直島(7)
大原美術館は一旦閉じられた。それでも中庭にはまだ十数人の客がいて記念撮影をしていた。
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museum staffは直ちに追い出さない。彼らが撮った写真のいくつかがSNSで発信され、それがmuseumの宣伝にもなることを知っている。
さて、最後に残っていた客も撮り終えると出て行き、閉門となった。
ここからが貸切状態になる。それを待っていたかのように
「この前(本館入口🚪)でお撮りしましょうか?」とMさんが申し出てくれた。
この場所こそが大原美術館に来た記念になるspotである。せっかくだからと僕ら以外の3人はMさんにスマホを渡した。Kさんは若くない自分の姿を残したくないらしく、単独での記念撮影を好まないことを知っている。僕らはMさんの申し出を断った。
その時、本日僕たちを案内してくれるcurator学芸員(以下Cさん)が出てきた。一見、女優さんかと思える気品に満ちたAURAオーラを感じた。黒を基調としたchicな出で立ちである。Cさんは記念撮影が終わってないことを見てすぐに案内を始めようとはせず、待った。代わりに
「3時閉館は少し早いような気がしますが、3時を過ぎるとお客さまが極端に減ってしまうのですよ」と僕に話しかけて来た。他の入館者から早過ぎると言われているのだろう。
「最近は働き方改革で早く閉門するところが増えています」と応答した。
数人来るか来ないかわからない時間帯に空けておく必要があるのか?である。いくら防犯cameraがあるとはいえ、美術館は各所それぞれに監視員を配置しておく必要がある。
「本日みなさまをご案内させていただきます〇〇と申します」
「大原美術館evening tourへ、ようこそお越しくださいましてありがとうございます」
「すでに監視員は退出しております。これから入館して頂きますが、みなさま方と後ろに控えております〇〇(Dさん)とわたくしのみの入館となります」
後ろを振り向くといつの間にか 、もうひとりのcurator (Dさん)がいた。お互い軽く会釈した。ここでも男性は僕ひとり👤である。
「みなさまには身軽にご鑑賞頂きたく、受付で手荷物をお授かりしております。尚貴重品はご自身で保管くださいませ。尚、館内は撮影禁止となっております」と言われれば預けない手はない。皆一斉に手荷物🧳を預けた。さらに
「案内させていただきます道中にはお手洗いが一箇所ございます。もしご気分が悪くなられました場合、また何かご質問がありましたら遠慮なく〇〇(Dさん)にお申し付けくださいませ」
完璧な案内である。僕たちの前後に2人が着くという。今回Mさん含め6名と小人数であるのでまずは問題はないが、大人数の場合、監視の目が届かない場合がある。
前階段を上がりCさんは大きな扉を開けた。僕たちは外気と共に中に入った。そこは有名絵画が三面に広がり、別世界であった。
「通常、美術館では他の入館者に迷惑が掛からないよう私語はご遠慮いただいておりますが、
今回、貸切ということで自由におしゃべりや気軽に質問をしていただいてもかまいません」とCさんはannounceした。その一言で解放された気分になった。
1点ずつ解説してくれるものと期待していたが・・・・、
「まずはご自由にご覧になってください」とCさんは言い放った。
今日ここにいる客(tour参加者5名)は美術品に高い関心を持つ者ばかりである。勝手な想像だが、どの作品に関心を寄せるのかを見定めようとしたのではないかと思った。
僕は正面に展示されている[睡蓮]Claude Monetに関心を寄せ、絵画の近くまで進んだ。逆に言えばこれを見るために来たと入っても過言ではない。各自興味があるものが違うのは当然のことである。また、僕は興味のあるものは何でもgoogledググる癖があるが、あえて大原美術館をググっていない。事前知識(先入観)を持たず、新鮮な感性で作品と対面したいと常々思っている。
それから僕は入口付近の絵画に戻った。いつもならheadphoneを着け,首にはremoteリモコンをぶら下げて(voice guidance音声ガイド)順番に観て周るところだが、ここではreal explanation生解説が付くので不要である。
数分が経ち、Cさんは大原美術館の成り立ちについて説明し始めた。
「大原美術館は・・・・・・・・・・・・・・・」
長〜いセリフを全て暗記している。ここはROMAの劇場で大勢の観客に向かってひとり、語らい、僕はそれに惹き込まれ、随所に出てくる大原孫三郎と児島虎次郎のやり取りがさっと頭に映し出された。実に上手い語りである!! まさに女優であった。
「ところでみなさま、児島虎次郎が西洋より最初に持ち込んだ絵画はこの中のどれだと思いますか?」と質問をぶつけて来た。僕は咄嗟に
「それは【睡蓮】では?」と答えた。
児島虎次郎との出会いがその後の運命を変えた❣️
大原美術館には教科書にも出てくるような名画が並ぶ。しかしそれだけではない。
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