115回医師国家試験をとことん深追いしました(D)

115D2:治療薬物モニタリング〈TDM〉

点滴投与を行う際、血中濃度のモニタリングが必要な薬剤はどれか。
a クリンダマイシン
b セファゾリン
c バンコマイシン
d ペニシリン G
e レボフロキサシン

104B25に類似問題があります。

治療薬物モニタリング〈TDM〉を行うのはどれか.3つ選べ.
a ヘパリン
b テオフィリン
c シクロスポリン
d バンコマイシン
e 副腎皮質ステロイド

正解はbcdです。

☆TDM(therapeutic drug monitoring)
・薬の血中濃度を測定してモニタリングし、投与量や投与間隔の調整に用います。
・中毒域と治療域が近かったり、腎機能が悪い状況で腎排泄型の薬を使う場合などではモニタリングが必要です。
・様々な薬、様々な状況でTDMが必要ですが、試験に出た上記をまずは覚えておくべきでしょう。他は薬の勉強をしつつ1つ1つ覚えればいいと考えます。

☆バンコマイシン
・細胞壁のペプチドグリカンのD–アラニン同士の結合をターゲットにして細胞壁合成を阻害します。
⇨ペプチドグリカンの構造がD–アラニンーD–アラニンではなく、D–アラニンーD–乳酸などに変化していると、バンコマイシンが結合できないため耐性菌となります。
・消化管吸収はほぼされないやめ、CD腸炎で用います。
MRSA感染症の第1選択です。
・副作用:聴力障害腎障害
・急速に投与するとred man syndromeを起こしうるため緩徐に投与し抗ヒスタミン薬の予防投与を行います。
≪注≫red man syndrome:IgE非依存的にマスト細胞からヒスタミンの脱顆粒を起こし、その結果血管拡張による発赤、低血圧、頻脈を起こします。
TDMの対象で、AUC24/MICを400〜600とします。
≪注≫AUC:Area under  the curve=濃度時間曲線の曲線下面積
MIC:minimum inhibitory concentration=最小発育阻止濃度

115D3:眼科救急疾患

眼科救急疾患と初期対応の組合せで正しいのはどれか。
a 眼窩蜂巣炎 ー 炭酸脱水酵素阻害薬の内服
b 急性涙囊炎 ー アトロピン点眼
c 急性ぶどう膜炎 ー ピロカルピン点眼
d 裂孔原性網膜剝離 ー 副腎皮質ステロイド点眼
e 網膜中心動脈閉塞症 ー 眼球マッサージ

正解はeです。

眼窩蜂巣炎(orbital cellulitis)
・99G48のハズレ選択肢として出題があるのみです。
・眼窩内の軟部組織に起こった細菌や真菌の感染です。
≪注≫眼瞼の下、外眼筋までにとどまる炎症を眼窩周囲蜂巣炎と分けます。
副鼻腔炎や涙囊炎、麦粒腫の波及や眼内異物、外傷に続発することが原因として多いです。ただし原因不明のケースもあります。
・眼科におけるemergencyです
⇨網膜、視神経の障害による失明
⇨頭蓋内まで炎症が波及し髄膜炎、敗血症
・起炎菌:副鼻腔炎由来ならインフルエンザ桿菌や口腔内レンサ球菌、術後なら黄色ブドウ球菌、免疫不全なら真菌(ムコールなど)も考慮します。
・症状:充血、眼瞼の腫脹(開眼困難)結膜浮腫、眼痛、頭痛、眼球運動障害、視力障害、視野障害、眼球突出
・合併症:海綿静脈洞血栓症、髄膜炎、硬膜外膿瘍
・検査:CT、MRI(眼窩内異物の場合は禁忌になりうるため注意)、血液培養、血液検査(炎症反応、血糖や肝腎機能など)
・治療:抗菌薬(既往次第でターゲットは異なる)、膿瘍があれば排膿
例)外科手術後⇨黄色ブドウ球菌が多い⇨セファゾリンをempiricalに

急性涙囊炎(dacrocystitis)
・109I45や106D58、90D15などで出題されています。
・涙道内の細菌や真菌の感染です。
涙道閉塞があるとリスク
・進行すると眼窩蜂巣炎に至ります。
・起炎菌:黄色ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌など幅広いです。
・症状:局所の炎症所見(発赤、圧痛、腫脹)、流涙、眼痛、眼脂
≪注≫炎症は広がるため、初期は内眼角部と鼻根部との間でも眼周囲に広がっていく。
・検査:涙液、眼脂、排膿があれば膿の培養を行います。
・治療:抗菌薬、排膿
≪注≫鼻涙管閉塞に対して涙囊鼻腔吻合術などを行います(104D55)が、急性涙囊炎の状態ではそれよりもまずは感染症の治療を優先します。感染が落ち着いた後に手術です。

参考:マッサージと医師国家試験

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