医師国家試験お薬対策:イマチニブ

はじめに

イマチニブについて医師国家試験対策としては、
①機序と適応:CML、Ph染色体陽性ALLを知っていれば今のところ問題は全て解ける

で十分です。本ノートでは参考までに


②チロシンキナーゼって?(CBTやStep1には出ているのでざっくりと知っておいてもいいかも)
③イマチニブの問題点
④(参考)第2世代薬、GISTへの適応
をまとめていきます。

①機序と適応疾患

まずは111回の問題から。

111D17 チロシンキナーゼ阻害薬が適応である疾患はどれか.2つ選べ.
a 慢性骨髄性白血病
b 本態性血小板血症
c 慢性リンパ性白血病
d 急性前骨髄球性白血病
e Philadelphia染色体陽性急性リンパ性白血病

正解はaeです。まずPhiladelphia染色体について説明します。9番染色体と22番染色体の相互転座t(9;22)によって生じる、異常な22番染色体のことをフィラデルフィア染色体と呼びます。
(学内試験、9番がフィラデルフィア⇨×とかひっかけてきたなあ…)
ABL遺伝子とBCR遺伝子が融合し、BCR−ABL融合遺伝子が出来ます。これが幹細胞の無秩序な増殖を引き起こすため発癌に寄与します。この融合遺伝子産物をターゲットとする薬剤がイマチニブです。

画像2

107A9 イマチニブ〈イマチニブメシル酸塩〉が有効なのはどれか.
a 慢性骨髄性白血病
b 慢性好中球性白血病
c 真性赤血球増加症
d 原発性骨髄線維症
e 本態性血小板血症

正解はaです。CMLに対してイマチニブを使うという問題は、99E39を皮切りに何度も出題が見られます。109I17、112D21、113D48
イマチニブが承認されたのが2001年(国試では95回)ですから、99回受験生には新鮮だったでしょうが、今の我々には常識となっていますね。

114D22 Ph染色体陽性のALL患者に投与すべき薬剤はどれか。
 a イマチニブ
b ゲフィチニブ
c リツキシマブ
d ブレオマイシン
e 全トランス型レチノイン酸

正解はa  114回でも出てますが、外れ選択肢にbのゲフィチニブを出してきてますね。ゲフィチニブも同様に「チロシンキナーゼ阻害薬」ですが、ターゲットが違います(後述)。

111回から4年連続で出て正答率も95%を余裕で超えるので、さすがにもう出ねえだろと思うところ…

②チロシンキナーゼとは?

細胞には多種多様の受容体(receptor)が発現しており、他の細胞が分泌するシグナル(リガンド)を受容することはご存知かと思います。受容体は大きく以下のように分類されます。細胞内受容体がどれかという問題は某CBT対策問題集的にはヤマですね。

画像3


チロシンキナーゼ型受容体は、
リガンド結合⇨二量体化⇨二量体が相互にリン酸化し活性型に⇨シグナル伝達が続く〜 という流れで作用するのですが、
現在話題にしているイマチニブはリン酸化に関与するキナーゼを阻害します(正確にはリン酸化の材料のATPの結合領域を競合阻害)。

チロシンキナーゼにも色々種類があって、肺の小細胞癌で用いるゲフィチニブ(イレッサ)なんかはEGF受容体がターゲットです。

イマチニブはBCR -ABLチロシンキナーゼの他に、c -kitチロシンキナーゼやPDGFなんかにも関与しているため、GIST(後述)や慢性好酸球性白血病などにも用いられます。

③イマチニブの問題点

急性転化したCMLではイマチニブ抵抗性である

109I17 慢性期の慢性骨髄性白血病に対してまず行うべき治療はどれか.
a 多剤併用化学療法
b 自家造血幹細胞移植
c 同種造血幹細胞移植
d インターフェロン投与
e チロシンキナーゼ阻害薬投与

においても、わざわざ「慢性期の」という表現がなされているのはこのためです。

筋痙攣や浮腫、皮疹に注意
⇨内服後早期に出現。筋痙攣や浮腫は第2世代(後述)での報告は少ないとされています。

・めちゃんこ高い
GISTの術後にイマチニブを1年投与した群と3年投与した群の比較があって、明らかに3年群のOSの方が長いんですがいかんせん3年間の治療費は……

④第2世代チロシンキナーゼ阻害薬とGIST

国試対策の観点からは、名前(ニロチニブとダサチニブなどの〜チニブ)を知っておけば問題ないと思います。
いずれも第2世代のチロシンキナーゼ阻害薬(以下TKI)で、効きが早いと言われているがOSに差はなしと報告されています。また、第3世代としてボスチニブやポナチニブがありますが、これらは第1、2世代が効かない場合や、CMLの移行期に用います。

【補足】第2世代TKIではイマチニブに比べ血管閉塞のリスクが高いと報告あり
T. Dahlén, G. Edgren, M. Höglund, et al.
Increased risk of cardiovascular events associated with TKI treatment in chronic phase chronic myeloid leukemia. Data from Swedish population-based registries
Blood, 124 (2014), p. 3134
https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M15-2306

GIST(消化管間質腫瘍)では90%ほどにc -kitの変異を認め、イマチニブが奏功します。GIST治療の第1選択は部分切除(リンパ節転移しないため「部分」で構いません)。切除不能例や再発例ではイマチニブを使えます。内科でも外科でもここ最近の専門医試験で出てますし、国試対策予備校の講義でもよく扱われているためそろそろ出てもおかしくないかと考えます。



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