解剖 ☆☆☆ ☆
・解剖はマクロのみではなく、画像(X線、内視鏡)、ミクロも含め毎年出題があります。正答率は多くが8割ほどです。
正解はcです。下図1枚目のような位置関係になっています(青色がスコープ)。食道と胃の間、胃と十二指腸の間にある出入口に相当する部分ではないことはすぐにわかります。胃穹窿部や大弯側は下図2枚目のようにひだ状構造があります。ゆえにbやdも誤りと分かります。
正解は③です。
①は粘膜層です。青い丸状の構造は腺管部分です。
②は粘膜筋板です。
④は筋層です。胃の場合は他の管腔臓器より分厚いです。
⑤は漿膜下層です。脂肪細胞が多く含まれます。
正解は③です。上腸間膜動脈を選ぶ問題です。
・腹部大動脈の枝は上から腹腔動脈、上腸間膜動脈、腎動脈、精巣/卵巣動脈、下腸間膜動脈の順です。
・腎臓へ向かう④と⑤が腎動脈のため、その1つ頭側にある大動脈の枝を選べばよいです。①は門脈で、その背側にか大静脈があります。②は腹腔動脈です。
・十二指腸は下図のような構造をしており、1stから4thまで部位が分けられます。Vater乳頭は下行脚(2nd)に存在します。SMAは水平脚(3rd)にあるため、SMA症候群における嘔吐は胆汁を含む嘔吐になります。
・十二指腸水平部(3rd)に腫瘍ができる場合はSMA浸潤を起こし得ます。
正解はdです。
・胃から見て前面(腹側)には大網があり、大網は胃と横行結腸の間を仕切っています。胃の背面(背側)には膵臓、右上側には肝臓があります。
正解はaです。
消化管の生理学 ☆
脂肪酸についての問題が出ています。詳細は以下の記事にあります。
a:閉塞性黄疸では胆汁の吸収ができずに脂肪が便中に出ます。すると白色便となります。
b:蛋白はアミノ酸のポリマーのため、アミノ酸レベルまで消化して吸収されます。
c:食物線維は糖の吸収を抑制します。
d:中鎖脂肪酸は炭素数が少ないため疎水性が弱く、そのまま吸収されて門脈に運ばれます。
e:長鎖脂肪酸は疎水性が高いため、胆汁酸でミセル化されてリンパ管へ運ばれます。
消化管内視鏡 ☆☆☆
正解はacです。
・早期胃癌の診断には上部消化管内視鏡が必須です。その際に、Narrow Band Imaging(NBI)という特殊な波長の光を用いた観察を行います。淡いブラウン色の場合は腫瘍が疑われます。
・拡大内視鏡では表面微細構造(microsurface pattern)と微小血管構造(microvascular pattern)を確認し、これらが不整であれば腫瘍と診断します。
・超音波内視鏡は腫瘍の進達度や粘膜下病変の評価ができます。
正解はcです。
正解はcです。
・ポリープを取る際に出血しますが、抗凝固薬を使っていると出血が止まらなくなるため休薬が必要です。
・前処置として抗コリン薬(前立腺肥大や閉塞緑内障のある場合はグルカゴンを変わりに使います)で蠕動運動を抑制します。
食道アカラシア ☆
・113回に1問出ています。正答率は6割です。
・それ以前は108回に治療、105回に食道内圧検査が出ています。
・未出題事項として増悪因子、食道癌との鑑別、POEMがあるため余裕があれば要チェックです(後述)。
正解はdです。胃酸が咽頭まで行くことはない(そもそも食道と胃の間が過剰に収縮)ため、呑酸はありません。
・38歳女性⇨20〜40歳代の若年者に多いです。性差はありません。
・2年前からつかえ感⇨食道アカラシアと食道癌のキーワードです。若年なら前者、高齢なら後者を積極的に考えたいです。
・ストレス、冷たい食物で悪化します。
・症候:
嚥下困難:液体も固体も飲み込みづらくなります。
⇨摂食量が減り体重減少
⇨食道から胃に行かずに咽頭へと逆流します⇨誤嚥、咳嗽
⇨食道に停滞して食道炎⇨胸痛
≪注≫アカラシアは毎回の食事で症状が出現します(ゆえに体重減少をきたします)。毎回とは限らない(週に1回そういうエピソードがあるなど)の場合は食道痙攣を考えます。食道痙攣は進行してアカラシアになり得ます。
・検査:(バリウム、食道内圧測定)はよく出てます。内視鏡の通過困難が無いことには注意です(食道癌だと通過困難になり得ます)。
・治療:バルーン拡張術やHeller筋層切開が過去問で出ていますが、近年、経口内視鏡的筋層切開術(POEM:Peroral endoscopic myotomy)=経口内視鏡を用いた筋層切開術 も行われるため要チェックです。
≪注≫バルーン拡張術は何回も行う必要がありますが、POEMの場合は1回の治療で良いというメリットがあります。
・ボツリヌス注射やCa拮抗薬も(⇨Ca拮抗薬は括約筋を弛緩させるためGERDのリスクになることも併せて大事です)ありますが、薬物療法の奏功は低いです。
食道カンジダ ☆
・113回に1問出ています。正答率は9割以上。
・100回に一度出ていますがそれ以降はこれが初です。
・食道炎の原因としてはビスホスホネートが114回に出ています。他にも色々あるので原因の整理は必要です(後述)。
正解はeです。
・担癌状態で易感染性の男性で、食道に白いプラークがあるため食道カンジダの診断です。他にも糖尿病やステロイドユーザー、HIVなどがリスクです。
・食道炎の原因
①物理的刺激:GERD(胃酸)、アカラシア(食物の停滞)、誤飲
②感染症:カンジダ、CMV(⇨縦走潰瘍)、単純ヘルペスウイルス(⇨穴ぼこ状の潰瘍)、結核など
③薬物:ビスホスホネート、NSAID、テトラサイクリン系、鉄剤など
④アレルギー:好酸球性食道炎
⑤全身疾患:Crohn病、ベーチェット、強皮症など
食道癌☆☆☆☆
・毎年出ています。
・114回に病理が出ています。食道腫瘍には色々ありますが、扁平上皮癌と腺癌の区別は出来る必要があると考えます。
・手術合併症として乳び胸、反回神経損傷が115回に出ています。他に縦隔炎が有名な合併症のため理解が必要と考えます。(後述)
・リスクファクターとして酒とタバコはよく出ます。
・好発部位は胸部中部食道。
・粘膜内にとどまる⇨早期癌
・粘膜下層まで⇨表在癌
・筋層浸潤⇨進行癌
正解はaです。食道癌のリスクファクターとして以下のものがよく出ています。
・飲酒 特にフラッシャーはリスク大
・喫煙
・加齢
・アカラシア
・GERD(Barrett食道⇨腺癌)
≪注≫喫煙+飲酒は後述の胃癌と大腸癌でも同様にリスクです。
正解はcです。飲酒、フラッシャーがリスクになるものとして食道癌は重要です。
正解はbeです。bは術中のリンパ管損傷、eはリンパ管奇形です。
食道癌術後の合併症は様々です。乳び胸以外にも反回神経損傷、食道穿孔、縫合不全⇨縦隔炎、肺炎などが挙げられます。
縦隔炎:術後の胸痛、発熱、頻脈、呼吸困難などをチェックする必要があります。
正解はdです。
治療は(国試的には)
粘膜内⇨内視鏡切除(ESD、EMR)
粘膜下層まで⇨手術
手術困難、患者希望、遠隔転移例など⇨放射線+化学療法
となっています。
正解はcです。
FDG-PET :遠隔転移の評価
胸部造影CT :病変の広がり、転移の評価
腹部超音波検査:肝転移の評価
超音波内視鏡検査:病変の進達度評価
で用います。
Mallory-Weiss症候群 ☆
・粘膜下層までにとどまる食道裂傷で、噴門部小彎側に好発します。
・頻回の嘔吐が原因です。国試的にはアルコールが多いですが、背景は様々
例)髄膜炎で嘔吐を繰り返す⇨吐血になる
・内視鏡では縦走潰瘍が見られます。
・自然治癒します。
正解はaです。
食道静脈瘤、胃静脈瘤 ☆
・治療を問う問題が114回に出ています。109A18とほぼ同じです。110回に内視鏡画像を選ぶ問題が出ています。
正解はabです。それぞれの特徴、使い分けは注意が必要です。
・EIS:硬化剤を注入します。禁忌が多いため注意が必要です。
EISの禁忌:高度の肝機能障害(⇨高度黄疸(総Bill4.0以上)、低Alb(2.5以下)、低血小板(2万以下)、腹水大量、肝性脳症)、腎機能高度低下 です。
・EVL:結紮しますが再出血が多いのが難点です。EISと併用します。緊急事の止血ではEISではなくEVLを行います。
胃食道逆流症(GERD)☆☆
・115回にNERDの出題があります。NERDの特徴と逆流性食道炎との違いが重要です。
正解はeです。
胸焼けのエピソードから胃食道逆流症(GERD)が疑われます。GERDは粘膜障害を認める逆流性食道炎と、粘膜障害を認めないNERDに分けられます。今回は内視鏡では典型的なヒトデ型びらんは見られませんのでNERDが正解となります。
正解はbです。肥満男性で脂っこいものというストーリーは逆流性食道炎に典型的です。治療ではPPIを用います。
機能性ディスペプシア ☆☆
・114回と115回に出ています。
・ヘリコバクターの記載があり、Hp関連ディスペプシアも知っておいた方がよいと考えます。除菌で軽快する症例もあります。
・機能性ディスペプシアの症候は直接問われていませんが、以下の問題にあるような胃もたれ、心窩部痛、早期満腹感があります。
・除外診断です。以下の2つの問題には共通して「上部消化管内視鏡検査および腹部超音波検査で異常を認めず」と記載があります。
正解はdです。
正解はeです。
萎縮性胃炎 ☆
・慢性胃炎の結果、胃粘膜が萎縮したものを萎縮性胃炎といいます。
・内視鏡では粘膜が薄く色味が白から褐色になり、血管が透けて見えるようになります(画像は106F5)
・慢性胃炎はA型胃炎とB型胃炎に分けられます。
・A型胃炎は抗壁細胞抗体(90%異常)、抗内因子抗体(40~60%)などによる自己免疫性疾患。胃体部優位で、CD4陽性T細胞が関与します。ガストリノーマ (G細胞の腫瘍化)をきたす場合もあります。抗内因子抗体は内因子の活動低下のためにビタミンB12欠乏による貧血を起こします(悪性貧血)。
・B型胃炎:ヘリコバクターピロリ感染による幽門前庭部を中心とする胃炎です。胃癌のリスクとなります。
正解はeです。
また、107E34にこの問題があります。
正解はadです。
胃のポリープ ☆☆
・114回に胃底腺ポリープの問題が出ていますが、112回に同じような問題もあります。108回には連問で出て病理組織を選ぶ問題があります。
・過形成性ポリープの出題がないため対策は必要と考えます(画像はググってください)
正解はaです。周りの組織と同じ色のポリープが多発しており、胃底腺ポリープとわかります。胃底腺ポリープは悪性化リスクがないため経過観察で大丈夫です。
112D56の胃底底ポリープ(内容は経過観察を選ぶ問題)
胃癌 ☆☆☆
・内視鏡の見え方、場所、組織、治療が問われています。
正解はaです。内視鏡画像では潰瘍が形成され、病理ではN/C比の大きい異型細胞が占めています。胃壁の肥厚もあり進行胃癌です。胃に限局しているため、治療は胃切除です。
112D60で術式を問う問題があります。胃癌の手術は多くが幽門側胃切除術と胃全摘術です。幽門側に限局しているか否かも知っておく必要があります。
eの選択肢で免疫チェックポイント阻害薬があります。3次化学療法として抗PD-1抗体のニボルマブが保険適応となっています。
正解は④です。高齢女性でピロリ後、異型細胞からなる腺管構造を有する④が胃癌の組織です。
正解はcです。
・ファイバーが入っている部分が見えるため場所は噴門部です。
・肉眼分類では潰瘍を伴っていること、周堤は崩れかかっているため3型です。
・治療は胃全摘です。
Helicobacter pylori ☆
・114回に3連問が出ています。
・治療や検査やフォローアップについて細かいところまで出ています。
・治療適応=上部消化管内視鏡で萎縮性胃炎+ピロリの検査で陽性
・ピロリの検査
①生検してピロリ菌を直接証明:迅速ウレアーゼ試験、培養、鏡検
≪注≫迅速ウレアーゼ試験は文字通り迅速に結果が出ますが、PPI使用下では偽陰性になりうるため注意です。
②血液検査:ピロリ抗体測定
≪注≫抗体は除菌後も陽性が続くため治療効果判定には使えません。
③呼気:尿素呼気試験
≪注≫
④便:便中抗原
・治療:クラリスロマイシン+アモキシシリン+ボノプラザン
≪注≫ボノプラザンはプロトンポンプのKイオン放出を阻害するPPIで、胃酸の活性が不要、CYP2C19が関与しないというメリットがあり、ピロリ治療で用いられます。
正解は⑤です。
①:抗菌薬2種類(アモキシシリン+クラリスロマイシン)+PPIです。
②:内服は7日間です。
③:中止が必要なこともあります。
④:除菌後も胃癌の発生リスクがあるため、年に1回内視鏡検査が必要です。
正解はbeです。
acは内視鏡を用いて侵襲が強いためもちいません。dは除菌後も陽性が続きます。
参考
113D62:ITPの症例問題。治療方針の決定に有用な検査を選ぶ問題。
⇨尿素呼気試験
⇨ITPの治療は除菌が第1です。
アニサキス ☆
・アジやサバやイカなどに寄生している幼虫を生食することで感染
cf.覚えなくて良いですが終宿主はクジラやイルカです(アジやサバを食べる動物ですね)
・冬季に多い(生魚を食べる頻度が冬に多いため?)
☆胃アニサキス症(国試ではこっちがメイン)
・生食後数時間で急性腹症をきたす
・即時型アレルギー反応が関与
・上部消化管内視鏡で胃に定着している虫体を同定、摘除する。
☆小腸アニサキス
・小腸で好酸球性の肉芽腫を形成し、腸閉塞を起こす
・生食後数日で発症
・保存的治療でOK
急性虫垂炎 ☆☆
・113回に2問出ています(必修の感度/特異度の問題を入れると3問)。
・典型的なエピソード:心窩部痛/不快感⇨悪心嘔吐⇨右下腹部痛⇨発熱
・典型的な身体所見:McBurney圧痛点(臍と右上前腸骨棘の2:1の内分点)やLanz圧痛点(左右の上前腸骨棘の右側1/3の点)、腹膜刺激徴候(反跳痛、Rosenstein徴候、Rovsing徴候腸腰筋徴候など)
・Alvarado score:7点以上で虫垂炎を積極的に考えます。
画像は113E45より。白血球数は正しくは2点ですが国試では1点として出ていました。7点以上では
正解はbです。periumbilical area(へそ回り)のperiodic pain(疝痛)からright lower quadrant(右下腹部)への移動から虫垂炎を考えます。まず行うべきは身体診察です。
正解はaeです。bは胆嚢の無痛性腫大を触れるもの。cは急性膵炎や腹腔内出血で出現するへそ周りの紫斑。dは胆嚢炎で出現する、右季肋部を押すと深呼吸が止まるというものです。
消化管出血 ☆☆☆☆
・115回に小腸出血、113回に憩室出血、行うべき検査が出ています。
・貧血(特に鉄欠乏性貧血)は診断と治療だけではなく、慢性的な出血を調べる必要があります。特に高齢者ならば消化管出血、女性ならば性器出血は調べる必要があります。
・出血の対応としては、まずは輸液などでバイタルを安定化させます。バイタルが安定化したら内視鏡的止血、それでダメなら動脈塞栓や手術が必要です。
正解はbdです。
黒色便があり、高度の貧血があります。消化管出血の検索が必要です。
正解はdです。
・黒色便があることから出血は上部消化管が考えられます。
・対応は、まずは輸液でバイタルを安定化させ、その後内視鏡です。出血源が明らかな場合はそこを止血します。
正解はaです。下図の部位に憩室があり、そこから造影剤のリークも指摘できます。
正解はabです。内視鏡で止血が困難な場合は動脈塞栓(IVR)や開腹手術が必要です。
潰瘍性腸炎とCrohn病 ☆
・112回〜114回には出ていません。
・UCとCDの違いはよく出ています。
・関節炎やぶどう膜炎、PSC、血栓症などの合併も多いため注意です。
正解はdです。
若年者の繰り返す血便や下痢では潰瘍性腸炎/Crohn病を疑います。粘血便はCDよりも潰瘍性腸炎で特徴的です。直腸のみの病変で、内視鏡で見える限りは連続性の潰瘍を認めます。
吸収不良症候群 ☆☆
・原因として炎症性腸疾患、Celiac病、乳糖不耐症、腸管切除後など様々です。
・脂肪吸収ができずに脂肪便(トイレで浮かぶ)やビタミン欠乏、蛋白吸収ができずにサルコペニアや低アルブミン血症や体重減少、鉄などの微量元素の吸収不良で貧血など。
・検査:便中脂肪量測定、Dキシロース試験(D-キシロース(小腸で吸収される単糖)を内服し、尿中への排泄量を測定する)など。
正解はcです。腸内内の浸透圧が高くなると下痢を起こします。
正解はaです。
・腸管切除後の吸収不良のため下痢をきたしています。
・飢餓状態ではサルコペニア(整形外科参照)のリスクのため栄養療法が必要です。少量分割投与や成分の変更で対応、それでも経管栄養が困難な場合は経静脈栄養を考慮します。
CD腸炎 ☆☆
・115回と113回に出ていますが、いずれも抗菌薬投与後の記述があり診断は楽です。抗菌薬投与がなくてもPPIなど他の薬剤が原因になりうるため、入院患者の発熱や腹痛では疑う必要があります。
・抗菌薬投与歴+腹痛or発熱で疑う必要があります。疑ったら便をとって検査部に提出し、GDH抗原とCDトキシンを調べます。CD腸炎の診断目的での内視鏡は近年あまり行いません。
≪注≫便を溶かしてキットに入れるため、固定よりも水様の便を提出した方が検査部の手間が少ないです。
・新薬としてフィダキソマイシンやベズロトクスマブが承認されています。いずれも初発で使うものではありませんが、名前は知ってていいと思います。
正解はdです。
正解はdです。
参考
113B4病原体と感染予防の組み合わせ
Clostridium difficile - 接触予防策〈contact precautions〉 は正しい組み合わせです。アルコールは無効のため、石鹸を用いた手洗いが重要になります。
虚血性腸炎 ☆☆
・113回と112回に1問出ています。
・高齢者+動脈硬化リスク(糖尿病や高血圧など)+突然の下痢+疝痛+血便です。便秘が誘因になることもあります。
≪注≫近年は若年発症も少なくありませんが国試では未出題です。
・基本的には自然軽快しますが、壊死を伴う場合は手術が必要です。身体所見で腹膜刺激徴候や、急激な腸閉塞、腹水の出現では壊死型を考えます。壊死型の出題はまだありません。
≪注≫経過観察を選ぶ問題が多いですが、鎮痛薬は出してください。
正解はaです。糖尿病と高血圧の基礎疾患+高齢者+sudden onsetの腹痛、下痢、血便から虚血性腸炎を考えます。筋性防御を認めないことから壊死型ないし急性動脈閉塞は除外します。
正解はaです。安静+絶食です。
・動脈硬化と便秘を背景に、高齢者で腹痛と下血からは虚血性腸炎を考えます。
・内視鏡では縦走潰瘍を認めています。虚血性腸炎の場合は潰瘍の境界が明瞭なことが多いです。
十二指腸乳頭部癌 ☆☆
・115回と113回に出ています。
・Vater乳頭にできる腫瘍のため、胆汁や膵液の排出ができず閉塞性黄疸をきたします。
・胆汁鬱滞の結果胆管炎を起こすため、その場合は胆管炎の治療(ドレナージと抗菌薬)を優先します。手術は感染が制御できたら行えます。
・診断のためには内視鏡で生検が必要です。
正解はeです。現時点で閉塞性黄疸をきたしているため、「まず」これを解除します。
正解はaeです。生検で腫瘍の診断、MRCPで胆道や膵管の通りを確認します。
大腸癌 ☆
・113回に転移例が出ています。
・胃癌、食道癌と同様にリスクや予防も重要です。
⇨便潜血(免疫法)が用いられます。
・2020年に遺伝性大腸癌のガイドラインが出ています。
正解はdです。肝臓に多発する転移を認めているため抗癌化学療法です。
腸閉塞、イレウス ☆
・疾患の症状として出題があります(後述するヘルニアや腸重積など)。
・腹痛+食事で増悪+嘔気嘔吐+排便排ガス停止(+腹部手術歴)がキーワードになります。
・腸閉塞とイレウスは別物です。
腸閉塞=物理的な閉塞に起因するもの
イレウス=麻痺による蠕動運動低下によるもの
・複雑性腸閉塞(腸壊死や腹膜炎をきたし致死的)か単純性腸閉塞(血行障害なし)の鑑別が重要です。
・単純性腸閉塞では蠕動音亢進(金属音)、複雑性腸閉塞やイレウスでは蠕動音低下/消失です。
・複雑性は発症が急で進行も急です。痛みは持続性です。進行すると腹膜刺激徴候を認め全身の炎症反応も強く出ます。
・脱水を起こすため適切な輸液が必要になります。
正解はbです。胆石がA⇨Bで胆嚢から腸へ落ちていることがわかります。胆石による腸閉塞です。
消化管穿孔 ☆☆
・114回に2問出ています。画像では空気の層が上の方へ出現するfree airが特徴的です。
・上部では保存的に加療するか、外科的治療です。下部の場合はすぐに手術です。
・保存的治療として、絶飲食のもと補液、胃管で吸引、抗菌薬、PPI投与を行います。
正解はcです。寝かせてとったBの画像でfree airを認めています。
正解はabeです。NSAID潰瘍が原因と考えられます。
消化管出血? ☆
正解はeです。
・血便を主訴とする時、それが必ず血便かの確認が必要です。
例)109C22:暗赤色便があった人で確認すべきもの⇨直腸指診
・上記のようなブドウジュースの他、ワインやイカ墨パスタなども黒色便をきたします。
胃、S状結腸軸捻転 ☆☆☆
・111I28にて、軸捻転症を生じる頻度が高いのはどれか⇨胃、S状結腸 という問題が出ています。S状結腸は114回と112回、胃は115回で出ています。
正解はeです。上部消化管造影では胃の形が上下逆になっています。ここから胃の長軸捻転と分かります。腹膜炎所見もないため、まずは保存的に経過を見ます。
正解はcです。coffee bean signを認めるためS状結腸軸捻転です。治療は内視鏡的整復です。
正解はdです。S状結腸が巨大化してハウストラ消失がありS状結腸捻転です。Parkinson病(あるいはその治療薬)による便秘が背景にあった可能性があります。
ヘルニア ☆☆☆☆
・内ヘルニア内ヘルニアは腹腔内臓器が腹腔内で別の場所へ行くものです。体外に出るものは外ヘルニアと言います。
・ヘルニアの出口をヘルニア門と言います。内鼠径ヘルニアではHesselbach三角、外鼠径ヘルニアでは内鼠径輪です。
・腸管が脱出するだけでは徒手整復して経過観察で良いこともありますが、嵌頓して血流障害が起こると腸管壊死をきたすため緊急手術が必要になります。ただし大腿ヘルニアは嵌頓リスクが高いため手術がマストです。
正解はdです。
正解はcです。
正解はcです。触ると痛がる、白血球やCRP上昇といった記述から嵌頓がわかります。
正解はaです。疼痛を伴い、徒手的還納ができないため嵌頓を考えます。画像でも腸管(空気を含むため一部黒くなっています)の脱出を認めます。
正解はcdです。
正解はcです。
・臍帯ヘルニアは腸管回転異常のために生理的臍帯ヘルニアが戻らない病態です。
・染色体異常や遺伝子異常を伴うことが多いため精査が必要です。
肥厚性幽門狭窄症 ☆
・「生後2週ごろに胆汁を含まない噴水状の嘔吐」で考えます。男児に多いです。
・脱水をきたすため輸液(アルカローシスになるため乳酸リンゲルは×)
・アトロピンで減圧し、Ramstedt法で根治させます。
正解はcです。
腸重積 ☆
114回に出ています。小児に多い腹痛で、エコーのtarget signや注腸造影でカニバサミが出ることは有名です。成人でも大腸癌に続発することがあり注意です。治療は注腸整復か外科的治療です。
正解はbです。
Hirschsprung病 ☆
・113回に1問出ています。
・新生児で腹部膨満、胆汁性嘔吐を見たら考えます。
・直腸生検組織のアセチルコリンエステラーゼ染色陽性が確定診断となります。
・注腸造影では病変の広がりを見ます。
正解はdです。
周期性嘔吐症候群(アセトン血性嘔吐症) ☆
・幼稚園児、小学生に好発します。
・ストレスが誘因となり嘔吐し、ケトン体陽性になります。
・自然軽快します。
正解はeです。5歳ごろにストレスを契機に嘔吐を繰り返し、代謝性アシドーシス、ケトン体陽性となる疾患です。直近では110I56で出ています。
108G49にDKAの28歳女性の症例がありますが、誤り選択肢にアセトン血性嘔吐症があります。28歳では見られません。
肛門周囲膿瘍 ☆☆
・112回、113回に出ています。
・肛門陰窩における細菌感染で、切開排膿が必要です。
・成人ではCrohn病を背景とすることもあります。
正解はcです。
正解はaです。