⓪はじめに
2019年に作成したものです。この当時は114回医師国家試験が最新でした。以降追記をちょくちょく行なっています。
①国試的には
多発性骨髄腫をQBで検索かけたところ、以下に示すようにほぼ毎年出てますね。
正答率を見ても多くが90%以上のため、簡単な問題は差がつかなくなってます。
②基礎知識
cf.下図に示すように、形質細胞がモノクローナルに増えただけの状態がMGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)、さらに形質細胞が増殖した状態がくすぶり型骨髄腫、全身症状(CRAB,後述)やバイオマーカー陽性(詳細は後述)のものを(症候性)多発性骨髄腫といいます。治療適応は多発性骨髄腫になってからですね。
ちなみにMGUSについてはMGRSという類似概念も近年出てるので、興味があれば調べてみてください。
多発性骨髄腫の治療は全身化学療法ですが、その開始基準は症候性多発性骨髄腫であるかです。症候性の基準についてはガイドライン
に書かれているように、下記の項目を1つでも満たす場合です。要は臓器病変CRABを認めるか、バイオマーカーが引っかかるかです。
≪注≫ビスホスホネートは近年出題が多いため別にまとめました
≪注≫同種造血幹細胞移植は移植関連死亡率が高く、再発も多く、進行期の成績が悪いため一般的には行われません。ガイドライン上では40歳未満かつHLA一致ドナーありの場合に考慮可能となっています。国試的に出たら(意地悪な問題ですが)誤り選択肢としていいでしょう。
③やーせ問解説
第1問
正解は「血中アルブミン濃度」です。β2MGは尿中ではなく血中です。そもそもβ2MGはリンパ球(形質細胞含)に多く発現していて、その細胞が増殖しているために血中で高値となるわけですから血中濃度が妥当でしょう。わざわざ腎機能に影響される尿中の値は使えません(そもそも多発性骨髄腫では腎機能低下ですし)。血小板数やCa濃度は多発性骨髄腫ではそれぞれ低下、増加しますが、他の病態でも大いに変わりうる値ですからこれらも使えませんね。
第2問
正解はLDです。これが高いということは骨髄腫細胞の増殖能が高いことを示唆しています。他にも染色体異常(内容までは不要でしょう)があることが大事です。
第3問
正解はアザシチジンです。他の選択肢は初発でも使える多発性骨髄腫の治療薬です。アザシチジンは移植適応外の高リスクの骨髄異形成症候群(MDS)に使われるDNAメチル化阻害剤です。
第4問
正解はCD38です。これをターゲットとしたのが第3問のダラツムマブです。CD4はヘルパーT細胞、CD8は細胞傷害性T細胞で陽性となることは有名です。CD18は食細胞に発現しているインテグリン(正確にはβ2インテグリン)です。これが欠損すると好中球の遊走が出来ないleukocyte adhesion deficiency (LAD)という、遺伝形式ARの疾患となります。