116回医師国家試験 やってきたことと受けた感想

やってきた国試対策

・弊学では3年の春から臨床医学の講義が始まるため、それに合わせてmedu4と、当時無料公開していたQAをやりました。
・具体的にはQA(問題演習なし)⇨medu4(問題演習あり)⇨QB online
⇨大学の過去問⇨大学の講義
という順でこなしたため、同じ内容を5週は勉強することになりました。
・4年の秋にCBTがあり、冬から臨床実習です。
・臨床実習の間は国試対策はやらずに、図書館の本、ケアネットの動画、論文、USMLEの問題演習をメインにやってきました。
・USMLEは受験予定はありませんでしたが、就活への箔付けと勉強の成果を試したいと思い6年の4月に開始(問題演習はすでにこなしてノートにまとめていたので、その再演習がメインでした)。
・6年7月にstep 1を受けて合格、その後は実習に集中していました。
・国試対策は実習が終わった10月から始めました。
・10月:115回の医師国家試験を解きました。ただ解くだけではつまらないので、今までに勉強してきた内容、ガイドライン、論文を読んで徹底的に深追いするスタイルで勉強しました。

・ただしこれに2ヶ月もかかってしまいました。これでは到底間に合わないと思い、回数別のみに焦点を絞り(古い問題は捨てて)対策しなおしました。直近4年分を自分なりにまとめ直し、重要なポイント(個人的に好きなポイント)と今後出るかもしれないポイントをまとめてnoteにしました。

・4年分詰めたら次は必修対策ですが、さすがにまとめるのは時間がなかったためパルスを行いました。ギリギリ前日に間に合わせて必修の感覚は掴んだ…と思います。

全体を通して

A:普通
B:普通
C:やや難
D:やや易
E:易化
F:易化

で、全体としては易化だったのかと考えられます。

・113回以降は特に診断をつけられたら勝ちではなく、診断がついた上でその後どうするのかという問題が多いと感じました。
・そのため、普段の勉強で「臨床像⇨病態⇨検査⇨治療」と勉強をしていても自信を持ってこれだと選びにくいものもあり、試験として対策も難しくなっているのかもしれません。

1日目

試験開始前

早く到着しましたが特にやることもなく、暇で眠くなります。
トイレを確認したら結構小さかったので、休み時間は注意が必要です。
周り見る限りMAPをやってる人がそこそこいました。

以下、実際の問題についてのコメントもあるため注意です。

問題はこちらに載っています。

Aブロック

・難易度としては簡単な方だと感じましたが、前半と後半の温度差が大きいなと感じました。

・以下、迷った問題と間違えた問題を、本番でどう思いながら解いたか振り返ります。

A3:中心性漿液性網膜症で誤っているもの
正答は「夜盲を自覚する」

・眼科は直近4年分以外はあまり手をつけてなかったのが痛手でした(おそらく正答率は9割くらいです)。
マイナー科も手を抜かずにきちんとテキストをやりましょう

A6:高Kの原因になるのはどれか
⇨RAS系抑制薬
C68で同じ問題が出ていました

A7:逆流性食道炎の誘因とならないもの
⇨萎縮性胃炎
⇨逆に、ピロリを除菌するとリスクです。

(かすった…?)

A9:骨壊死のリスクでないもの⇨有機リン中毒
選択肢bの減圧症は115回に出ています。

115A14
減圧症で認められるのはどれか。2 つ選べ。
a 関節痛
b 骨壊死
c 骨髄炎
d 半月板損傷
e 離断性骨軟骨炎

A12:高血圧クリーゼの原因にならないもの
⇨肺動脈性肺高血圧症を伴う呼吸不全

・選択肢dの肺水腫を生じた急性心不全では高血圧クリーゼになります。これは知らなかった…

A17:血友病Aの治療⇨第Ⅷ因子補充

・前日の必修パルスで、フィブリノゲン補充⇨FFPという問題を見たせいか、選択肢cのFFPと一瞬迷いました。
・想起バイアスに惑わされてはいけませんね。

A20:再膨張性肺水腫の診断。

・112A41にも「穿刺1時間後に強い呼吸困難と泡沫状の喀痰が」とのキーワードがあり、診断は可能でした。

A24:嗄声、画像から喉頭乳頭腫を選ぶ問題

・ここ苦手なんですよね…問題見た瞬間落とすことを覚悟し、撃沈

A25:イカ弁当を食べた後にバスケしてアナフィラキシー

・いつも通りの運動誘発〜かと思いきやいつも通りの選択肢が無い…
・部活辞めろと運動前に食うなとステロイドは論外として、残った選択肢は「イカ禁止」と「プリックテスト」。
・イカ禁止はやりすぎよなあと考えプリックテストを選びました

A27:COPD急性増悪。喀痰からグラム陽性双球菌。対応は?

・NPPVを選ぶ問題です。カニュラの流量をあげるのがナルコーシスリスクであることは分かりましたが、必修パルスにて「少しだけ流量をあげる」という問題があったため少し考え込みました。

A33:透析患者にがガドリニウム造影剤はNG

・これ実は弊学の講義でとても強調されていました。
・それを踏まえて直近シリーズでもこのように書いていたため選べました。

A34:外性器異常を見て母親に言うセリフの問題。

・お手上げでした。
・「性別を確認できません」と「半陰陽」で迷いました。
・半陰陽って言葉は現在使われてないという知識はあるも、大学の試験では出てたんですよね…
・一方でまだ何も検査をしていない状況で、性器の形だけから性別を確認できないとまで言ってしまっていいのか…
・結果として半陰陽を選びましたが、二択を外してしまったようです。

A35:irAEが出ました。(ツイート少しバズってますね)

・コルチゾールが低いからこれを補充するという、例年よくある問題ですが題材が真新しかったです。
・直近シリーズには載せているのでHITかなと思います(が、irAEを知らなくても解けますね)
・ちなみに低コルチゾールはA63にも出てるんですよ。

過去に作ったスライドより抜粋しています。

A39:Darier病の診断。皮疹とともに、「ATP2A2」のワードが

・ATP2A2なんて知らんがな!これはもう完全な知識不足でした。予想にも書いてなかったため、完全に勉強不足を実感した問題でした。

A45:半月板断裂している関節鏡画像を選べ

・断裂してるのは1つしかありませんが、他の説明ができません。来年以降の受験生はまた覚えることが増えて大変になりますね…
・関節鏡は実習でも見ていないので完全に知識がありませんでした。

A47:性暴力の被害者の診察問題⇨被害状況を再度聞くのはNG

115回に出ていたのですが、これは全ての選択肢が当たりました。HITです。

A50:過敏性肺炎の診断

・問題文から明らかに過敏性肺炎だし、9割以上に人が選んでます。私も選びました。選びまし「た」……
・途中で5日前に発熱などのエピソードや画像所見で引っかかって非結核性抗酸菌に変えてしまったんですよ… 素直さは捨てちゃダメですね。

A51:Downの合併⇨滲出性中耳炎を選ぶ問題

・DownはHirschsprungとかあるし下痢やろ。次々と飛ばしてしまいましたが、ヒルシュは下痢じゃないですね。何してるんでしょうね。

A53:NHCAPで喀痰からグラム陰性桿菌。抗菌薬は⇨ピペラシリン

・緑膿菌カバーでピペラシリンは分かりましたが、タゾバクタムは…と一瞬迷いました。
・他の選択肢が違うということから選べましたが、タゾピペで覚えてるからやめてほしいですね。

A65:前置胎盤と癒着胎盤の説明問題。

113A71と全く同じ画像と気づけました。やってなかったらきっと迷っていました。

A68:スキルス胃癌で腸閉塞。対応は?

・中心静脈栄養は真っ先に選びました。
・次に胃管、嚥下訓練、胃瘻は同じベクトルだよなあと考え、泣く泣く手術を選びました。
胃管は入れるためのものではなく、抜くものでもあるという当たり前の知識がとんでいました。国試せん妄ですね…

A70:GPAの2nd治療を選ぶ問題。

・bceで迷いました。全部やると思うがどうなのかわかりませんでした。

A71:発熱+咽頭痛+食欲低下+眼球結膜発赤+口蓋扁桃に白苔+頸部リンパ節腫脹の鑑別疾患。

・皮疹がなくて白苔がある川崎、溶連菌、EBVと選びました。
・パルボは違うが、アデノは何とも…
⇨川崎は誤りで正解はアデノでした。これは分かりませんでしたね
敗因はアデノに関する知識不足です。

A73:髄膜炎菌感染についての問題
⇨ペニシリン、ワクチンあり、接触した医療スタッフはワクチン予防投与を

・グラム陰性を陽性と勘違いしていました。完全にミスです。
・step 1では結構髄膜炎菌による髄膜炎が出ています。髄膜炎+紫斑 の場合は髄膜炎菌を疑うことが重要です。

Bブロック


B6:治療後の経過について主治医以外に相談を希望する場合、助言や情報提供を行い施設はどれか⇨医療安全支援センター

・108C2にて「患者からの苦情や相談への対応」という問題が出ています。
・公みえにも同じこと書いてましたね…
・私は間違えました(市町村保健センターを選んでしまいました)
・過去問というかテキストをきちんとやりこんでいれば解ける問題ですが、公衆衛生は直近で出ていない頻出分野以外は正答率は悪いようです。正答率は50%を切っていそうです。

B12:幼児期以降に筋力低下が明らかになるのは
⇨Duchenne型筋ジストロフィー

・クローバー舌のおじさんを思い浮かべながら脳死で筋強直性ジストロフィーを選びました。「先天性」と書いてあるにもかかわらず…
・幼児期以降=幼児期も含む ため、5歳ごろにGowersが見られる臨床問題を解いていれば選べると思います。

B14:リスクと行動の組み合わせ

・国試せん妄に陥ってdの「強い」を「弱い」と読んで最初は焦りました。明らかな正解なのにね。
・acで迷ってましたが、解いていて「正解が無いぞ」と思ったら大体問題読み間違えてるから落ち着くことが大事ですね。

B17:小児の二次救命処置で、2人いる場合の人工呼吸と胸骨圧迫の比⇨2:15

・114C3で出ています。選択肢まできちんと理解するのが大事な一例です。

B22:インスリンに関する医学史

・正解は明らかなのですが、こう出すかと予想外でした。
・インスリン発見から100年の記念すべき年のため、何かしら出ることは予想されていました。多くの人はフレデリックバンティングを覚えていたでしょう。

b24:退院時要約について誤っているもの⇨「検査入院では省略できる」

・入院する以上は必要だろうし、こういう研修医仕事しろや案件って基本正解になりますよね。
・「医師事務作業補助者」なるものが新登場しています。117回以降の人はご注意を。

B33:24週の妊婦。尿糖陽性で空腹時血糖が132。対応は?⇨血糖値の日内変動を測定

・75gOgTTをやるのか、インスリン療法を開始するのか、血糖値の日内変動を確認するかで割れました。
⇨治療するか精査か ですが、治療には日内変動やインスリン分泌能、抵抗性を評価するためインスリン療法は誤りでしょう。
・では75gOgTTか日内変動かですが、必修的には後者ですよね

B37:23週の妊婦の性器出血。

・産婦人科の先生間でも破れています。切迫早産のため「まず」ならdですが、ステロイドも入れます。
・物言いついて正答が複数になる可能性はあります。

B42、43 連問:ガラス片で腕をざっくり。家族が止血にハンカチを巻いて来院

・家族が巻いたハンカチはすぐに取ります。虚血時間が長いと壊死のリスクになります。
・私は結構迷い、逃げの選択肢bを選んでしまいました…
・それに加え次の問題で手関節に飛びついて間違いました(伸展は大丈夫ですね)
・手痛い臨床必修2連問ミスでした。

Cブロック


C1:在宅患者への説明問題。「男性では尿カテは患者の下腹部に固定」が正解です。

・3割くらいが間違えているのですが、実は去年全く同じ記述が出ていました。

褥瘡予防に円座は非推奨であるという知識が新規で出て、これに引っかかっている人がそこそこいたようです。

C2:BMIが18の高齢者(腎機能正常)への栄養⇨蛋白は0.8g/kg/dayは誤り

・これだけ覚えれば絶対大丈夫な食事療法問題対策は以下の通りです。
・蛋白は成人男性で400kcalのため上記は明らかに少なすぎます。
・腎機能正常と書いた理由に加え、サルコペニア予防が重視されている昨今の流れからの出題でしょう。
高齢者に蛋白は抜くなという教訓は重要ですね。

C5:地域保健医療について正しいのはどれか⇨回答未定

予備校によって割れていますが、おそらく
b「肺がん検診では二重読影が行われる」
が正解でしょう。
e:「PSAによるがん検診」についてはガイドライン上「推奨せず」となっています。

参考:PSAのエビデンスについては、大規模な前向き試験にERSPC試験とPLCO試験があります(それぞれ欧州とアメリカ)。前立腺癌死亡率は前者では有意差あり、後者では有意差無しとなっており、人種、測定感度、検診群の割り付けなど様々な要素による影響が考えられています。詳細は以下を参照してください。

C6:マイクロバブルテストが診断に有用な疾患⇨IRDS

・マイクロバブルテストをどのように行うか細かく書かれた問題でした。
・112回に出てるこれがフラグでしょう。116C6でもきちんと「胃内容物」と書かれています。

C7:パンデミックとは⇨世界中で感染が拡大した状況

・出た瞬間勝利を確信した1問です。
・予想問題に載せておりHITです。

C13:ノロウイルスの不活性化に必要なのは
1000ppm(0.1%)の次亜塩素酸ナトリウム

・%まで出している点が引っかかりましたが、それ以外答えようがない問題でした。
・手洗いに次亜塩素酸ナトリウムは使えないという問題が115回に出ており、それと同様のひっかけを疑いました。

C15:総人口を分母とするものは⇨婚姻率

・cの老年人口指数を選んでしまいました。老年人口指数=老年人口/年少人口
は200%超え
であるという過去問がありますので、選んではいけませんでした。
・老年人口「割合」ならば正解です(40%ほど)
・婚姻率は人口動態統計に含まれており、全人口1000人あたり50人程度(0.5%)です。

C16:痛みを主訴として受診するのは⇨バルトリン腺炎

・バルトリン腺炎の臨床像は知りませんが、炎症であるならば痛いだろうという直感です。

90D4にBartholin腺膿瘍の問題があるため要チェックです

☆Bartholin腺炎
・好発は若年女性。
・Bartholin腺(男性ではCowper腺)が閉塞し、内部に囊胞ができます(Bartholin嚢胞)
・そこに細菌が繁殖するとBartholin腺炎となります。
・起炎菌は黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などの一般細菌がメイン。
・無症状の場合は経過観察。有症状なら抗菌薬や切開排膿。再発を繰り返す場合は手術も。

C21:疫学の問題。⇨40歳未満女性の部位別悪性腫瘍罹患数は子宮頸癌が最多

・115C10に子宮頸癌の疫学の問題が出ています。
・出題者の意図としては「罹患率がとても多い」「子宮頸癌が若年者で増えている」「ワクチンで予防できる」という主張がありそうです。 
・d「過剰飲酒は男性低所得者に多い」を選びました。
⇨調べると低収入者は過剰飲酒は少ないと出ました。酒を買う余力がないため?

C22:CRP上昇に関与するサイトカインは⇨IL–6

・関節リウマチパルスで扱っていました(が、問題で直接出した訳ではないためHITとは言えないでしょう)

C23:個人の特定に必要な情報(英語問題)⇨Date and place of birth

・医学の問題であるはずですが…
・eのpast medical history(既往歴)と迷いました。身元不明死体の特定では歯科治療歴が重要なためです。⇨ただし前提条件として身元不明のとは言ってないので…

C29:定期予防接種について
⇨接種費用は公費負担。医師は副反応の報告義務あり。

e「全ての予防接種は努力義務」を選びました。B類は努力義務なしです。
⇨今後、「インフルエンザワクチンは努力義務」とあってもバツをつけられるようにしましょう。

C30:生活保護⇨生存権に基づく、医療扶助は原則ジェネリック

生活保護では原則としてジェネリックとすることが3年前に決定しました。
・生存権については110F12に日本国憲法の第25条が出ています。

C32:労災についての問題。
休業4日以上の傷病者数は増加傾向。精神障害による労災は増加傾向。

a:認定は産業医⇨誤り。労働基準監督署です。
c:熱中症が最多⇨誤り。腰痛です。
e:精神障害による労災は増加傾向。⇨正しいです。
・上の3つはすぐに分かりましたが残りで迷いました。
・安全管理が出来ているため休業4日以上は減ったのではと思いましたがそんなことはないようです。
労災の死亡者は年間800例ほどであることは覚える必要ありです。

C36:関節リウマチで生物学的製剤を入れる前に必要な検査は⇨β–D–グルカン測定。

・日本リウマチ学会の手引きに書いているようですが、確固たるエビデンスがある訳ではないようです。
・国試で出た以上、これはこれとして覚えておくほかないと考えます。

C37:小腸出血疑い⇨カプセル内視鏡

・115D74に出ていますが、今回は下の図をより意識したものです。造影CTで異常なしなら小腸カプセル内視鏡で、異常ありの場合はバルーン小腸内視鏡です(選択肢にはありませんが)
・ハズレ選択肢にメッケルシンチがありますが、このタイミングも注意です。

C39:認知症で財布をしまったことや食事をしたことを思い出せない。診断に有用な検査は⇨Wechsler成人知能検査

・長谷川式、MMSEがない!
・Wechslerは記憶検査とのひっかけかなと思いバツにしてしまいましたが、これで合っていたようです。
・eのBPRSは統合失調症の検査です。

C46:産褥3日目に見られるものについての問題。

・ここ4年出ていなかったため対策不足でした。
a:初乳が見られる⇨3日ほどで見られます。正しい。成乳は10日ほどからです。
b:黄色悪露が見られる⇨誤り。3日はまだ赤色です。1週間くらいで褐色になり、2週間ぐらいで黄色、1ヶ月くらいで白色です。
c:内支給口が完全閉鎖するのは1ヶ月ごろ。
d:産褥10日ほどで腹壁上から触れなくなります。
e:後陣痛は3日ほどで消えます。最も痛いのは初日です。

C47:厳格な菜食主義者で手の強張り。血液検査で低Ca、低P⇨ビタミンD欠乏

・菜食主義⇨ビタミンB12、Ca、ビタミンD、Feの欠乏がリスクです。

C52:遺伝カウンセリングの問題⇨臨床的にDuchenne型筋ジストロフィーが診断されているため、遺伝子検査の結果にかかわらず診断は変わりません。

・Duchenne型筋ジストロフィーはXRの遺伝形式ですが、全てが全て遺伝という訳ではありません。
・Lyon現象による女性の発症、変異として家族歴なしで生じるものなどがあります。
・遺伝子検査は感度100%という訳ではありません。
・遺伝カウンセリングは慎重さと正確さが求められます。Duchenne=XRとだけの理解ではなく、上記のようなことも考えつつ適切な説明をせよというメッセージを感じる問題でした。

C57:一酸化炭素中毒で痙攣が出ている人への初期対応⇨酸素投与とジアゼパム

・痙攣はすぐに止める必要があります。ジアゼパムはマストです。
・CO中毒では酸素運搬障害をきたすため酸素投与も必要です。
・私含め多くの人はeの高圧酸素療法で迷ったかもしれません。某予備校では高圧酸素療法の適応を「友がゲイ」という語呂合わせで覚えているかもしれませんが、「初期対応」としては誤りです。
・高圧酸素療法は用意に時間がかかることは覚えておく必要があります。
参考
114F73:壊死性筋膜炎の症例。誤り選択肢に高圧酸素療法がありますが、デブリドマンや抗菌薬など、すぐにできる処置より優先すべきことではありません。

C59:有機溶剤中毒で調べる検査⇨尿中馬尿酸と尿中マンデル酸

・シンナーの記載があるため尿中馬尿酸は選べます。
・δ–ALAとアセトアルデヒドも消去できます。
・コチニンが出ました。コチニンはニコチンの代謝産物です。受動喫煙の曝露量などの指標に用いられます。
・もう1つの正解は尿中マンデル酸です。マンデル酸はスチレンの代謝産物です。

C61:SIADHの原因薬剤⇨カルバマゼピン

・単純な知識問題です。
・SIADHの原因としては、他に中枢神経疾患(髄膜炎や外傷、腫瘍など)、肺疾患(肺小細胞癌のほか、胸膜炎など胸腔内圧が上がる疾患)、薬剤性があります。
・SIADHを起こす薬剤としてSSRIは余裕があれば覚えていいと考えます。

参考:SSRIの副作用の語呂合わせ:SSRI
S:SIADH
S:Sexual dysfunction(性機能低下)
R:reflux(逆流⇨嘔吐)
I:Intestinal(小腸⇨下痢)

2日目

試験開始前

・1日目と同じ説明を繰り返すことになるため、待ち時間がとても長いです。
・試験に来なくなる人や泣いている人はいませんでした。

Dブロック

D1:抗Dヒト免疫グロブリンの適応の問題

・夫の血液型には大きくバツをつけました。夫が父親とは限りません。
・間接Coombsが陰性=抗体がない かつ 児の血液型がRhD(+)が適応です。

D4:先天性副腎皮質過形成の維持療法中に発熱を呈した場合の対応
⇨糖質コルチコイドの増量

・感染症リスクだから発熱の原因次第では抗菌薬だよなあと思いつつも、sick dayを考える必要があります(115A75で出ています)

☆シックデイ
・3週間以上のステロイド投与者は視床下部–下垂体–副腎皮質が抑制され、コルチゾール分泌が抑制されています。
・ストレス下ではコルチゾールに需要が増加して、内因性のステロイドが分泌されますが、ステロイドユーザーではこれがうまくいきません。
⇨必要量に対して、現在の投与量が不足するため副腎機能低下症の症状が出現します。
・ストレスの大きさ(手術なら侵襲の強さ)に応じてステロイドの投与量を増やします。これをsick doseといいます。

D8:急性の細菌感染症はどれか⇨伝染性膿痂疹

d:化膿性汗腺炎と迷いましたが明らかな正解がeでした。
・化膿性汗腺炎はアポクリン腺閉塞によって起こる慢性感染です。

D12:不妊の原因⇨Klinefelter、停留精巣、精巣静脈瘤

・96H46のプール問題です。
・選択肢a「乳幼児期の流行性耳下腺炎」が誤りです。思春期以降のムンプスが不妊のリスクです。

D13:前立腺癌の治療方針の決定に用いられるもの
⇨PSA値、TNM分類、Gleason score

・TNMとGleasonは選べましたがPSA値は選べませんでした。

D17:全生活史健忘の臨床問題。⇨切符を買うなどの一般的な行動はできる

・115D15に一般問題で出ています。ここでも「切符」の記載。

D18:VTに使わない薬⇨α遮断薬

・消去法で選べますが他の選択肢が迷いどころです。
de:ベラパミル、ジルチアゼムはclass Ⅳの抗不整脈薬で、AFやPSVTには使いますがVTではあまり使いません(ベラパミル感受性VTはありますが)
c:class Ⅰと書くと幅広いですが、VTには使います。
≪注≫class 1Bのリドカインが上室性に無効という知識は重要です。
b:β遮断薬はclass Ⅲの抗不整脈薬です。これもAFやPSVTなど上室性がメインですが、心室性も使います。

D19:細菌性肺炎疑いでやってはいけないもの⇨中枢性鎮咳薬

・咳はウイルスのクリアランスのために必要な防衛機能です。感染ではブロックでしてはいけません。

D32:ニューモシスチス肺炎の治療を選ぶ問題⇨ST合剤

・画像でcystが出ていますが、これは115A37に文章として書かれています。

D33:ビタミンK欠乏の児で脳出血。対応は⇨新鮮凍結血漿

・出血傾向となっているため血腫除去は危険です(禁忌判定はされないと思いますが)

D44:抗MDA5抗体陽性⇨間質性肺炎の検索を

・皮膚筋炎については以下を参照。
・逆Gottron徴候と併せて覚えておく必要があります。

D46:突然の頭痛と視力低下。CTで下垂体に高吸収。⇨経蝶形骨洞手術

・下垂体卒中の症例です。腺腫の10%ほどで見られます。下垂体卒中では25%ほどが下垂体梗塞にいたります。
・109G54に診断を問う問題が出ています。

D48:尿道カテーテル自己抜去。血尿が出ている。対応は⇨固定水を抜く

・4年連続で尿道カテーテルの手技ものが出ました。
・尿道損傷を起こしている可能性があり、抜去しますが、固定水を抜かずに抜くと危険です。

D49:非ホジキンリンパ腫の治療でHBVによる肝炎⇨診断は激症肝炎

・de novo B型肝炎の予防としての検査は115回を中心に多く出ています。
・劇症肝炎の定義は覚える必要がありますが、肝性脳症2度(羽ばたき振戦出現)が急速に出ればそうだと考える必要があります。

D50:メトトレキサート投与中の口内炎と骨髄抑制⇨葉酸投与

・ロイコボリンレスキューです。
口内炎と骨髄抑制はメトトレキサートの用量依存性の副作用です。葉酸投与で予防します。
・詳細は以下を参照してください。

D57:黒色爪で画像から疑うものは⇨悪性黒色腫

黒色爪でメラノーマを疑う所見
⇨幅6mn以上、爪甲全体が黒、皮膚も黒(Hutchinson徴候)の場合

D62:糖尿病性腎症の診断⇨尿中アルブミン/クレアチニン比

・アルブミン尿とGFRで重症度判定します。
・他の選択肢が切れるため選べました。

D64:高安動脈炎の診断に有用でないもの⇨(頸)動脈生検

・他の選択肢の造影CT、造影MRI、FDG–PET、頸部エコーは全て有用ですが、頸動脈を生検するわけにはいきません。
・巨細胞性動脈炎に対して側頭動脈生検を行うと教科書的に書かれていますが、不可逆な視力障害の進行が怖いため、GCAによる視力障害が疑われる場合は生検よりも優先してステロイド投与を行います。

D66:TTTSの診断に必要な情報⇨MD双胎であること、各々の羊水量

・MD双胎であることは選べました。大きさの差か、羊水量かで迷いました。
・羊水量が正解です。

D69:溜めた雨水で水まきというシナリオで、低Naも出ている肺炎。治療は⇨マクロライドとニューキノロン

・ポイントは以下に示すとおりです。

D72:経尿道的膀胱切除術(TUR–BT)の術後合併症
⇨尿道狭窄、膀胱穿孔、急性前立腺炎

・膀胱を切るため膀胱穿孔、尿道を通るため尿道の狭窄、通り道の前立腺に傷がついて前立腺炎です。
・逆行性射精が(一部で)話題になりました。

☆逆行性射精(Retrograde ejaculation)
・射精時に膀胱頸部(内尿道括約筋)が閉鎖しないため精子が膀胱内に入る病態です。
・射精時に精子の量が少ないため不妊の原因になります。
・原因として経尿道的前立腺切除術(TUR–P)糖尿病、骨盤手術があります。
・治療に三環系抗うつ薬(TCA)が用いられます。

Eブロック

E16:患者満足度を調査対象項目とするのは⇨受領行動調査

・下図のように受領行動調査に含まれています。

E18:筋肉注射の手技についての問題⇨注射針は皮膚に対して垂直に刺す

・これは大HITでした。直前にツイートした内容が当たったため嬉しくなりました。
・以下の手順は重要です。

E20:労働安全衛生法について誤っているものはどれか
⇨適用となるのは常時50人以上の事業場である

・常時50人以上は産業医を置くような規定です。
d:時間外労働が月80時間超の労働者は希望により面接指導が受けられる。
と迷いました。「受けられる」⇨「義務である」と勘ぐりましたが、間違い選択肢を作るとしたらbだろうと考え選べました。

E27:高度徐脈をきたす電解質異常はどれか⇨高K

・高Kで致死的不整脈という知識はありましたが、低Naと迷いました。Naが低いと活動電位が生じず徐脈になるのではと思いました。

E28:胃液を嘔吐して誤嚥性肺炎。対応は⇨経鼻胃管挿入

胃液を嘔吐しているため、まずは胃管で除去していく必要があります。
・挿管と迷いました。ショックで意識低下があるため適応ですが、初期対応ではありません。

E35:社会的苦痛はどれか⇨収入がなくなることへの不安

・問題自体は簡単ですが、全人的苦痛の各々の種類についての理解を問う問題が出たのは初です。

☆全人的苦痛(total pain)
身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルペインの4つに分けられます。
a:死への恐怖はスピリチュアルペインです。
b:上腹部の痛みは身体的苦痛です。
de:癌と診断されることへの恐怖、もっと早く受診すべきだったという後悔は精神的苦痛です。

☆全人的苦痛の過去問
109B37:精神的苦痛は全人的苦痛の一つである⇨○
108B19
a:社会的苦痛への対応を優先する⇨× どれを優先するという話はありません。
b:精神的苦痛には傾聴が有効である⇨正しいです。
c:家族内問題による苦痛には対応しない⇨× 対応は必要です。
d:スピリチュアルペインは身体的苦痛として対応する⇨× 別物です。
e:身体的苦痛にはオピオイドの急速静注が必要である⇨× 必ずしもそうではありません。
106G26:全人的苦痛〈トータルペイン〉に身体的苦痛は含まれない⇨×
105F7:スピリチュアルペインにおいて「孤独感」を最も表現しているのは
⇨「誰も私の本当の苦しみを理解してくれない」
104H19
全人的苦痛について適切なのはどれか.
a 遺産相続に関する悩みを含む⇨正しいです。社会的苦痛への対応です。
b 家族間の問題への関与は避ける⇨避けません
c 不安から痛みを訴える患者には鎮痛薬は効果がない⇨効果はあります。
d 身体的苦痛,心理的苦痛および霊的苦痛の3要素からなる⇨社会的苦痛もあります。
e 「どうしてこんな目にあうのか」という訴えには病態生理を説明する⇨×ひでえ

E47:事前確率35%、陽性尤度比30、陰性尤度比0.2とする。検査で陰性の場合の事後確率は?⇨10%

・計算法はオッズが必要ですが、実際は計算不要で解けます。
・陰性尤度比が0.2と十分に低いため、検査で陰性という結果は事後確率を大きく下げます。ゆえに25%とまではなく10%であろうと考えられます。
・尤度比については以下を参照。

Fブロック

F9:粘膜疹が見られる頻度が最も低いもの⇨尋常性乾癬

・扁平苔癬、尋常性天疱瘡、多形滲出性紅斑は切れたと思います。
・膿疱性乾癬か尋常性乾癬かですが、実は昨年の膿疱性乾癬の問題にこの記述があります。

F14:精神運動発達において、可能になるのが最も遅いのは⇨左右が分かる

5歳ごろに左右がわかりますが、私は小1でも苦労しました(特に上履き)
abd:円を描く、ハサミを使う、片足立ちはいずれも3歳です。
e:ごっこ遊びは2歳ごろです。

F18:誤嚥予防に有用な食事の形態は⇨凝集性(食塊のまとまり)が高い

・110F9にて「流動食はNG」という問題が出ています。
・凝集性が低いものとしてはカロリーメイトのイメージです。我々でもむせますね。

F20:次世代育成支援対策推進法について誤っているもの
⇨児童福祉施設

・児童福祉施設は児童福祉法です。
・107E2にて次世代育成支援対策推進法に規定⇨育児休暇 という問題が出ています。

☆次世代育成支援対策推進法
少子化対策のために2003年に成立しました。
・国、都道府県、市町村、事業者、国民に子育て支援をするよう義務付けしています。
・次世代の育成支援を目的としています。
育児休暇が規定されています。
・従業員が100人を超える事業所は次世代育成行動計画を策定します。

F24:職場の自殺予防に関与しないのは⇨正答不明

・複数の予備校の解答ではeの精神保健福祉センターが正答ですが、自殺予防への関与がゼロというわけではありません。

F27:出生前遺伝学的検査のうち確定的検査はどれか⇨羊水検索、絨毛検査

・内容的には初出題ですが、正答率は9割を超えてそうです。
・NIPTの項目に書いたためHITはしていました。

F38:耳を切られた人の消毒⇨塩化ベンザルコニウム

・お手上げでした。塩化ベンザルコニウムは111I24のハズレ選択肢として出ています。これが切り傷などの消毒に用いるということは知っておく必要がありそうです。

F39:焼死の生活反応⇨気管内の煤付着

☆焼死の法医学
・用語の定義
焼死=火災内の有害事象で死ぬこと
焼死体=火災現場で発見された死体
焼損死体=火災以外の原因で死に、火災で損傷した死体
・焼死の原因=一酸化炭素中毒、それ以外の有毒ガスの吸引、熱傷、酸素欠乏
・一酸化炭素中毒の場合は、火災時に呼吸、つまり生存していた可能性を考えます。血中CO濃度が50%以上なら死因と考えます。
・酸素欠乏、熱傷や高熱によるショックの場合はCO-Hbは低値であることが多いです。
⇨ゆえに焼死体でCO -Hb↓でも生前に損傷を受けている可能性があります。
拳闘家姿勢=焼死体で見られる姿勢です。熱凝固で筋肉は収縮しますが、屈筋の方が伸筋に比べ筋肉量が多いために屈曲位となります。
気道内に煤が粘液と混合、細小泡沫、気道の発赤⇨生活反応(火災時は生きていた)
・個人識別=歯の所見(最も熱に強い)、手術痕(金属プレートの識別番号)、DNA鑑定

F55:重症Covid-19の治療⇨ステロイドと人工呼吸器

・ついに出ましたが、人工呼吸器を増やす、扱える人を増やす、ステロイドを軽症に入れるななどTwitter上で大いに盛り上がっていたこともあり答えられました。

F63:外傷で脾損傷疑いのショックバイタル。優先度が低いものは⇨血液培養

・この場合は血液培養を取れという問題が多く出る中、優先度が低いものとして選ぶのは勇気が必要でした。
・感染徴候が無いため選びましたが、外傷ではあってもおかしく無いため積極的には選びにくかったです。

F71:下部消化管内視鏡検査前にやること
⇨インスリン投与法の調整、降圧薬の内容調整

・消去法でしたが、インスリンは絶食するため、降圧薬は鎮静をかけるためです。

F72:内視鏡画像から場所を選ぶ問題⇨直腸

・勘で当てました。直腸以外なら選びようがないと考えました。

F75:14週で流産。⇨後期流産で死産届が必要

死産は12週以降の死のため、今回は届出が必要です。
・流産は12週未満を早期流産、12週以降(=死産)を後期流産と言います。

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