関節リウマチパルス
①:関節リウマチの病態、病理
・滑膜を主座とする進行性の慢性炎症性疾患です。
・滑膜は正常で単層の組織ですが、慢性炎症の結果増殖し多層構造になります。
・滑膜にリンパ球(CD4陽性T細胞)の集簇、免疫複合体の沈着とそれを貪食する好中球、リンパ濾胞を認めます
・炎症は波及し、骨破壊、関節の変形をきたします。
⇨パンヌスという炎症性の肉芽組織から分泌される炎症性サイトカインによるものです。
・炎症性サイトカインとしてIL -1、IL -6、TNF -αが重要です。
・IL–6はB細胞やT細胞の分化に加え、肝臓にてCRP↑、ヘプシジン↑(⇨慢性炎症に伴う貧血)、血小板↑、アルブミン↓の作用があります。
・赤血球沈降速度:赤血球表面はマイナスに荷電し、互いに反発しています。
⇨マイナス荷電のあるアルブミン↑、赤血球↑(多血)、プラス荷電のあるグロブリンやフィブリノゲン↓などでは、赤血球同士の反発が増し、赤血球沈降速度は低下します。
⇨プラス荷電のあるグロブリンやフィブリノゲン↑や、マイナス荷電のあるアルブミン↓、赤血球↓(貧血)では赤血球沈降速度は増加します。
・ゆえに、IL–6の作用では貧血、アルブミン↓のために赤沈は亢進します
①–2 関節リウマチの病態、病理 問題編
正解はcです。
正解はceです。いずれも炎症性サイトカインです。治療薬については後述します。
正解はaです。妊娠では循環血漿量↑のため、赤血球濃度↓となります。
正解はbcです。いずれもプラス荷電です。
②疫学
・男女比1:4と女性に多いですが、後述するリウマトイド血管炎は、関節リウマチ患者の中では男性に多いです。
・HLA-DR4が関連し、関節リウマチの重症化と関連しています。
③症状
(A) 関節症状
・関節は滑膜を有する関節、特に中手指節関節(MCP関節)や近位指節間関節(PIP関節)、手関節や膝関節に好発します。
・滑膜を有さない遠位指節間関節(DIP関節)や仙腸関節は関節炎をきたしません。
・頸椎の病変として環軸椎関節の亜脱臼、垂直亜脱臼、軸椎下亜脱臼の3つが特徴的。後頭部痛や末梢神経障害(しびれや運動障害)をきたします。
・関節の強直:朝に多いこわばりが見られます。こわばりは特に手根骨間関節に好発します。
・関節の変形:スワンネック変形、ボタン穴変形
⇨ボタン穴変形:PIP関節の屈曲とDIP関節の過伸展による変形
⇨swan neck変形:PIP関節の過伸展とDIP関節の屈曲による変形
≪注≫母指のボタン穴変形をカモノハシ変形(duckbill deformity)といい、Z字形
になります。物を把持することができないためQOLの大幅な低下をきたします。
・手指の側副靭帯の橈側損傷、伸筋断裂による尺側偏位や伸展障害
・股関節亜脱臼
・膝関節の外反変形
・足は外反母趾、内反小趾、扁平足(⇨鶏眼)
(B) 関節外病変
・肺:間質性肺炎、胸膜炎、びまん性細気管支炎、ANCA関連血管炎(⇨肺胞出血)、肺高血圧症(肺動脈性)
・心:心膜炎、僧帽弁閉鎖不全症など
・腎:アミロイドーシス、間質性腎炎(シェーグレン合併も多いため)
・眼:強膜炎、上強膜炎、虹彩毛様体炎、乾燥性角結膜炎(シェーグレン合併も多いため)
・皮膚:血管炎による潰瘍や紫斑など。
・リウマトイド結節:フィブリノイド壊死を伴った肉芽組織です。硬く圧痛のない結節で、前腕や肘関節の伸側、尺骨近位部、後頭部などの機械的刺激を受けやすい部位に好発します。肺や心臓などの体腔内臓器に生じることもあります。
・消化管:アミロイドーシス、血管炎による虚血など。
・末梢神経:血管炎による。
③症状 問題編
正解はeです。関節炎の所見の有無が診断基準に含まれます。
正解はeです。
正解はcです。
正解はdです。伸ばせなくなった、屈曲は可能という点から分かります。
正解はaeです。他に乾燥性角結膜炎もあります。
正解はeです。後腹膜線維症はIgG4関連疾患の1つです。
正解はbです。
正解はbです。
④診断、検査
・関節リウマチは早期診断が重要です。診断が遅れて骨破壊が十分進行した状態では治療によるQOLの改善効果は小さくなります。
・血液検査:CRP↑、アミロイドA↑、赤沈↑、血小板↑、補体↑(リウマトイド血管炎では↓)
・関節液=混濁、粘稠度低下、補体低下、好中球上昇、リウマトイド因子陽性
・関節リウマチの自己抗体にはリウマトイド因子と抗CCP抗体があります。
・リウマトイド因子=免疫グロブリンのFc部分に対するIgM抗体。感度は80%ほど(早期はもっと低い)で、特異度が低い(加齢や肝硬変、シェーグレンなどの他の膠原病でも陽性になる)です。疾患活動性を反映するため治療効果判定に使えます。また、疾患活動性の高いリウマトイド血管炎や関節外症状を伴う場合では高値になることが多いです。
≪注≫リウマトイド因子の結合するIgGでは、糖鎖にあるガラクトースが欠損しているケースが多く、リウマトイド因子産生との関連が示唆されています。
・抗CCP抗体=anti–cyclic citrullinated peptide antibody)は特異度が高い抗体で、シトルリン化蛋白に対する抗体です。関節リウマチの発症よりも何年も前から陽性になります。
(参考):シトルリン化とはアルギニンからシトルリンへの反応で、PADIという酵素が関与します。PADI4の遺伝子多型は関節リウマチの発症リスクになります。
・MMP–3:滑膜表層細胞の発現するタンパク質で、滑膜が増殖する関節リウマチ発症初期に血中で高値となります。
・関節MRI:X線に比べ早期病変の検出ができます。関節エコーも早期発見に有用です。
④関節リウマチの検査、診断 問題編
正解はdです。悪性関節リウマチ(リウマトイド血管炎)では補体価は低下です。
正解はdです。eは高齢者や担癌状態、肝硬変などでも陽性となるため特異度は低いです。
正解はbeです。
⑤治療
・治療目標は炎症を取り除き、関節破壊を予防して長期的なQOLを改善することです。
・QOLの評価にはHealth Assessment Questionnaire (HAQ) やArthritis Impact Measurement Scale(AIMS)があります。
・疾患活動性の評価基準にDAS28(disease–activity score)があります。圧痛関節数、腫脹関節数、CRP、赤沈、患者VAS(どれくらい状態が良いか主観的に表現するスケール)が含まれています。このスコアリングによって治療効果を評価します。
↑こちらで計算できます。点数が2.3未満を臨床的寛解とします。
・治療では免疫抑制による結核やニューモシスチス、HBV再活性化などの感染リスクがあるため注意が必要です。
・メトトレキサート:関節リウマチの第1選択です。まずはMTX単体で用います。
こちらにまとめています。
・ブシラミン、金製剤:膜性腎症の原因として重要です。これらは肺障害も起こし得ます。
・スルファサラジン:妊婦、腎機能低下にも使えます。SJSなどによる皮疹に注意が必要です。
・TNF–α阻害薬:潜在性結核の再燃のリスクが高いです(肉芽腫の崩壊による)。また、易感染性、dsDNA抗体陽性、多発性硬化症や心不全の増悪などに注意が必要です。
・抗IL–6受容体抗体:トシリズマブ。1ヶ月1回の静注でよいというメリットがあります。ただし憩室炎や腸管穿孔を起こしうるため注意が必要です。
・アバタセプト:CTLA–4と免疫グロブリンを合体させた分子構造をし、CD80/86に結合します。これらはCD28と結合して抗原提示の共刺激に必要なため、これをブロックすることでT細胞の活性化を抑制できます。間質性肺炎やCOPD急性増悪に注意が必要です。
・NSAID、アセトアミノフェン:関節リウマチに対する治療ではなく、疼痛に対する対症療法です。
⑤関節リウマチの治療 問題編
正解はbです。MTXと併用してTNF阻害薬などを用います。
正解はbです。de novo肝炎のリスクがあるため既感染の有無を評価します。
⑥やーせ問(2021年12月3日)
正解は滑膜です。
正解はIL–4です。
・IL–4はTh2への分化、IgE産生へのクラススイッチに関与します。
・抗IL-4受容体抗体のデュピルマブは難治性の気管支喘息に用います。
・他は全て炎症性サイトカインで関節リウマチの治療ターゲットです。
アルブミンは低下です。赤沈亢進の理由の1つです。
膝関節は外反です。
結節性多発動脈炎です。
上強膜炎は115A12で出ています。
・アミロイドはアミロイド腎症として出題があります。
・関節リウマチの腎症として、ブシラミンなどの薬剤性の膜性腎症、悪性関節リウマチ(≒rheumatoid vasculitis)の半月体形成性糸球体腎炎とともに鑑別にあがります。
・間質性肺炎は、関節リウマチの関節外症状、メトトレキサートの副作用(MTX肺炎)、治療に伴う易感染性によるニューモシスチス肺炎などが鑑別にあがります。
・正解は粘稠度↓です。
・補体は免疫複合体作って低下
・免疫複合体を貪食する好中球は増えます。
・好中球が増えるので色は黄色っぽくなります。
・抗CCP抗体は特異度が高く、発症前から陽性になります。
・リウマトイド因子は肝硬変でも加齢でも陽性になります。
・エコーやMRIの方が早期診断に有用です。
・悪性関節リウマチでは血清補体↓
胸水です。
・MTXが妊婦に禁忌であるというのは114回に出ています(海外では中絶に用いますし、日本でも絨毛癌で用います)。
口内炎です。口内炎や骨髄抑制は用量依存性のため
・葉酸で予防(ロイコボリンレスキュー)
・大酒家で葉酸欠乏者には注意
・腎機能が低く排泄低下では注意
です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?