医師国家試験お薬対策:アセトアミノフェン

みんな大好きカロナール、名前の由来は「軽くなーる」

医師国家試験対策として理解しなければならない点は
①小児のインフルエンザに使用可能
(というより、小児にアスピリンを投与するとReye症候群起こすから危険を知っておきましょう。)
②除痛ラダーの第1段階(NSAIDsも)
③拮抗薬はアセチルシステイン
④(余力があれば)機序 知っていれば解ける問題あり
⑤(余力があれば)中毒 step1や学内試験では頻出

①適応

アセトアミノフェンは市販薬として売られ、解熱鎮痛薬として用いますがNSAIDsとは異なり消炎作用はありません。比較的副作用が少ない代わりに効果はさほど強くないので、試験的にはNSAIDsが使えない時にアセトアミノフェンを使うという問題が出がちです。

105I12  15歳未満のインフルエンザ患者に使用する解熱薬として適しているのはどれか.
a アスピリン
b メフェナム酸
c インドメタシン
d アセトアミノフェン
e ジクロフェナクナトリウム

正解はd  というかd以外全てNSAIDsだから避けたいところですね…(流石に全部禁忌にはならないと思いますが)。NSAIDsにも色々種類があって、aはサリチル酸系、bはメフェナム酸、ceは酢酸系です(が、国試的には細かいことは覚えなくてOKです)。
 いずれにせよ、インフルエンザに対してNSAIDsの一部を使うと脳症の死亡リスクが上がる(と言われている)から、解熱したいときはアセトアミノフェンを使うことは国試的には必須の知識です。
 ところで、bとeは聞き慣れないかもしれませんが、これらの名前は105I12にしか出てません。じゃあなんでこんな名前を出したかっていうと、平成12年に小児科学会がコメントを出してるからなんですね()
 ただ、ここに書いていないNSAIDs(ロキソニンなど)はどうなのかっていうと、安全性は不明です。ただ、同じCOXを阻害するわけなので怖いからアセトアミノフェン使っておこうという考えです。

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Reye症候群について軽くまとめます。
インフルエンザや水痘などに続発
小児(15歳未満)へのアスピリン投与が誘因となる
・肝障害、脳症をきたし、症状は軽度なら嘔吐、重症なら意識障害や痙攣。致死率高め
・病態はミトコンドリア障害(肝臓や脳はミトコンドリアが豊富)
・確定診断は肝生検(脂肪変性を認める)
cf.β酸化はミトコンドリアで行われるため、ミトコンドリア障害で脂肪分解ができないという事実からリンクをつけられますね
・脳浮腫はcytotoxic edema(ミトコンドリア障害⇨ATP産生↓⇨Na−K−ATPase活性↓⇨細胞外にNaを出せない⇨細胞内浮腫)
(厳密にはアストロサイトのアクアポリンの話や電位依存性Naチャネルの関与など複雑です。興味があれば調べてみてください🍔 ちなみに脳梗塞の超急性期になぜ拡散強調像が有用かも関連しますが本筋とズレるので割愛します)
・治療は脳浮腫に対するマンニトール投与、低血糖への対応(ミトコンドリア障害で好気性代謝駆動せず⇨解糖系駆動で糖が消費)

 NSAIDsについてはまた別のノートでまとめますが、NSAIDsは小児では絶対に使わないのかというと、そんなことはありません。小児でアスピリンを使う例として川崎病があります(100A6)。では川崎病に対してアスピリンで治療中の子供がインフルエンザにかかったら?
アスピリンは速攻中止します。

小児で厄介なNSAIDsですが、妊婦も同様です。妊婦に対してNSAIDsは使えないが、アセトアミノフェンは使えます(ただし用量等注意は必要です)。

②WHO方式3段階式除痛ラダー

113E39がん治療を開始した人に疼痛出現。疼痛緩和のために、まず投与すべきなのはどれか。
a コデイン b モルヒネ c フェンタニル d オキシコドン e アセトアミノフェン

正解はe 選択肢にNSAIDsがあればそれも正解になります。除痛ラダーは有名なのでここでは省略しますが、aは第2段階の弱オピオイド、bcdは第3段階の強オピオイドですね。ここで大事なこととしては、第1段階では疼痛コントロールが不十分で第2段階に上げるとき、非オピオイドは切らずに弱オピオイドと併用するということですね(111B42に出題済み)

③拮抗薬はアセチルシステイン

111I26  薬物とその拮抗薬との組合せで正しいのはどれか.2つ選べ.
a アセトアミノフェン - アセチルシステイン
b バルビツール酸 - フルマゼニル
c ワルファリン - ヒドロキソコバラミン
d フェンタニル - エタノール
e ヘパリン - プロタミン

正解はae 国試的には今の所脳死でアセチルシステインを覚えておけば問題ありません。アセチルシステインがなぜ拮抗薬として機能するかは⑤で後述します。ヘパリンについては次の記事で書く予定です
④機序

アセトアミノフェンはNSAIDsと同様にシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害しますが、NSAIDsと異なり
中枢神経作用がメインで末梢神経への作用はなし
・COX阻害作用は強くない

109G26 術後鎮痛のため硬膜外腔に投与できるのはどれか.
a ケタミン
b モルヒネ
c アセトアミノフェン
d 副腎皮質ステロイド
e 非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉

正解はb 単純知識で正答率も低いのですが、アセトアミノフェンは末梢神経に作用しないことを知っていればcを切ることが出来ますね。硬膜外麻酔は脊髄神経(末梢神経ですね)に作用させます。

⑤中毒

アセトアミノフェンの急性中毒として、まずは肝毒性を覚えましょう(腎障害や意識障害等あるのですが、問題になるのは肝障害です)。

下図を参照してください。ポイントは、

・アセトアミノフェンはグルクロン酸抱合やグルタチオン抱合、ここには書いてませんが硫酸抱合など含め、様々な方法で代謝され無毒化されて捨てられます。
・アセトアミノフェンはCYP2E1(CYP=シトクロムP450)で代謝されるとNAPQIとなり、こいつが肝毒性の原因となります。
・肝毒性
・アセトアミノフェンをODすると、無毒化に必要なグルタチオンが枯渇します。その結果として有毒なNAPQIを処理できないため、結果として肝障害をきたすわけです。
N -アセチルシステインはグルタチオンの前駆体です。こいつを投与することで枯渇したグルタチオンを補えるため、NAPQIを処理できるようになります。
(参考)もちろん肝性脳症予防に分枝鎖アミノ酸製剤やグリチルリチン酸、ラクツロース、場合によっては透析も必要になりますね。
長期間の飲酒歴、高齢、低栄養状態はアセトアミノフェン中毒のリスクです。
飲酒⇨CYP2E1活性亢進⇨NAPQI↑  イソニアジドやフェノバルビタールなどもCYP2E1のinducerであるため同様にリスクです。
高齢⇨グルタチオン抱合能↓⇨NAPQI↑
低栄養⇨グルタチオンが枯渇しやすい⇨NAPQI↑
・Rumack-Matthew Nomogramを用いて肝毒性のリスクを評価します(このノモグラフについては長くなるので参考文献を見ておいてください)

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(参考)Gilbert症候群でもリスク↑という報告あり
Esteban A, Pérez-Mateo M. Heterogeneity of paracetamol metabolism in Gilbert's syndrome. Eur J Drug Metab Pharmacokinet. 1999;24(1):9-13. doi:10.1007/BF03190005
(参考)Rumack-Matthew Nomogram
Rumack BH, Matthew H: Acetaminophen poisoning and toxicity. Pediatrics 55(6): 871–876, 1975; reproduced by permission of Pediatrics. (意外にもググれば色々説明出てくるから興味があればググってください)

【補足】侵害受容性疼痛と下行性疼痛抑制系

 痛みは大きく侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分けられます。神経障害性疼痛についてはここでは省略します。
侵害受容性疼痛は文字通り侵害受容器(化学刺激や機械刺激、温度刺激などに反応)を介して伝えられる痛みです。痛みに発生にはプロスタグランジンなどのメディエーターが関与するため、NSAIDsやアセトアミノフェン(プロスタグランジン合成↓)が有効です。

 また、侵害受容性疼痛にはブレーキがあります。下図を参照してください。痛みの伝導路は、ざっくり言うと
受容器⇨脊髄⇨視床⇨1次感覚野 と伝わって行きますが、この伝導路を抑制する神経路があります。これを下行性疼痛抑制系と言います。モルヒネトラマドールと言ったオピオイドはここに関与しています。

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【補足の補足】一次求心性神経にもμ受容体あり⇨モルヒネは一次求心性神経から二次へのシナプス伝達も抑制
また、侵害性神経そのものの興奮もモルヒネは抑制する。
⇨つまり、モルヒネは体性痛にも有効 ただし国試では……

107E28 緩和ケアについて正しいのはどれか.
a 医療用麻薬の投与は避ける.
b がんの診断後に早期から行う.
c 意識障害の患者は対象としない.
d モルヒネは体性痛に有効である.
e 経済的苦痛は身体的苦痛に含まれる.

正解はb
 dは誤りとされていますが、体性痛に効きはします。

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