115回医師国家試験をとことん深追いしました(A)


115A1:強皮症の腎病変

強皮症腎で見られるもの⇨TMA を選ぶ問題

強皮症といえば腎クリーゼ以外にも肺高血圧や間質性肺炎、GERDやGAVEなど様々な臓器の問題が出現しますが、最近の過去問でも毎年のように出てる印象で結構突っ込まれてる印象があります。

強皮症患者の急激な腎機能低下では
①(狭義の)強皮症性腎クリーゼ👈血圧が一気に上がる。高用量のステロイド投与がトリガーになりうる。治療にACE阻害薬(カプトプリル)が第1選択。
②血栓性微小血管障害(TMA)👈血小板減少貧血(破砕赤血球出現)。
③(稀ながら)ANCA関連血管炎(特にMPA)

などがあります。①と②の区別は国試にはまだ問われていません。

参考:①と②の補足
・①と②はいずれも進行性の腎障害と高血圧、血小板減少をきたしますが、病態(病理)が異なります。
・①の病態は腎血管の線維化、狭窄によるRASの亢進による高血圧性腎障害です。発症すぐに高血圧を認めます。
・ACE阻害薬が治療に用いられますが、腎クリーゼのない患者にACE阻害薬を投与すると腎クリーゼのリスクが上がると報告があります。
・②の病態は腎血管の血栓形成による腎虚血、RASの亢進です。初期には血小板減少のみで、遅れて高血圧が出現します。
・予後は②の方が悪いです。

参考:112A44、113A17、108D47

参考:強皮症についての直近10年の過去問抜粋
114F7:抗RNAポリメラーゼⅢ抗体を答える問題。この抗体陽性は腎クリーゼや悪性腫瘍のリスクの1つです。他にも肺線維症高リスクの抗Scl -70抗体(抗トポイソメラーゼ I 抗体)や肺高血圧症ハイリスクの抗セントロメア抗体があります。
112D58:強皮症患者の肺高血圧症、TR疑い。確定診断は右心カテですが、その前のスクリーニングでエコーを選ぶ問題。
110A38:強皮症で見られるもの⇨肺高血圧症と胃食道逆流(109I66では胸焼け主訴で来てます)

115A9:赤血球破砕赤血球

赤血球破砕症候群がみられるのはどれか⇨TTPを選ぶ問題

破砕赤血球が見られる原因を整理すると以下になります。

画像4

物理的な刺激、あるいは脆い赤血球により壊された赤血球が破砕赤血球(schistocytes)です。TMAの原因にTTPやHUSが入っています。

古い問題ですがこのような問題も出ています。

81B45 赤血球破砕症候群がみられるのはどれか.3つ選べ.
a 鎌状貧血
b サラセミア
c 血栓性血小板減少性紫斑病
d DIC(播種性血管内凝固)
e 人工弁(心臓)置換術後

正解はcdeです。

115A10 血管炎 チャペルヒル分類

我が国における高安動脈炎について正しいのはどれか。
a 中年男性に多い。
b 喫煙との関連性が高い。
c 水晶体偏位を合併しやすい。
d 浅側頭動脈の炎症を合併しやすい。
e 大動脈およびその分枝に病変をきたしやすい。

正解はeです。
aは若年女性に多い
bは特に関係ありません。
cはMarfanやホモシスチン尿症
dは巨細胞性動脈炎

血管炎については径によって分類があります。

チャペルヒル分類:径で分類
・大血管(大動脈とその第1分枝):高安動脈炎、巨細胞性動脈炎

・中血管(臓器に入る血管):結節性多発動脈炎、川崎病

・小血管~細動脈:ANCA関連血管炎(MPA、GPA、EGPA)、
免疫複合体関連血管炎(IgA血管炎、クリオグロブリン性血管炎、低補体血症性蕁麻疹様血管炎)


画像6
画像5

115A12、115D54:関節リウマチの眼病変、血管炎

関節リウマチの眼合併症はどれか。2つ選べ。
a 強膜炎
b 網膜炎
c 緑内障
d 眼球突出
e 虹彩毛様体炎

正解はae

☆リウマトイド性血管炎(rheumatoid vasculitis) 
・悪性関節リウマチとほぼイコール(全く同じという先生もいるし違うものだと言う先生もいます)
・RA経過中に見られる血管炎。喫煙男性で疾患コントロール不良の場合やFelty症候群ではリスクが高い。
血清補体価は低下します。
・血管炎症状として皮疹(下肢優位。紫斑や進行すると潰瘍や壊死を伴う)が最多。
・他にも末梢神経障害や心筋炎、心筋梗塞、胸膜炎、上強膜炎や虹彩毛様体炎や角膜炎など多彩。
腎障害と中枢神経障害は稀です(結節性多発動脈炎とは異なります)
皮膚や筋などの生検で血管炎所見を確認します。
・治療はRAの治療に加え、ステロイドやシクロフォスファミドなどを使う。

cdは切れて、bは中枢神経病変は少ないという点から切れる?

63 歳の男性。発熱と下肢の皮疹を主訴に来院した。10 年前に自宅近くの医療機 関で関節リウマチと診断され、抗リウマチ薬による治療を受けていた。1 年前から多発関節痛が増悪し、抗リウマチ薬の増量や追加をされたが改善しなかった。1 週前から 37°C台の発熱を認め、市販の解熱鎮痛薬を内服していたが改善しなかった。 2日前から 38°C台の発熱となり、下肢の皮疹に気付いたため受診した。体温 38.3°C。脈拍 96/分、整。血圧 142/86mmHg。呼吸数 18/分。眼球結膜の充血を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 両側下腿に一部潰瘍を伴う紫斑を認める。尿所見:蛋白(-)、潜血 (-)。血液所見:赤血球 392 万、Hb 10.2g/dL、Ht 32%、白血球 13,700(桿状核好中球 26%、 分葉核好中球 44%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 10%、リンパ球 18%)、血小板 36 万。血液生化学所見:総ビリルビン 0.9mg/dL、AST 38U/L、ALT 42U/L、 LD 315U/L(基準 120~245)、γ-GT 72U/L(基準 8~50)、尿素窒素 22mg/dL、 クレアチニン 0.6mg/dL。免疫血清学所見:CRP 8.2mg/dL、リウマトイド因子〈RF〉 1,260IU/mL(基準 20 未満)、 抗核抗体陰性、CH50 22U/mL(基準 30~40)、C3 42mg/dL(基準 52~112)、C4 12mg/dL(基準 16~51)。
現時点で行うべき検査として適切なのはどれか。
a 肝生検
b 関節穿刺
c 骨髄穿刺
d 皮膚生検
e 骨シンチグラフィ

正解はdです。関節リウマチで長期間治療中の人で新規に出現した皮疹で、炎症反応も高値となっています。ここから悪性関節リウマチ(rheumatoid vasculitis)と考えます。血管炎のため、皮膚生検して血管の炎症を確認します。

≪注≫(あくまで覚え方ですが)
関節リウマチはSjögren症候群との合併も多い。Sjögrenといえば、ドライアイやドライマウス。ドライアイになると…
強膜炎角膜炎
⇨強膜炎が進行するとその深層にある脈絡膜に炎症波及
虹彩毛様体炎
≪注≫上強膜炎が血管炎で出現を知っておけば…
⇨ANCA関連血管炎でもSLEでも結節性多発動脈炎でも強膜炎は起こりうる

画像8

115A13:ヘモクロマトーシス

ヘモクロマトーシスで認められるのはどれか。2つ選べ。
a 肝硬変
b 高血圧
c 腎不全
d 糖尿病
e 皮膚色素脱失

⇨正解はad

88回以降出題はなかったようですが…

上記以外にも

・皮膚色素沈着
・関節痛(特に第2、3指のMP関節に多い)
・精巣萎縮(男性不妊)
・不整脈
はそこそこの頻度で出現します。

115A21:膿疱性乾癬

35歳の男性。発熱と全身の皮疹を主訴に来院した。8年前に尋常性乾癬と診断され副腎皮質ステロイド 外用薬を塗布していた。7日前から39°C台の発熱とともに、急速に紅斑が全身に拡大したため受診した。 受診時紅斑上に径5mm までの小膿疱が多発し、集簇する。地図状舌を認める。血液所見:白血球16,000(桿状核好中球15%、分葉核好中球70%、好酸球3%、単球5%、リンパ球7%)。血液生化学所見:血清アルブミン3.0g/dL。CRP15.0mg/dL。膿疱からの細菌培養検査は陰性、真菌鏡検とTzanck試験はいずれも陰性であった。皮膚生検でKogoj海綿状膿疱を認める。体幹の写真を別に示す。最も考えられるのはどれか。
 a 膿疱性乾癬
b 伝染性膿痴疹
c 疱疹状皮膚炎
d Kaposi 水痘様発疹症 
e ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群

画像13

ポイントをまとめると

・乾癬で治療中⇨膿疱性乾癬は疑いの1つ(乾癬の経過なしで発症することもあるため注意)
・7日前から発熱とともに⇨全身性の疾患が考えられる
・紅斑上に径5mm までの小膿疱が多発し、集簇⇨膿疱を認める疾患。
疱疹状皮膚炎(dermatitis herpetiformis)やKaposi水痘様発疹症は名前のごとく帯状疱疹のように小水疱形成があるため画像所見から異なります。
膿痂疹(impetigo)も膿疱や紅斑がありますが、水疱形成を認めます。
・地図状舌:舌炎(カンジダでもハンターでも)や口腔内乾燥(シェーグレンなども)で認められます。膿疱性乾癬も尋常性乾癬同様に炎症性サイトカインが暴れ回る免疫異常に起因し、口腔粘膜の炎症や関節痛、眼病変など全身性の症候が見られます。地図状舌が出ても矛盾はありません。
・白血球増加(分葉も杆状も好中球↑)、CRP↑、低アルブミン:炎症反応
・細菌培養検査は陰性、真菌鏡検とTzanck試験はいずれも陰性:他の選択肢がこれで切れます
Kogoj海綿状膿疱:膿疱性乾癬のキーワード。有棘層に浸潤した好中球が周辺の角化細胞を破壊してスポンジ状にスカスカになったもの。

115A23:遅発性ジスキネジア

35歳の男性。テレビを見ている時に口をもぐもぐと動かす、舌を突き出すなどの動きがみられることを、家族に指摘されたと訴えて来院した。約6か月前からその動きがみられるという。30歳ころ、幻覚妄想状態を呈して抗精神病薬を投与され、以後、服薬を継続中である。
この動きについて正しいのはどれか。
a 睡眠中は消失する。
b 抗Parkinson病薬が著効する。
c 抗精神病薬に特異的な副作用である。
d 口の動きに注意を向けさせると増悪する。
 e 片側上下肢を投げ出すような不随意運動を伴う

正解はaです。eはバリズムの説明です。

遅発性ジスキネジア(Tardive dyskinesia)の要点は以下です。

・長期間(数ヶ月〜数年の単位)の抗精神病薬(特に定型)で出現。他にも制吐薬のメトクロプラミド(D2受容体拮抗薬)などでも出現。
繰り返しリズム感のある不随意運動が特徴的。問題文のような口をもぐもぐ、舌を突き出すなどに症状が出るのが最多。他にも四肢や体幹の動きを伴うことも。
・動きはストレスで増悪し、意識を向けると軽減、睡眠中は消失します。
・リスク=女性子供50歳以上、脳器質障害や気分障害の合併
・抗精神病薬の他の副作用であるParkinsonismや急性ジストニアは抗コリン薬(抗Parkinson病薬として書かれることも)が治療に使われますが、遅発性ジスキネジアで抗コリン薬を使うと悪化させる可能性があります。
・治療は抗精神病薬の変更や量の調整がメイン。ただし遅発性ジスキネジアは抗精神病薬の減量時に出現しやすく、増量で軽快することもあります。
・(参考)2021年の4月に小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)阻害薬のバルベナジンが承認されました。遅発性ジスキネジアの病態としてD2受容体の感受性増加が背景にあると考えられているため、VMAT2を阻害してドパミンの取り込を減らすという戦略です。

参考:98G102 
抗精神病薬による固縮・振戦に対する適切な治療薬はどれか.
a 抗不安薬
b 抗うつ薬
c 抗Parkinson病薬
d 抗けいれん薬
e 筋弛緩薬

固縮・振戦のため抗精神病薬によるParkinson症候群です。この場合は抗Parkinson病薬(として書かれている)の抗コリン薬が有効です。

115A24:睡眠薬による前向性健忘

55 歳の男性。夜中の記憶がないことを主訴に妻とともに来院した。数年前に不 眠に対して睡眠薬を処方されて以来、継続して服用し、仕事を続けていた。経営 していたレストランに 2 週前に泥棒が入り、ひどく落ち込んでいる様子であった。 昨日、午後 7 時に帰宅して夕食を済ませ、午後 11 時に就床した。翌日の午前 1 時頃、 少しでも本人を励まそうとする友人から、カラオケに誘う電話があり、カラオケ店にタクシーで行き宴会に参加し、午前 4 時頃帰宅した。帰宅後約 8 時間睡眠をとっ て午後勤務についたが、夜中のことを全く覚えていない。友人によると普通に歌 い飲食したとのことであった。アルコールは全く飲めず、当日も飲酒していない。 妻の話によると 2 か月前くらいから夜中に食事をしたり、コンビニエンスストア に行ったりしていることを、翌朝全く覚えてないことが 3 回あったという。
この患者で考えられる疾患はどれか。 
a 夜間せん妄
b 一過性全健忘
c 全生活史健忘
d 睡眠薬による前向健忘
e レム〈REM〉睡眠行動障害

a:せん妄は意識の障害(見当識低下)+注意の障害(集中してそれを維持できない)が診断基準に入ります(DSM-5参照)。普通に歌い飲食しているため当てはまりません。
b:一過性全健忘(TGA)は再発することは少なくはないのですが、ここ2ヶ月で4回は多すぎます。また、エピソードも今回の問題とは異なります(後述)。
c:自分自身に関することが抜け落ちます。115D15で出ているためそちらで扱います。
d:正解
e:REM睡眠行動障害(RBD)ではREM睡眠中の異常行動(暴力的なものが多い)です。

☆一過性全健忘(TGA)
・突然発症する記銘力障害(何度日付を聞いても答えられない)。
⇨同じことを何度も聞き返します。
・発作前の出来事を思い出せない逆行性健忘を伴うこともあります。
・発作中の記憶がすっぽり抜け落ちます。
24時間以内(多くは6時間以内)に自然軽快するのが特徴的です。
・特異的な診断、治療はありません。
⇨脳梗塞やてんかんなどを除外して診断となります。

類似の問題が2年前に出ています。

113F41
ベンゾジアゼピン系睡眠薬で起こりやすい有害事象はどれか。2つ選べ。
a 転倒
b 失語
c 企図振戦
d 前向健忘
e アカシジア

正解はad 他にも せん妄、過鎮静、眠気、依存、高度だと呼吸抑制に注意が必要です。

115A27:SLEの心外膜炎

46 歳の女性。息苦しさと全身倦怠感を主訴に来院した。半年前に手指と手首の 関節痛および頰部の皮疹が出現し、全身性エリテマトーデス〈SLE〉の診断で副腎皮質ステロイドとヒドロキシクロロキンが導入された。その後、症状は軽快していたが、1 週前から息苦しさ、全身倦怠感および前胸部の違和感が出現した。症状が増悪するため、本日夜 8 時に救急外来を受診した。体温 37.8°C。脈拍 102/分、整。 血圧 100/72mmHg。SpO2 96%(room air)。頰部に紅斑を認める。両側の中指近位指節間関節と手関節の腫脹を認める。頸静脈怒張は吸気時に顕著となる。心音 ではI音とII音の減弱を認める。呼吸音には異常を認めない。下腿に軽度の浮腫を認める。血液所見:赤血球 346 万、Hb 10.8g/dL、Ht 33%、白血球 7,200、血小板 15 万。血液生化学所見:ALT 26U/L、LD 160U/L(基準 120~245)、クレアチニン 0.5mg/dL、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉56pg/mL(基準 18.4 以下)。 CRP 3.8mg/dL。収縮期血圧は呼気時に比べ吸気時に18mmHg 低下する。胸部エックス線写真では CTR 55%、肺野に異常を認めない。心電図では肢誘導に低電位を認める。心エコー図(A、B)を示す。
この患者の呼吸困難感の原因として最も考えられる病態はどれか。
a 心外膜炎
b 心内膜炎
c 間質性肺炎
d 肺血栓塞栓症
e 肺動脈性肺高血圧症

画像15

Kussmaul徴候や奇脈を認め、画像では心囊液貯留(echo free space)と心外膜の輝度上昇があり答えはaです。

気になるポイントとして

ヒドロキシクロロキンが導入
⇨ヒドロキシクロロキンは元はマラリアの薬ですが2015年にSLE全例に適応となりました。腎炎の再燃率を減らすことが報告されています。ただし網膜症に注意が必要なため定期的な眼科受診を必要とします。
・SLEにおけるCRP:正常値であることも多いのですが、本問のような漿膜炎合併例では上昇を認めることがあります。他にも関節炎や感染合併の可能性も
・その他の選択肢
bd:心内膜炎(Libman-Sacks endocarditis)は心外膜炎より頻度は低いのですが、起こすと弁肥厚(特にM弁やA弁)や疣贅(無菌性で単球や血小板、フィブリンの沈着で塞栓に注意)を認めます。また、SLEでは心筋梗塞の合併も多いです。
e:109回に出題があります。他にも強皮症による肺高血圧症はよく出ます。

参考:直近の過去問 SLEは頻出です。
115D63:ループス腎炎(別の記事で)
114A20:CNSループスの治療でステロイドと併用するのは⇨シクロフォスファミド
112A75:SLE患者で認めたAPS(SLE患者の30〜40%でAPS合併します)
112F56:寛解期まで妊娠は避けること
111A25:ループス腎炎の診断
111D51:SLEで胎児に影響を与える抗体⇨抗SS–A抗体
111I61:心タンポナーデの原因⇨SLEが原因の1つ(115A26と同じエピソード)
110I35:光線過敏の原因⇨SLE(とペラグラ)
110I47:SLEでは補体が低下
109A52:SLE患者で肺高血圧症疑い⇨心エコーを選ぶ問題
109G59:SLE患者の検査で予想されるもの⇨赤沈↑、尿蛋白陽性、リンパ球↓

115A28:喉頭内視鏡でポリープ様声帯を選ぶ

喫煙歴のある高齢女性で20年前から嗄声があり、2ヶ月前から呼吸困難が出現。下の画像を選ぶ問題

画像16

喉頭内視鏡画像はよく出題があります。
ただし

109E24:嗄声を主訴とする人で最初にする機能検査は?
⇨最長発声持続時間
いきなり喉頭鏡入れません

114F50では喉頭乳頭腫(100F14(2枚目)の画像を変えた問題)

画像17
画像18

113D41は急性喉頭蓋炎(発症2時間で呼吸困難)。112B39の類題です。対応として気道確保を選ぶものです。109A60では急変に備えて挿管、気管切開、輪状甲状靱帯穿刺の準備をせよという出題。

画像19

111A49 反回神経麻痺(声門の左右差が特徴的です)。108I5にも出題ありです。

画像20

106D10:画像5つから喉頭癌を選ぶ問題。要チェックです。

115A35:マムシ咬傷

65 歳の男性。蛇に指を咬まれたことを主訴に来院した。30 分前、草刈り中に左 示指をマムシに咬まれた。既往歴に特記すべきことはない。意識は清明。脈拍 70/分、 整。血圧 108/80mmHg。SpO2 96%(room air)。左示指の指腹に2か所の咬傷を認め、左前腕が腫脹している。
対応として誤っているのはどれか。
a 抗菌薬の投与
b 局所の血液吸引
c 細胞外液の補液
d 抗マムシ血清の投与
e 自宅での経過観察の指示

eが誤りじゃなければ他の選択肢と矛盾(治療するのしないのどっちやねん)だからeしかありえない悪問…

今後国試で出ることはないと思いますが以下のreviewが役に立つと思います。

今後(出ないと思うけど)出るとしてポイントとなる点として考えられるのは

・マムシは北は北海道南は九州まで日本内で広く生息し、マムシ咬傷は国内で年間約1000例報告されている。
・マムシの歯は2本。多数の歯痕は毒蛇の可能性は低い。
・マムシ咬傷では毒素が血中に入るかが問題
毒素が入れば本症例のように急速に疼痛、腫脹が出現
・毒素によって血小板凝集⇨DICに注意(血小板数低下)
・血管透過性亢進⇨血管内脱水⇨腎不全に注意(補液を行うべし)
・血管透過性亢進、筋崩壊⇨コンパートメント症候群、CK上昇、ミオグロビン尿、高K、代謝性アシドーシス⇨腎不全、致死的不整脈
・毒素に神経毒作用あり⇨眼球運動障害を認めることも
・局所を縛る⇨有効性不明。コンパートメント症候群がより進行する可能性あり。毒素が局所にとどまると組織破壊が進行する可能性あり。86D40では縛るは誤り選択肢として出題あり。
抗毒素血清:重症例で早期の投与が推奨。ただしアナフィラキシー(投与後すぐ)と血清病(投与後1、2週間で生じるⅢ型アレルギー)に注意。

参考:緊急の場合はジャパン・スネークセンターへの問い合わせも選択肢に。

画像24

115A36:尿道損傷

52歳の男性。下腹部の緊満と排尿ができないことを主訴に受診した。今朝、自宅で脚立から足を踏みはずして会陰部を打撲した。受診時、外尿道口からの出血を認める。意識は清明。身長 168cm、体重 72kg。体温 36.7°C。脈拍 72/分、整。 血圧 124/84mmHg。呼吸数 20/分。会陰部の自発痛を訴え、皮下の膨隆と圧痛を 認める。下腹部は緊満している。血液所見:赤血球 450 万、Hb 14.1g/dL、Ht 42%、白血球 13,200、血小板 25 万。血液生化学所見:総蛋白 7.5g/dL、アルブミン4.0g/dL、総ビリルビン 1.2mg/dL、AST 23U/L、ALT 22U/L、LD 179U/L(基 準 120~245)、尿素窒素 16mg/dL、クレアチニン 0.7mg/dL、尿酸 5.5mg/dL、血糖 98mg/dL、Na 141mEq/L、K 4.3mEq/L、Cl 104mEq/L、Ca 9.9mg/dL。腹部エックス線写真では骨盤骨折を認めない。骨盤部 CT では会陰部に血腫を認める。逆行性尿道造影では膜様部尿道で造影剤の尿道外の溢流を認め、膀胱は造影されない。
まず行う処置として適切なのはどれか。
a 血液透析を行う。
b 腎瘻を造設する。
c 膀胱瘻を造設する。
d 尿管ステントを留置する。
e 外腸骨動脈の塞栓術を行う。

正解はc

以下の問題はリバイバル対策として重要と考えます

90A88 男性が会陰部を強打した後に起こった尿閉に対してまず行うべき検査はどれか⇨逆行性尿道膀胱造影
110C16 尿カテ入れる前に直腸診:尿道損傷があれば前立腺の浮動がある

☆尿道損傷
・尿道は前部と後部に分けられる
・前部は陰茎部と球部(カーブがキツくてカテ挿入の難所)に分かれる
・後部は膜様部と前立腺部に分けられる(画像をここにアップするとまずそうなのでググってください)。
・前部尿道の損傷は会陰部の強打で起こりやすい。陰嚢内血腫を認めることが特徴。
・後部尿道の損傷は骨盤部骨折に伴うことが多い。前立腺の浮上を認める。恥骨後方に血腫を認める。
・尿道口からの血液の流出は前部でも後部でも認める。
逆行性尿道膀胱造影で損傷部を確認できる(造影剤のリークを確認)
・膀胱カテーテル挿入は禁忌。より尿道損傷を悪化させるし、そもそも入らない。
・尿路確保のために膀胱瘻を増設する。

115A37:ニューモシスチス肺炎(PCP)

47歳の男性。乾性咳嗽を主訴に来院した。2 週前から夜間の微熱があり、1 週前から出現してきた乾性咳嗽が増悪したため受診した。1 年半前に原発性骨髄線維症に対して同種造血幹細胞移植を受けた。体温36.4 °C。脈拍 88/分、整。血圧 110/62mmHg。呼吸数 20/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。血液所見:赤血球 319 万、Hb 10.3g/dL、Ht 31 %、網赤血球 2.8 %、白血球 5,700(桿状核好中球 3 %、分葉核好中球 80 %、好酸球 3 %、好塩基球 1 %、単球 8 %、リンパ球 5 %)、血小板 21 万。血液生化学所見:IgG 480mg/dL(基準 960~1,960)、IgA 21mg/dL(基準 110~410)、IgM 28mg/dL(基準 65~350)。CRP 3.2mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.39、PaCO2 44Torr、PaO2 61Torr、HCO−3 25mEq/L。誘発喀痰のMay-Giemsa 染色では栄養体を、Grocott 染色では黒く染まるシストをそれぞれ検出した。胸部エックス線写真(A)及び胸部 CT(B)を別に示す。
検査所見として正しいのはどれか。
a KL-6正常
b 尿中抗原の陽性
c β-D-グルカン高値
d 喀痰培養検査で原因微生物を同定
e 2週間後のペア血清で抗体価4倍以上の上昇

画像25

正解はcです。

気になるポイント
・114F66〜68ではAIDSによるPCPが出題されています。AIDSに伴うPCPとAIDS以外のPCPは進行や予後が異なります(が、さすがに国試では出ないと思う)。今回のような非AIDS–PCPは免疫反応による炎症が強く出て咳も強く進行が早いです。
・誘発喀痰:3〜5%の生理食塩水をネブライザー使って誘発します。コロナ流行初期にPCRの検体をどうやって取ろうかという話で一時期話題になりました。誘発採痰はエアロゾル発生リスクが高いため非推奨です。
・選択肢d:ニューモシスチスは培養できません。そのため診断は喀痰中にニューモシスチスを見つけることで行います。PCRも感度は高いようです。

115A39:Fisher症候群

48 歳の女性。ふらつきと複視を主訴に来院した。10 日前に 38°Cの発熱と咽頭痛が出現したため自宅近くの診療所を受診し、感冒として投薬を受け、7 日前に症状が軽快した。2 日前からテレビの画面が二重に見えることに気付いた。昨日から、 歩行時にふらついて転びそうになることが増えてきた。これらの症状が徐々に進行してきたため受診した。意識は清明。体温 36.5°C。脈拍 68/分、整。血圧 120/68mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。神経診察では、両眼とも垂直、水平方向の眼球運動制限を認め、正面視以外で複視を自覚する。眼振は認めない。四肢筋力は正常だが、四肢腱反射はすべて消失している。Babinski 徴候は陰性。 膝踵試験は両側とも拙劣で、歩行は可能だが歩隔は広く不安定である。感覚障害は認めない。尿所見、血液所見に異常を認めない。
この患者と同様の発症機序と考えられるのはどれか。
a 重症筋無力症
b 多発性硬化症
c 進行性核上性麻痺
d 筋萎縮性側索硬化症
e Guillain-Barré 症候群

正解はeです。前駆する感染に加え、Fisher症候群の3徴(失調性歩行、眼球運動障害、腱反射消失)があります。この類縁疾患はGBSです。

Fisher症候群についてはガイドラインが出ていてそこに詳しく書いています

☆Fisher症候群(国試では100H34以降出題はありませんでした)
ギランバレー症候群の亜型(overlapもありうる)
三徴:外眼筋麻痺、運動失調、腱反射消失
・他にも顔面神経麻痺や眼瞼下垂、瞳孔異常など(があるけど、国試的には出しにくい?)
前駆感染、特に上気道感染あり(のことが多い)
抗GQ1b抗体が特異度が高い
自然軽快し後遺症を残すことは少ない

115A40:周術期心筋梗塞(PMI)

70歳の男性。肝腫瘍に対する肝切除術後、ICU に入室した。入室時の脈拍は 80/分、整、血圧は150/84mmHg であった。翌日、朝 8 時に胸部不快感と強い悪心を訴えた。その後不穏状態となり、顔色は不良、全身に発汗を認める。体温 37.5 °C。脈拍 68/分、整。血圧は 80/48mmHg。SpO2 94 %(マスク 5L/分酸素投与下)。心音に IV 音を聴取し、呼吸音は両側で wheezes を聴取する。四肢末梢に冷感を認める。術前の心電図(A)及び胸部症状出現時の心電図(B)を別に示す。ベッドサイドの心エコー検査で左室前壁と下壁に壁運動低下を認めた。
速やかに行うべきなのはどれか。
a 心嚢穿刺
b 心臓カテーテル検査
c 肺血流シンチグラフィ
d 下大静脈フィルター留置
e t-PA〈tissue plasminogen activator〉投与

画像27

術後の胸部不快感と冷感、wheeze聴取でSpO2低下とショックバイタル。ECGではⅡ、Ⅲ、aVF、V1〜6の陰性T波やV1〜4のST上昇を認めAMIを疑う(たこつぼの可能性もあるけど)。確定のために心カテが必要。

同様の問題は111C30、31(連問)で出ていますが、周術期心筋梗塞について。

こちらもガイドラインがフリーで読めます(リンク先27ページ)

☆周術期心筋梗塞(PMI perioperative MI)
・原因はプラーク破綻 or 非閉塞(攣縮、心筋の酸素需要過多、酸素供給低下)
⇨問題となるのは後者。ST上昇なし、胸痛なし、併存疾患多、予後不良
・麻酔による鎮痛鎮静も早期発見の遅れに繋がる?
⇨ハイリスク者に対する予防、早期診断のための検査項目、基準が必要とされる

115A41、115D46:肺高血圧症

52歳の女性.労作時息切れを主訴に来院した.半年前から息切れを自覚し,徐々に増悪したため受診した.既往歴と家族歴に特記すべきことはない.喫煙歴はない.意識は清明.体温36.2℃.脈拍76/分,整.血圧140/76mmHg.呼吸数16/分.SpO2 95%(room air).眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない.心雑音を認めない.Ⅱ音肺動脈成分の亢進を認める.呼吸音に異常を認めない.肝・脾を触知しない.下腿に浮腫を認めない.血液所見:Hb 12.6g/dL,白血球6,400,血小板36万.心電図で右室肥大所見を認める.胸部X線写真で肺野に異常を認めないが,肺動脈主幹部の拡張による左第2弓の突出を認める.胸部造影CTでは肺血栓塞栓を認めない.心エコー検査では推定肺動脈収縮期圧は50mmHgであった.
治療方針を決定するために必要な検査はどれか.
a 胸部MRI
b FDG-PET
c 喀痰細胞診
d 冠動脈造影
e 右心カテーテル検査

正解はeです。Ⅱpの亢進、左第2弓(肺動脈陰影)の突出、エコーで推定肺動脈圧が高値から肺高血圧症の疑いです。確定のために右心カテが必要です。

48 歳の女性。息切れを主訴に来院した。半年前から長い距離を歩くと息切れを自覚するようになり、症状は徐々に増悪した。最近になり 2階まで階段を上るのも息苦しくなってきたため受診した。喫煙歴はない。脈拍 88/分、整。血圧 134/68mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 93%(room air)。仰臥位で頸静脈怒張を認める。心音ではII音が亢進している。呼吸音に異常を認めない。両下腿に浮腫を認める。血液所見:赤血球 390 万、Hb 12.0g/dL、Ht 34%、白血球 6,600、血小板 9 万。 血液生化学所見:総蛋白 6.2g/dL、アルブミン 3.3g/dL、ALT 26U/L、クレアチニ ン 0.6mg/dL。CRP 0.1mg/dL。胸部エックス線写真(A)及び心電図(B)を示す。
この患者の息切れの原因として、最も考えられるのはどれか。
a 肺高血圧症
b 不安定狭心症
c 感染性心内膜炎
d 心タンポナーデ
e 大動脈弁狭窄症

画像48
画像49

正解はaです。右心不全症状があり、Ⅱ音の亢進があります。Xpは右第2弓(右房)の突出があり、心電図ではV1、V2でR波増高と陰性T波があります。

肺高血圧症の治療ガイドラインは以下です。

☆肺高血圧症
・定義:安静時に右心カテーテル検査を用いて実測した肺動脈圧(PAP)の平均値(mean PAP)が25mmHg以上
≪注≫ただし2018年のNice会議でmean PAP>20mmHgとすると変更されました
・分類:下図参照
⇨肺動脈性に先天性心疾患が含まれていることに注意(110I4)
・治療:血管拡張薬としてプロスタサイクリン(PGI2)、エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタン、アンブリセンタン、マシテンタン)、ホスホジエステラーゼ-5阻害薬(シルデナフィル,タダラフィル)、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬(リオシグアト)がある。
肺移植:薬物療法の反応が悪い場合に適応です。登録時年齢は片肺は60歳以下、両肺は55歳以下とされています。

画像50

参考
110I4
肺動脈性肺高血圧症について正しいのはどれか.
a 平均肺動脈圧は低下する.
b 肺血栓塞栓症が原因となる.
c 心陰影の左第3弓突出がある.
d 先天性心疾患に伴う肺高血圧症が含まれる.
e カテーテル検査では肺動脈楔入圧が高値である.

正解はdです。mean PAP↑が定義です。肺血栓塞栓症は第4群、右心負荷のため左第2弓(肺動脈)や右第2弓(右房)の突出を認めます

115A42:慢性便秘に浸透圧性下剤投与

58 歳の男性。残便感を主訴に来院した。半年前から残便感を自覚し、持続するため受診した。便は兎糞状であり、排便回数は 3 日に 1 回程度である。毎回強くいきんで排便しているが、排便後も残便感が持続する。既往歴に特記すべきことはない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。直腸指診で異常を認めない。下部消化管内視鏡検査で異常を認めない。
対応として適切なのはどれか。
a 安静指示
b 抗菌薬投与
c 定期的な浣腸
d 浸透圧性下剤投与
e 食物繊維摂取の制限

正解はdです。

2017年に慢性便秘のガイドラインが出ています。

気になるポイントとしては下剤についての出題があったことです。長くなったため別の記事に書きました。

115A43、115D32:輸血製剤の使用指針

5 歳の女児。急性リンパ性白血病で入院中であり寛解導入療法を行っている。体温 36.4 °C 。眼瞼結膜は貧血様である。下腿に紫斑を認める。血液所見:赤血球 288 万、Hb 8.8g/dL、Ht 26 %、網赤血球0.1 %、白血球 800(分葉核好中球 19 %、単球 0 %、リンパ球 81 %)、血小板 1.0 万、PT-INR 1.0(基準0.9~1.1)、APTT 29.2 秒(基準対象 32.2)、血漿フィブリノゲン 170mg/dL(基準 200~400)。
対応として適切なのはどれか。
a 血小板輸血
b 新鮮凍結血漿輸血
c 赤血球濃厚液輸血
d エリスロポエチン製剤の投与
e トロンボポエチン受容体作動薬の投与

正解はaです。血液製剤の使用指針が以下にあります。

その上で問題を解くために必要な知識として

・赤血球輸血はHbが7未満が多くの場合トリガー値
≪注≫貧血であるかと貧血症状の有無は別。同じHb値でも、それが急激な低下か緩徐な低下かでは症状の度合いも異なります。輸血するか否かの判断、輸血後の経過では臨床症状も重要です。
・血小板数が 5 万/μL 以上不要。
・血小板数が 1~5 万/μL では場合によっては血小板輸血が必要。
血小板数が 1 万/μL 未満では血小板輸血が必要
≪注≫一般的に血小板減少では皮下出血や歯肉出血など浅い出血がキーワードですが、血小板数の大幅な低下は脳内出血など危険な出血を伴うこともあります。
・新鮮凍結血漿は凝固因子の補充を目的とします。
・トリガー値としては以下がありますが国試では参考程度でいいでしょう。
<PT>
(i)INR 2.0 以上 または
(ii)30%以下
 <APTT>
(i)各医療機関における基準の上限の 2 倍以上,または
(ii)25%以下
 <フィブリノゲン値>
150mg/dL 以下,またはこれ以下に進展する危険性がある場合

参考:輸血製剤の保存法
新鮮凍結血漿は-20℃以下で保存
血小板は20~24℃で振とう保存
赤血球は2~6℃で保存

115D32
78 歳の男性。全身倦怠感を主訴に来院した。約 1 か月前から全身倦怠感があり増悪するため受診した。意識は清明。脈拍 88/分、整。血圧 130/84mmHg。眼瞼結膜は貧血様であるが眼球結膜に黄染を認めない。胸骨右縁第2肋間を最強点と する収縮期駆出性雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球 185 万、Hb 6.5g/dL、Ht 21%、白血球 2,600(骨髄芽球 0%、桿状核好中球 3%、分葉核好中球 50%、好酸球 1%、好塩基球 1%、 単球 2%、リンパ球 43%)、血小板 9.2 万。血液生化学所見:総蛋白 6.7g/dL、アルブミン 3.4g/dL、総ビリルビン 0.7mg/dL、AST 21U/L、ALT 11U/L、LD 240U/L(基 準 120~245)、尿素窒素 17mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、尿酸 5.2mg/dL、血清鉄 120μg/dL(基準 80~170)、TIBC 280μg/dL(基準 290~390)、フェリチン 120ng/mL(基準 20~120)、エリスロポエチン 180mIU/mL(基準 4.2~23.7)。骨髄は正形成で骨髄塗抹標本では 3 系統の造血細胞に異形成を高頻度に認めた。骨髄細胞の染色体は正常核型であった。
この患者への対応で適切なのはどれか。
a 赤血球輸血
b 鉄キレート剤の投与
c 同種造血幹細胞移植
d 副腎皮質ステロイドの投与
e トロンボポエチン受容体作動薬の投与

正解はeです。MDSでは同種幹細胞移植を行いますが、本症例は78歳と高齢なため行いません。Hbが7を下回り貧血症状が出現していることから輸血を行います。

115A45:SIADHの診断と治療

54 歳の女性。倦怠感を主訴に来院した。進行卵巣癌のため 10 日前に外来で薬物による抗癌治療を受けた。その後、水分は多めに摂取するようにしていたという。3 日前から倦怠感が出現したため受診した。意識は清明。脈拍 60/分、整。血圧 134/86mmHg。皮膚のツルゴールの低下を認めない。下腹部に径11cm の腫瘤を触知する。腹水はない。血液生化学所見:クレアチニン 0.8mg/dL、尿酸 3.2mg/dL、Na 124mEq/L、Cl 102mEq/L、コルチゾール 6.6μg/dL(基準 5.2~12.6)。血清浸透圧は 250mOsm/L(基準 275~288)で低値、尿浸透圧は 390mOsm/L で高値、尿中 Na は 45mEq/L で高値であった。胸部エックス線写真で心拡大を認めない。
血清浸透圧の低下に対してまず行うのはどれか。
a 水分の制限
b 生理食塩液の点滴投与
c 5 %ブドウ糖液の点滴投与
d 塩化ナトリウムの経口投与
e カルシウム拮抗薬の経口投与

低Naで血清浸透圧低値、尿浸透圧高値、尿中 Na高値からSIADHを考え、治療として水分制限を選ぶ問題です。

こちらの記事でも書きましたが、低Naをきたす疾患は多くあります。この問題で尿中Naがどうのと書いてあることから111回、113回で出た肝硬変心不全の低Naも再度理解しておきたいです。

参考:近年のSIADHの過去問
107D9、103B27:SIADHでは低Naをきたします。
104I32:SIADHでは尿酸も低下します。
110D45、103I67:SIADHの臨床問題。いずれも水制限を選ぶ。
111F15(105F3)、109E20:SIADHは乏尿をきたさない、体液量は減少しない

参考:MRHE(糖質コルチコイド反応性低ナトリウム血症)
・SIADHと同様にADH↑、尿中Na排泄↑、低尿酸血症、低Na血症をきたす疾患です。
・加齢に伴うNa保持能低下に起因します。Naと水が体外に多く出るため脱水をきたします。
水制限は禁忌です(脱水が増悪)。治療はフルドロコルチゾン(フロリネフ)です。

115A49:外反母趾の治療

31 歳の女性。左母趾痛と同部の変形を主訴に来院した。3 年前に誘因なく左母趾痛が出現したがそのままにしていた。最近になり、痛みが増悪し変形も目立ってきたので受診した。左足部エックス線写真を別に示す。
治療として適切でないのはどれか。
a 靴指導 b 筋力訓練 c 骨切り術 d 装具療法 e 徒手整復

画像32

画像から外反母趾は分かります。明らかな間違いがeのため正答率は高かったのですが、外反母趾自体は96D46、90B79以来出題はありませんでした。

2014年にガイドラインが出てて以下でフリーで読めます

☆外反母趾
・母趾がMTP関節で外反(親指付け根が小指側に偏位)。その結果MTP関節は内側に突出して隆起を認める(この隆起をバニオン<bunion>といいます)。
・様々な要因で起こりうる。特にハイヒール着用は有名なリスク。
女性に多く家族内発症もある。
・診断は立位(つまり体重かけた状況の下)でのX線撮影で得られる外反母趾角(Hallux Valgus Angle)の測定で成される。
・治療は保存療法(靴指導や筋力訓練や装具療法)や手術(骨切り術など)を行う。薬物療法(消炎鎮痛薬)も除痛に有効。

115A50:NERDの出題

48歳の女性。胸やけを主訴に来院した。3か月前から胸やけが出現し、食事に気を付け経過をみていたが改善しないため受診した。既往歴と家族歴に特記すべきことはない。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。半年前に勤務異動があり仕事が忙しくなった。意識は清明。脈拍68/分、整。血圧112/70mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。上部消化管内視鏡像を別に示す。
考えられるのはどれか。
a Barrett食道
b 逆流性食道炎
c 好酸球性食道炎
d 食道アカラシア
e 非びらん性胃食道逆流症〈NERD〉

画像33

胸焼けのエピソードから胃食道逆流症(GERD)が疑われます。GERDは粘膜障害を認める逆流性食道炎と、粘膜障害を認めないNERDに分けられます。今回は内視鏡では典型的なヒトデ型びらんは見られませんのでNERDが正解となります。

115D53に逆流性食道炎の画像があるため、合わせて見てください。

≪注≫ 選択肢c 好酸球性食道炎(教科書的には白斑や溝を認めるが正常所見もあり)との鑑別が微妙な場合も…⇨必要に応じて生検も行う

NERDについてはGERD診療ガイドライン(下のリンク)のp21に記載があります。

☆非びらん性胃食道逆流症(NERD)
・胸焼けや呑酸、胸痛などを主訴とする(咽頭部違和感や慢性咳嗽の原因としても重要)
・逆流を前提とする疾患ですが、精神的な要因や食道の酸に対する過敏性亢進も背景に。
痩せ型の若年女性に好発します(GERDではメタボの人が多いです)。
・PPIはGERDよりも効きにくい(過敏性亢進が背景にあるから?)。

115A51、115F32:高齢者の高血圧、転倒

76歳の女性。血圧上昇を主訴に来院した。血圧自己測定を行っていたが、最近、血圧が徐々に上昇してきており、生活習慣に気を付けても改善しないため受診した。意識は清明。身長 163cm、体重 51kg。体 温 35.9 °C。脈拍 86/分、整。血圧 162/98mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 95 %(room air)。尿所見:蛋白 1 +、糖(-)、潜血(-)、血液所見:赤血球 343 万、Hb 11.0g/dL、Ht 33 %、白血球 3,700、血小板 17 万。血液生化学所見:尿素窒素 20mg/dL、クレアチニン 1.0mg/dL。
内科外来における研修医と指導医の会話を示す。
指導医:「高齢の高血圧症の患者さんなので、若年や中年の患者さんと比べて注意すべき点もあると思います。塩分制限についてはどうですか」
 研修医:「①高齢者にも減塩は有効ですが低栄養には注意が必要です」
指導医:「静脈還流量が低下した時の血圧維持が弱い可能性もありますね」
研修医:「②起立性低血圧をきたしやすい理由の一つです」
指導医:「生活上の注意点はありますか」
研修医:「③食後の低血圧に注意します」
指導医:「降圧薬の選択はどうですか」
研修医:「④サイアザイド系の利尿薬は第一選択にできません」
指導医:「アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬の併用はどうですか」
研修医:「⑤推奨されません」
下線部のうち誤っているのはどれか。

①:正しいです。降圧のための減塩は重要なのですが、薄味にすると食べなくなってしまいフレイルに陥る人もいます。
②:正しいです。113D8に出題があります。このことから転倒のリスクが高く注意が必要です。
③:正しいです。消化管への血流↑の一方で、調節機能が働かず脳血流↓となり起こります。高齢者のふらつきやめまいの原因として重要です。
114F60に出題(食後の全身倦怠感を説明し得るのはどれか⇨食後60分の血圧低下)
④:誤りです。降圧薬として第1選択にできますが、電解質フォロー(Na↓K↓Ca↑Mg↓)は必要ですし、尿酸値上がるため痛風既往の人には使いにくいし、耐糖能低下をきたすため糖尿病合併例に禁忌など難点ありです。
⑤:正しいです。両者2剤の併用は腎機能悪化などの有害事象を増すばかりで推奨されません。
参考:OnTarget study

高齢者の高血圧については毎年のように出題があります。

113D8:高齢者の高血圧症の特徴でないのはどれか.
a 食後血圧低下
b 起立性低血圧
c 拡張期高血圧
d 血圧動揺性増大
e 主要臓器血流予備能低下

正解はcです。高齢者では血圧の調節機能が低下するため様々な血圧異常をきたします。特に収縮期血圧↑に対して拡張期血圧↓で脈圧開大は特徴的です。
aについては翌年に出題があります。
114F60:食後の全身倦怠感を説明し得るのはどれか⇨食後60分の血圧低下

その他、高血圧単体よりも様々な疾患との関係、ポリファーマシー関連の問題も多いです。直近だと115F32、114C72–74、113D75など。他にも他職種連携や退院後の注意など幅広く出てます。

例)高齢者の転倒
・ベンゾ?(⇨薬確認して可能なら辞める)
・貧血?(ワルファリン飲んでて出血かも。内視鏡でcheck)
・低血糖?(血糖測定、糖を入れる)
・不整脈?(心電図も忘れずに。薬の影響かも。)
・低血圧?(降圧薬効きすぎ?起立性?食後?)
・他の要因は?(自律神経障害をきたす疾患、筋力低下、視覚障害、小脳や位置覚の障害、前庭機能障害など)

F32
高齢者の転倒リスクを高める薬剤はどれか。2 つ選べ。
a 降圧薬
b 骨粗鬆症治療薬
c 尿酸排泄促進薬
d ビタミン D 製剤
e ベンゾジアゼピン系抗不安薬

正解はaeです。

115A52:子供がタバコを食べた

8か月の女児。3 時間前に紙巻たばこの先端を 2cm 食べたことを主訴に両親に連 れられて来院した。症状はなく、顔色は良好で機嫌はよい。身長 70.1cm、体重 8,000g。 体温36.8°C。脈拍120/分、整。呼吸数30/分。SpO2 98%(roomair)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟。
対応として適切なのはどれか。
a 胃洗浄
b 経過観察
c 下剤投与
d 活性炭投与
e 生理食塩液の点滴

100D29のプール問題です。翌年の101D13では胃洗浄が出ているので、116回で胃洗浄を選ぶタバコ誤飲が出る…?胃洗浄の適応の確認はマスト
正解はbです。食べた量が少なく中毒症状が出ていないため現時点での治療介入は不要です。ただし遅れてから中毒症状が出ることも報告されているためすぐには帰さず4時間ほどは経過を見なければなりません。
a:胃洗浄の適応は誤飲後1時間以内です。胃洗浄自体は誤嚥リスクのある手技のため、必要なケース(中毒症状ありなど)に限って行います。
cd:下剤は活性炭とセットで投与します(つまり救急領域で下剤のみで正解になることはまずないでしょう)。これらをやってもいいですが、胃洗浄より優先させる理由もないし、現時点で中毒症状がないため不要でしょう。

ポイントとしては…

・胃洗浄の適応と禁忌
適応:誤飲後1時間以内。中毒をきたし致死的な転機をたどりうるもの。
禁忌:穿孔ボタン電池、強酸強塩基など穿孔リスクのあるものの誤飲、誤嚥リスクのあるものの誤飲(ガソリンや灯油)、食道静脈瘤など管を入れるのは危険な状態

115A53:ソモジー効果と暁現象、インスリン製剤

58歳の男性。空腹時血糖の高値を主訴に来院した。20 年前に 2型糖尿病を指摘され、15 年前からイ ンスリン自己注射を開始した。現在は超速効型ヒトインスリンを各食直前に 6 単位、就寝前に持効型溶解インスリンを 12 単位自己注射している。内服薬は服用していない。最近の自己血糖測定値を下記に示す。睡眠中に著明な発汗を伴い目覚めることがある。身長 173cm、体重 62kg。脈拍 68/分。血圧 126/82mmHg。身体所見に異常を認めない。尿所見:蛋白(-)、糖 2 +、ケトン体(-)。血液所見:随時血糖 178mg/dL、HbA1c 6.4 %(基準 4.6~6.2)。

画像34

まず行うべきなのはどれか。
a 夕食後の散歩
b 夕食時の糖質減量
c 明け方の血糖値の測定
d スルホニル尿素薬の内服の追加
e 夕食前の超速効型ヒトインスリンの増量

☆暁現象(Dawn現象)とSomogyi効果
暁現象とは、文字通り暁(夜明け)から太陽が登るかの如く血糖値が上昇する現象です。成長ホルモンやコルチゾールの影響と言われています。基礎インスリンを増やします。
Somogyi効果とは、インスリン療法中の患者において、夜間から明け方の低血糖に反動して朝に高血糖をきたす現象です。夜間低血糖を防ぐために夕食前の追加インスリンを減らします。
⇨つまり両者とも朝に高血糖をきたしますが、夜間〜明け方に低血糖があるか否かが異なります。
明け方に血糖値を測定し、両者の鑑別が必要です。
(参考)
本問では睡眠中に著明な発汗を伴い目覚めることがあると記載があるため、睡眠中の低血糖、つまりSomogyi効果が疑われます。その場合の介入は、夕食前に打った超速効型インスリンの減量です。ゆえにeの選択肢は危険です。

☆インスリンあれこれ(今後別記事にまとめる予定です)。
・生理的なインスリン分泌は以下の2つに分けられます。
(ア)基礎分泌:24時間常に分泌されるインスリン
(イ)追加分泌:食後高血糖に対応するために分泌されるインスリン
・重度の2型DMや1型DMでは(ア)に該当する持効型インスリンと、(イ)に該当する超速効型インスリンを組み合わせます。これを強化インスリン療法と言います。
・他にも持効型と経口薬の併用(BOT:basal supported oral therapy)もあります。
・超速効型インスリンは通常食直前に投与します。
⇨上記のeの選択肢ですが、夕食前の超速効型インスリン増量が必要になるのは、夕食後(効果判定は就寝前の血糖)に高血糖がある場合です。
・例えば夕食前の血糖値が高い場合、変えるべきは夕食前投与の超速効型インスリンではなく、昼食前の超速効型であることには注意が必要です。


115A55:オージオグラム

28歳の男性。両耳の耳鳴を主訴に来院した。1 年前から高音の耳鳴と軽い難聴を自覚していたが、会話に支障はなかった。耳鳴が徐々に増悪してきたので受診した。小児期から現在まで耳痛、耳漏の自覚はない。片道 2 時間の高校・大学の通学時には、大きな音量で音楽をイヤーフォンで聴いていた。社会人になった後も、通勤時には毎日 3 時間はイヤーフォンで音楽を聴いている。両側の鼓膜は正常で、側頭骨 CT でも異常を認めなかった。
別に示すオージオグラム(①~⑤)の中でこの患者のオージオグラムとして最も適切なのはどれか。(画像後述)

音響暴露があり騒音性難聴を考え、C5 dipのある図を選びます。4000Hzを中心とする聴力レベル上昇が特徴的です。

過去に出たオージオグラムについてはこちら

115A57:妊婦のshock index

36 歳の初産婦(1 妊 0 産)。妊娠 40 週 0 日に陣痛発来のため入院した。続発性微弱陣痛で分娩が遷延したため、オキシトシンで陣痛促進後、吸引分娩となった。児は、3,800g、女児で、Apgar スコアは 8 点 (1 分)、9 点(5 分)であった。児娩出後 30 分経過したが、胎盤が自然に娩出されず、出血が持続するため、用手剥離を行った。胎盤娩出後も子宮からの出血が持続しているため、子宮を双手圧迫している。母体は顔面蒼白で冷や汗をかいているが、意識レベルは正常である。体温 36.9 °C。心拍数 120/分、整。血圧 80/40mmHg。
ここまでの出血量の推定値はどれか。
a 500mL
b 1,000mL
c 1,500mL
d 2,500mL
e 4,000mL

妊婦は shock index 1.0 で出血量 1.5L、shock index 1.5 で出血量 2.5L と推定されます。ゆえに本症例ではSIは1.5ゆえ、推定出血量は2.5Lとなります。

115A58:最終健常不明の脳梗塞でDWIとFLAIRの重要性

78 歳の女性。意識障害と左片麻痺のため救急車で搬入された。長男夫婦と同居、日常生活は自立してい た。昨夜午後 9 時まで同居の家族とテレビを見ていた。その後、自室に戻り就寝したようだが、起床時間 の午前 6 時になっても起きてこないことを心配した家族が布団のそばで倒れているところを発見し、家族 が救急車を要請した。75 歳時に心房細動を指摘され、経口抗凝固薬を服用中であった。意識レベルは JCS I-1。体温 36.8 °C。心拍数 92/分、不整。血圧 140/88mmHg。呼吸数 16/分。会話は可能で口頭命令への 理解は良好である。視野は正常で、半側空間無視は認めない。左上下肢に不全片麻痺を認める。感覚障害を認めない。血液生化学検査に異常を認めない。午前 8 時に撮像した頭部 MRI の拡散強調像、FLAIR 像、T2*強調像、MRA(A~D)を別に示す。
正しいのはどれか。
a 出血性脳梗塞である。
b 速やかに降圧薬を投与する。
c 直ちに右頸動脈ステント留置を行う。
d 早期にリハビリテーションを開始する。
e t-PA〈tissue plasminogen activator〉療法の適応である。

画像37

正解はdです。不整脈あり(AF?)。画像では右MCAの一部に閉塞があり脳梗塞と分かります。

気になったポイントはeの選択肢で、今回は最終健常時間が不明です。その場合に拡散強調画像(DWI)では高信号だがFLAIRでは信号変化が見られない所見(DWI-FLAIR mismatch)がある場合は、発症時間4.5時間以内であると考えt -PAを使えます。

上記の論文をうけ、静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針第三版(2019年)、脳卒中治療ガイドライン2019でもこの話は入っています。

今後は本問題のようなwakeup  strokeでDWIとFLAIRからt-PA適応を考える問題が出ないとも言い難いです。

115A60:溶骨性変化で疼痛のある多発性骨髄腫の治療

64歳の男性。股関節痛を主訴に来院した。半年ほど前から両側の股関節痛を自覚し、会社の診療所で 処方された鎮痛薬を不定期に内服していたが痛みが改善しないため受診した。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。表在リンパ節は触知しない。血液所見:赤血球 353 万、Hb 11.5g/dL、Ht 34 %、白血球 3,200、血小板 16 万。血液生化学所見:総蛋白 10.5g/dL、アルブミ ン 3.9g/dL、IgG 5,425mg/dL(基準 960~1,960)、IgA < 20mg/dL(基準 110~410)、IgM < 10mg/dL(基準 65~350)、総ビリルビン 0.7mg/dL、AST 19U/L、ALT 10U/L、LD 178U/L(基準 120~245)、尿素窒素 11mg/dL、クレアチニン 0.9mg/dL、尿酸 4.7mg/dL、Na 141mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 108mEq/L、 Ca 9.8mg/dL。エックス線写真で両股、胸椎および腰椎に多発する溶骨性病変を認める。両股関節エック ス線写真(A)、骨髄血塗抹 May-Giemsa 染色標本(B)、血清蛋白分画、免疫電気泳動検査写真(C)を 別に示す。
この患者の治療として適切でないのはどれか。
a デキサメタゾン
b 自家末梢血幹細胞移植
c ビスホスホネート製剤
d プロテアソーム阻害薬
e 多発性骨病変に対する放射線照射

画像38

多発性骨髄腫についてはこちらにまとめています。

65歳未満のため自家造血幹細胞移植の適応となっています。また標準治療のVRd療法(ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメサゾン)が選択肢adです。ビスホスホネートは支持療法として用いることが113F62に出ています。
eの放射線照射は骨髄抑制や全身状態悪化のリスクのため近年はほとんど行われません。

115A61:Sturge-Weber症候群

10 か月の男児。無熱性けいれんを主訴に、父親に連れられて来院した。添い寝をしていたところ突然 2 分間の左上下肢の間代けいれんがみられたため来院した。出生時から右顔面にポートワイン様母斑を認めた。追視・固視 2 か月、定頸 4 か月、坐位保持 7 か月で発達の異常は指摘されていなかった。9 か月時に 1 分間の左上下肢の間代けいれんがみられ、2 週後に同様の発作があった。頭部造影 MRI で、右大脳の軟膜血管腫を認めた。
この疾患でみられないのはどれか。
a 片麻痺 b 精神遅滞 c てんかん d 網膜色素変性 e 脳回に沿った石灰化

中枢神経の毛細血管奇形によって脳の虚血を起こすため、結果として片麻痺、精神遅滞、てんかんが起こります。また虚血後の変化で石灰化を認めます。
網膜色素変性は桿体細胞の障害で夜盲が特徴的ですが、今回は血管奇形と無関係のため誤りです。

過去に出てるSturge-Weberは以下です。

97D7:20歳の男性.出生時から存在する顔面の皮疹を主訴に来院した.幼児期からけいれん発作がある.最近,左眼の眼圧亢進も指摘⇨SWを選ぶ問題
92F35:2歳6ヵ月の男児.左上肢の間代性けいれんを主訴として来院した.1ヵ月前にも左上肢のけいれんがあった.顔面の写真〜⇨SWを選ぶ問題
108B26:4ヶ月で精査が必要な皮疹は⇨顔の片側で頬から額に続く赤い皮疹

上記を考えるに新規の出題事項が多い印象です。

非遺伝性である。⇨113F23などのハズレ選択肢に登場。
・GNAQ3の体細胞モザイク変異による毛細血管形成異常による。
・毛細血管奇形⇨三叉神経領域のポートワイン斑、後頭葉に好発する軟髄膜血管腫(leptomeningeal angiomatosis)(くも膜や軟膜の血管腫)
≪注≫ポートワイン斑自体は新生児の0.3%で見られるもので、必ずしもSWSというわけではない。
≪注≫後頭葉病変のある場合は視野欠損を伴うことも。
・眼病変として緑内障(⇨眼球拡大で牛眼)、脈絡膜血管腫(眼底がケチャップ様)
脳回に沿った石灰化てんかん片麻痺:脳表に血管腫があるとその直下が虚血に陥り、石灰化する。
精神遅滞:生後数ヶ月は正常なことが多い。ASDや自殺の増加も報告あり。
・内分泌⇨成長ホルモン↓ 甲状腺ホルモン↓など。

画像39

115A63:ドレーン留置

ドレーン留置で早期発見できるものは?
a 術後出血 b 腸管癒着 c 神経因性膀胱 d 骨盤内の癌再発 e深部静脈血栓症

正解はaです。

ドレーン留置の目的は2つあります。
1つは性状の確認⇨術後出血副損傷の確認(肺癌の手術後の乳糜胸の有無、膵頭十二指腸切除後の膵液漏など)
1つは滲出液の排出⇨滲出液が体内に貯留するとそれが感染源になり創傷治癒が遅延します。

初期研修での外科必修化を受けて出題が多くなると考えます。主な出題は以下の通りです。

115A2、114D5、109E56:ドレーンの留置場所
112A21:ドレーン自己抜去後の対応
110I39:消化管穿孔の術後、手術室退室前にX線で何を確認するか⇨胃管の位置、ドレーンの位置、腹腔内異物の有無
114C41、112C57〜59、109D18:周術期管理

また、ドレーン留置についての問題は看護の国試に多く出ています。

108回午前47問目
胸腔ドレーン挿入中の患者の看護で適切なのはどれか。
1 ミルキングは禁忌である。
2 持続的に陽圧となっているか観察する。
3 ドレーンチューブに触れた後は手指衛生を行う。
4 ドレーンバッグは挿入部より高い位置に設置する

正解は3です。ミルキングはドレーン内容物を押し流すことです。ドレーンは陰圧にして滲出液を抜くために必要です。抜くためにバッグは低い位置に設置します。

104回午後93問
Aさん(45歳、男性)は、便に血液が混じっていたため受診した。検査の結果、直腸癌と診断され、自律神経を部分温存する低位前方切除術が行われた。術後6日。ドレーンから茶褐色で悪臭のある排液があった。体温38.2℃、呼吸数20/分、脈拍82/分、整であった。
Aさんの状態で最も可能性が高いのはどれか。
1 腸炎
2 胆汁瘻
3 イレウス
4 縫合不全
5 術後出血

正解は4です。悪臭のある排液は漏れ出した腸液で、これは縫合不全で結びつけた腸管の間から腸液が漏れていることを示唆します。本問のように術後1週間前後で生じる合併症で、腹膜炎をきたすと腹痛や発熱も見られます。

101回午前19問

画像40

正しいドレーンバッグの位置はどれか。

正解は2です。ドレーンバッグは挿入部より低い位置かつ床に接触せず、廃液がスムーズに流れるように置きます。

115A69:Brugada症候群

32歳の男性。会社からの帰宅後、全身倦怠感があった。38 °Cの発熱を認めたため少し早めに就寝した。 深夜、妻が横で寝ていると、突然うめき声をあげてその後動かなくなった。呼びかけても反応せず、妻が救急車を呼びながら胸骨圧迫を施行した。救急隊到着時の心電図モニターの波形(A)を別に示す。AEDによる除細動で洞調律に戻った後、救急外来に搬送された。救急外来での 12 誘導心電図(B)を別に示す。
この疾患について正しいのはどれか。2つ選べ。
a X 連鎖劣性遺伝をする。
b Kent 束が関連した病態である。
c 植込み型除細動器の適応となる。
d 発熱後に不整脈が誘発されやすい。
e 治療には Ic 群の Na チャンネル遮断薬が第一選択となる。

画像42

正解はcdです。過去問ではICD植込みくらいしか出てこなかったのですが、発熱で誘発されやすいという内容が出ました。

AでVFを認め、BでV1〜V3でcoved型ST上昇を認めることからBrugada症候群とわかります。心臓突然死を起こす疾患としてBrugada症候群の他にQT延長、虚血性心疾患、心筋症(肥大型、拡張型)が挙げられます。

☆Brugada症候群について(国試で過去に出た項目は太字)
・原因は複雑。Naチャネルの異常「だけではない」。ゆえに遺伝形式もAD以外にも様々。
発熱、就寝時、満腹時などに心室性不整脈(VFなど)の発作が起こりやすい。
⇨主訴は失神(数分以内に正常に戻る一過性の意識消失)が多い。
・突然死の原因となりポックリ病とも。突然死の家族歴がある場合は注意です。
・V1〜V3の特徴的な右脚ブロック+ST上昇(Brugada波形)を認める。
・ハイリスクの場合は植込み型除細動器(ICD)の適応です。

ICDの適応については115C32で出ています。

その他過去問には出ていない特記事項
・青壮年の男性、アジア人に多いです。
・Brugada波形にはcoved型(入江)とsaddle back型(馬の鞍)がある(心電図はググってください)
・coved型の方がsaddle back型よりも突然死のリスクは高いのですが、
正常波形⇄saddle back⇄coved と、可逆的に移行するものです。saddle backでも致死的な不整脈が起こらないわけではありません。
・ICDの適応:ガイドライン(下)を参照してください。大雑把に言うと致死的不整脈の既往や家族歴がある場合、誘発試験で誘発される場合に適応です。

上:ガイドライン

参考:

無症候性Brugada347例を4年間追跡で、Ⅰ誘導にS波があればリスキー。

画像43

115A70:血管新生緑内障

68歳の男性。左眼の視力低下を主訴に来院した。視力は右矯正 0.8、左矯正 0.1 で、眼圧は右 15mmHg、 左 35mmHg。左眼の写真を別に示す。
考えられる疾患はどれか。2つ選べ。
a 加齢黄斑変性
b 糖尿病網膜症
c 内頸動脈狭窄症
d 網膜色素変性症
e 裂孔原性網膜剥離

画像44

虹彩ルベオーシス(虹彩の新生血管)を認めるため、左眼の眼圧上昇は血管新生緑内障とわかります。その原因を選ぶためbcが正解です。

☆緑内障の分類

原発性と続発性に分けた際、続発性はその機序で以下のように分けられます。

画像45

そのうち血管新生は網膜の虚血や、腫瘍や炎症で惹起されるVEGF産生に起因します。また、115C39では外傷性白内障に続発する閉塞隅角緑内障(水晶体物質の遊離に起因)が出題されています。

網膜虚血は以下の3つが三大原因です。

画像46

115A73:高Ca血症

68歳の女性。救急外来での血液検査で高カルシウム血症を指摘されたことを主訴に受診した。3 日前に背部痛で救急外来を受診し、尿路結石症と診断された。高血圧症で通院中であり、尿路結石発作を過去に 3 回経験している。意識は清明。体温 36.2 °C。脈拍 82/分、整。血圧 156/90mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。右背部に叩打痛を認める。神経診察に異常を認めない。血液生化学所見:アルブミン 3.7g/dL、Ca 11.2mg/dL、P 2.4mg/dL、副甲状腺ホルモン〈PTH〉170pg/mL(基準 10~60)。腹部 CT を別に示す。
この患者の検査値として適切なのはどれか。2つ選べ。
a 大腿骨頸部骨密度低値
b 尿中 P 再吸収(% TRP)低値
c 尿中 Ca 排泄量減少
d 血中補正 Ca 濃度 12.5mg/dL
e 血中 1,25(OH)ビタミン D 低下

画像47

詳細はここに載せています。原発性副甲状腺機能亢進症でPTH↑によるCa↑とP↓です。

115A75:シックデイ、ステロイド離脱症候群

68 歳の女性。意識低下のため救急車で搬入された。5 日前から感冒症状が出現し、 食欲不振と倦怠感のため定期内服薬が服用できていなかった。3 日前から 38°C台 の発熱があり、自宅でうずくまっているところを家人が発見し救急車を要請した。 既往歴として、2 年前に非機能性下垂体腫瘍を経蝶形骨洞手術にて摘出されたが、 残存腫瘍を指摘されていた。以後ヒドロコルチゾンとレボチロキシンを継続服用 中であった。搬入時の意識レベルは JCSII-20。体温 38.4°C。血圧 80/46mmHg。 心拍数 122/分、整。呼吸数 24/分。SpO2 94%(room air)。血液生化学所見:血糖 65mg/dL、Na 121mEq/L、K 5.5mEq/L。
まず行うべき対応はどれか。3 つ選べ。
a NSAID の投与
b 生理食塩液の輸液
c グルコースの点滴静注
d ヒドロコルチゾンの静注
e レボチロキシンの胃管を用いた投与

正解はbcdです。

5日前の感冒時にステロイド需要の増加(シックデイ)に加え、定期内服のヒドロコルチゾンを辞めたことによるステロイド離脱症候群が考えられます。113D63、115B48でも同様の問題が出ています。

シックデイ
・3週間以上のステロイド投与者は視床下部–下垂体–副腎皮質が抑制され、コルチゾール分泌が抑制されています。
・ストレス下ではコルチゾールに需要が増加して、内因性のステロイドが分泌されますが、ステロイドユーザーではこれがうまくいきません。
⇨必要量に対して、現在の投与量が不足するため副腎機能低下症の症状が出現します。
・ストレスの大きさ(手術なら侵襲の強さ)に応じてステロイドの投与量を増やします。これをsick doseといいます。

ステロイド離脱症候群(SWS: steroid withdrawal syndrome)
・ステロイドの急激な中止、減量によって生じる副腎機能低下症状。
・長期のステロイド投与による副腎の萎縮の他に、ステロイドの受容体不応も原因として考えられています。そのためステロイドは段階的に投与量を減らす必要があります。
・内因性のコルチゾールはプレドニゾロン換算で2.5〜5.0mg/dayのため、これ以下への減量時は特に注意が必要です。
・内因性のコルチゾール分泌能の評価にはACTH負荷試験を行います。
・SWS発症時はグルココルチコイドを投与し、その後緩やかに漸減していきます。

その他:直近の過去問の使い回し

画像のみ。

115A2:ドレーン先端の留置先

画像1

115A4:免疫チェックポイント阻害薬

画像2

115A8:Child–Pugh分類と肝障害度

画像3

115A11:群発頭痛の急性期の治療

画像7

115A14:減圧症

画像9

115A15:身体依存

画像10

115A18:膀胱尿管逆流

画像11

115A19:過敏性肺炎

画像12

115A25:急性細気管支炎

画像14

115A29、115E14:手根管症候群、末梢神経伝導検査

画像21

115E14:末梢神経伝導検査

末梢神経伝導検査が診断に有用なのはどれか。
a 肘部管症候群
b Parkinson 病
c 多発性筋炎
d 脊髄損傷
e 脳梗塞

正解はaです。末梢神経障害を選べばよいです。

115A31:加齢黄斑変性

画像22

115A34:急性動脈閉塞

画像23

115A38:食物依存性運動誘発アナフィラキシー

画像26

115A44:シェーグレン症候群

画像28

115A46と115E24:好酸球性肺炎

画像29

115A47:機能性ディスペプシア

画像30

115A48:大動脈縮窄症

画像31

115A54:チック

画像35

115A56:精巣腫瘍の転移先

画像36

115A64:冠動脈バイパス術

画像41



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?