115A1:強皮症の腎病変
強皮症といえば腎クリーゼ以外にも肺高血圧や間質性肺炎、GERDやGAVEなど様々な臓器の問題が出現しますが、最近の過去問でも毎年のように出てる印象で結構突っ込まれてる印象があります。
強皮症患者の急激な腎機能低下では
①(狭義の)強皮症性腎クリーゼ👈血圧が一気に上がる。高用量のステロイド投与がトリガーになりうる。治療にACE阻害薬(カプトプリル)が第1選択。
②血栓性微小血管障害(TMA)👈血小板減少と貧血(破砕赤血球出現)。
③(稀ながら)ANCA関連血管炎(特にMPA)
などがあります。①と②の区別は国試にはまだ問われていません。
115A9:赤血球破砕赤血球
破砕赤血球が見られる原因を整理すると以下になります。
物理的な刺激、あるいは脆い赤血球により壊された赤血球が破砕赤血球(schistocytes)です。TMAの原因にTTPやHUSが入っています。
古い問題ですがこのような問題も出ています。
正解はcdeです。
115A10 血管炎 チャペルヒル分類
正解はeです。
aは若年女性に多い
bは特に関係ありません。
cはMarfanやホモシスチン尿症
dは巨細胞性動脈炎
血管炎については径によって分類があります。
115A12、115D54:関節リウマチの眼病変、血管炎
正解はae
cdは切れて、bは中枢神経病変は少ないという点から切れる?
正解はdです。関節リウマチで長期間治療中の人で新規に出現した皮疹で、炎症反応も高値となっています。ここから悪性関節リウマチ(rheumatoid vasculitis)と考えます。血管炎のため、皮膚生検して血管の炎症を確認します。
≪注≫(あくまで覚え方ですが)
関節リウマチはSjögren症候群との合併も多い。Sjögrenといえば、ドライアイやドライマウス。ドライアイになると…
⇨強膜炎や角膜炎
⇨強膜炎が進行するとその深層にある脈絡膜に炎症波及
⇨虹彩毛様体炎
≪注≫上強膜炎が血管炎で出現を知っておけば…
⇨ANCA関連血管炎でもSLEでも結節性多発動脈炎でも強膜炎は起こりうる
115A13:ヘモクロマトーシス
⇨正解はad
88回以降出題はなかったようですが…
上記以外にも
115A21:膿疱性乾癬
ポイントをまとめると
115A23:遅発性ジスキネジア
正解はaです。eはバリズムの説明です。
遅発性ジスキネジア(Tardive dyskinesia)の要点は以下です。
固縮・振戦のため抗精神病薬によるParkinson症候群です。この場合は抗Parkinson病薬(として書かれている)の抗コリン薬が有効です。
115A24:睡眠薬による前向性健忘
a:せん妄は意識の障害(見当識低下)+注意の障害(集中してそれを維持できない)が診断基準に入ります(DSM-5参照)。普通に歌い飲食しているため当てはまりません。
b:一過性全健忘(TGA)は再発することは少なくはないのですが、ここ2ヶ月で4回は多すぎます。また、エピソードも今回の問題とは異なります(後述)。
c:自分自身に関することが抜け落ちます。115D15で出ているためそちらで扱います。
d:正解
e:REM睡眠行動障害(RBD)ではREM睡眠中の異常行動(暴力的なものが多い)です。
類似の問題が2年前に出ています。
正解はad 他にも せん妄、過鎮静、眠気、依存、高度だと呼吸抑制に注意が必要です。
115A27:SLEの心外膜炎
Kussmaul徴候や奇脈を認め、画像では心囊液貯留(echo free space)と心外膜の輝度上昇があり答えはaです。
気になるポイントとして
115A28:喉頭内視鏡でポリープ様声帯を選ぶ
喉頭内視鏡画像はよく出題があります。
ただし
115A35:マムシ咬傷
eが誤りじゃなければ他の選択肢と矛盾(治療するのしないのどっちやねん)だからeしかありえない悪問…
今後国試で出ることはないと思いますが以下のreviewが役に立つと思います。
今後(出ないと思うけど)出るとしてポイントとなる点として考えられるのは
参考:緊急の場合はジャパン・スネークセンターへの問い合わせも選択肢に。
115A36:尿道損傷
正解はc
以下の問題はリバイバル対策として重要と考えます
115A37:ニューモシスチス肺炎(PCP)
正解はcです。
115A39:Fisher症候群
正解はeです。前駆する感染に加え、Fisher症候群の3徴(失調性歩行、眼球運動障害、腱反射消失)があります。この類縁疾患はGBSです。
Fisher症候群についてはガイドラインが出ていてそこに詳しく書いています
115A40:周術期心筋梗塞(PMI)
同様の問題は111C30、31(連問)で出ていますが、周術期心筋梗塞について。
こちらもガイドラインがフリーで読めます(リンク先27ページ)
115A41、115D46:肺高血圧症
正解はeです。Ⅱpの亢進、左第2弓(肺動脈陰影)の突出、エコーで推定肺動脈圧が高値から肺高血圧症の疑いです。確定のために右心カテが必要です。
正解はaです。右心不全症状があり、Ⅱ音の亢進があります。Xpは右第2弓(右房)の突出があり、心電図ではV1、V2でR波増高と陰性T波があります。
肺高血圧症の治療ガイドラインは以下です。
正解はdです。mean PAP↑が定義です。肺血栓塞栓症は第4群、右心負荷のため左第2弓(肺動脈)や右第2弓(右房)の突出を認めます
115A42:慢性便秘に浸透圧性下剤投与
正解はdです。
2017年に慢性便秘のガイドラインが出ています。
気になるポイントとしては下剤についての出題があったことです。長くなったため別の記事に書きました。
115A43、115D32:輸血製剤の使用指針
正解はaです。血液製剤の使用指針が以下にあります。
その上で問題を解くために必要な知識として
正解はeです。MDSでは同種幹細胞移植を行いますが、本症例は78歳と高齢なため行いません。Hbが7を下回り貧血症状が出現していることから輸血を行います。
115A45:SIADHの診断と治療
低Naで血清浸透圧低値、尿浸透圧高値、尿中 Na高値からSIADHを考え、治療として水分制限を選ぶ問題です。
こちらの記事でも書きましたが、低Naをきたす疾患は多くあります。この問題で尿中Naがどうのと書いてあることから111回、113回で出た肝硬変心不全の低Naも再度理解しておきたいです。
115A49:外反母趾の治療
画像から外反母趾は分かります。明らかな間違いがeのため正答率は高かったのですが、外反母趾自体は96D46、90B79以来出題はありませんでした。
2014年にガイドラインが出てて以下でフリーで読めます
115A50:NERDの出題
胸焼けのエピソードから胃食道逆流症(GERD)が疑われます。GERDは粘膜障害を認める逆流性食道炎と、粘膜障害を認めないNERDに分けられます。今回は内視鏡では典型的なヒトデ型びらんは見られませんのでNERDが正解となります。
115D53に逆流性食道炎の画像があるため、合わせて見てください。
≪注≫ 選択肢c 好酸球性食道炎(教科書的には白斑や溝を認めるが正常所見もあり)との鑑別が微妙な場合も…⇨必要に応じて生検も行う
NERDについてはGERD診療ガイドライン(下のリンク)のp21に記載があります。
115A51、115F32:高齢者の高血圧、転倒
①:正しいです。降圧のための減塩は重要なのですが、薄味にすると食べなくなってしまいフレイルに陥る人もいます。
②:正しいです。113D8に出題があります。このことから転倒のリスクが高く注意が必要です。
③:正しいです。消化管への血流↑の一方で、調節機能が働かず脳血流↓となり起こります。高齢者のふらつきやめまいの原因として重要です。
114F60に出題(食後の全身倦怠感を説明し得るのはどれか⇨食後60分の血圧低下)
④:誤りです。降圧薬として第1選択にできますが、電解質フォロー(Na↓K↓Ca↑Mg↓)は必要ですし、尿酸値上がるため痛風既往の人には使いにくいし、耐糖能低下をきたすため糖尿病合併例に禁忌など難点ありです。
⑤:正しいです。両者2剤の併用は腎機能悪化などの有害事象を増すばかりで推奨されません。
参考:OnTarget study
高齢者の高血圧については毎年のように出題があります。
正解はcです。高齢者では血圧の調節機能が低下するため様々な血圧異常をきたします。特に収縮期血圧↑に対して拡張期血圧↓で脈圧開大は特徴的です。
aについては翌年に出題があります。
114F60:食後の全身倦怠感を説明し得るのはどれか⇨食後60分の血圧低下
その他、高血圧単体よりも様々な疾患との関係、ポリファーマシー関連の問題も多いです。直近だと115F32、114C72–74、113D75など。他にも他職種連携や退院後の注意など幅広く出てます。
例)高齢者の転倒
・ベンゾ?(⇨薬確認して可能なら辞める)
・貧血?(ワルファリン飲んでて出血かも。内視鏡でcheck)
・低血糖?(血糖測定、糖を入れる)
・不整脈?(心電図も忘れずに。薬の影響かも。)
・低血圧?(降圧薬効きすぎ?起立性?食後?)
・他の要因は?(自律神経障害をきたす疾患、筋力低下、視覚障害、小脳や位置覚の障害、前庭機能障害など)
正解はaeです。
115A52:子供がタバコを食べた
100D29のプール問題です。翌年の101D13では胃洗浄が出ているので、116回で胃洗浄を選ぶタバコ誤飲が出る…?胃洗浄の適応の確認はマスト
正解はbです。食べた量が少なく中毒症状が出ていないため現時点での治療介入は不要です。ただし遅れてから中毒症状が出ることも報告されているためすぐには帰さず4時間ほどは経過を見なければなりません。
a:胃洗浄の適応は誤飲後1時間以内です。胃洗浄自体は誤嚥リスクのある手技のため、必要なケース(中毒症状ありなど)に限って行います。
cd:下剤は活性炭とセットで投与します(つまり救急領域で下剤のみで正解になることはまずないでしょう)。これらをやってもいいですが、胃洗浄より優先させる理由もないし、現時点で中毒症状がないため不要でしょう。
ポイントとしては…
115A53:ソモジー効果と暁現象、インスリン製剤
115A55:オージオグラム
音響暴露があり騒音性難聴を考え、C5 dipのある図を選びます。4000Hzを中心とする聴力レベル上昇が特徴的です。
過去に出たオージオグラムについてはこちら
115A57:妊婦のshock index
妊婦は shock index 1.0 で出血量 1.5L、shock index 1.5 で出血量 2.5L と推定されます。ゆえに本症例ではSIは1.5ゆえ、推定出血量は2.5Lとなります。
115A58:最終健常不明の脳梗塞でDWIとFLAIRの重要性
正解はdです。不整脈あり(AF?)。画像では右MCAの一部に閉塞があり脳梗塞と分かります。
気になったポイントはeの選択肢で、今回は最終健常時間が不明です。その場合に拡散強調画像(DWI)では高信号だがFLAIRでは信号変化が見られない所見(DWI-FLAIR mismatch)がある場合は、発症時間4.5時間以内であると考えt -PAを使えます。
上記の論文をうけ、静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針第三版(2019年)、脳卒中治療ガイドライン2019でもこの話は入っています。
今後は本問題のようなwakeup strokeでDWIとFLAIRからt-PA適応を考える問題が出ないとも言い難いです。
115A60:溶骨性変化で疼痛のある多発性骨髄腫の治療
多発性骨髄腫についてはこちらにまとめています。
65歳未満のため自家造血幹細胞移植の適応となっています。また標準治療のVRd療法(ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメサゾン)が選択肢adです。ビスホスホネートは支持療法として用いることが113F62に出ています。
eの放射線照射は骨髄抑制や全身状態悪化のリスクのため近年はほとんど行われません。
115A61:Sturge-Weber症候群
中枢神経の毛細血管奇形によって脳の虚血を起こすため、結果として片麻痺、精神遅滞、てんかんが起こります。また虚血後の変化で石灰化を認めます。
網膜色素変性は桿体細胞の障害で夜盲が特徴的ですが、今回は血管奇形と無関係のため誤りです。
過去に出てるSturge-Weberは以下です。
上記を考えるに新規の出題事項が多い印象です。
115A63:ドレーン留置
正解はaです。
初期研修での外科必修化を受けて出題が多くなると考えます。主な出題は以下の通りです。
また、ドレーン留置についての問題は看護の国試に多く出ています。
正解は3です。ミルキングはドレーン内容物を押し流すことです。ドレーンは陰圧にして滲出液を抜くために必要です。抜くためにバッグは低い位置に設置します。
正解は4です。悪臭のある排液は漏れ出した腸液で、これは縫合不全で結びつけた腸管の間から腸液が漏れていることを示唆します。本問のように術後1週間前後で生じる合併症で、腹膜炎をきたすと腹痛や発熱も見られます。
101回午前19問
正解は2です。ドレーンバッグは挿入部より低い位置かつ床に接触せず、廃液がスムーズに流れるように置きます。
115A69:Brugada症候群
正解はcdです。過去問ではICD植込みくらいしか出てこなかったのですが、発熱で誘発されやすいという内容が出ました。
AでVFを認め、BでV1〜V3でcoved型ST上昇を認めることからBrugada症候群とわかります。心臓突然死を起こす疾患としてBrugada症候群の他にQT延長、虚血性心疾患、心筋症(肥大型、拡張型)が挙げられます。
ICDの適応については115C32で出ています。
上:ガイドライン
参考:
無症候性Brugada347例を4年間追跡で、Ⅰ誘導にS波があればリスキー。
115A70:血管新生緑内障
虹彩ルベオーシス(虹彩の新生血管)を認めるため、左眼の眼圧上昇は血管新生緑内障とわかります。その原因を選ぶためbcが正解です。
☆緑内障の分類
原発性と続発性に分けた際、続発性はその機序で以下のように分けられます。
そのうち血管新生は網膜の虚血や、腫瘍や炎症で惹起されるVEGF産生に起因します。また、115C39では外傷性白内障に続発する閉塞隅角緑内障(水晶体物質の遊離に起因)が出題されています。
網膜虚血は以下の3つが三大原因です。
115A73:高Ca血症
詳細はここに載せています。原発性副甲状腺機能亢進症でPTH↑によるCa↑とP↓です。
115A75:シックデイ、ステロイド離脱症候群
正解はbcdです。
5日前の感冒時にステロイド需要の増加(シックデイ)に加え、定期内服のヒドロコルチゾンを辞めたことによるステロイド離脱症候群が考えられます。113D63、115B48でも同様の問題が出ています。
その他:直近の過去問の使い回し
画像のみ。
115A2:ドレーン先端の留置先
115A4:免疫チェックポイント阻害薬
115A8:Child–Pugh分類と肝障害度
115A11:群発頭痛の急性期の治療
115A14:減圧症
115A15:身体依存
115A18:膀胱尿管逆流
115A19:過敏性肺炎
115A25:急性細気管支炎
115A29、115E14:手根管症候群、末梢神経伝導検査
115E14:末梢神経伝導検査
正解はaです。末梢神経障害を選べばよいです。
115A31:加齢黄斑変性
115A34:急性動脈閉塞
115A38:食物依存性運動誘発アナフィラキシー
115A44:シェーグレン症候群
115A46と115E24:好酸球性肺炎
115A47:機能性ディスペプシア
115A48:大動脈縮窄症
115A54:チック
115A56:精巣腫瘍の転移先
115A64:冠動脈バイパス術