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生きのびるために、生きる言葉を。 〜図書係山と川のこと〜
あなたの言葉で話して 夜が明けるまで
3年目を迎えるにあたって
選書ユニット「図書係山と川」という活動を始めてからもう少しで2年が経とうしています。この間に選書をさせてもらったのは8人で「活動を始めてから」なんて言うのもおこがしいほどですが、自分にとって彼ら彼女らの個人的な話を聴かせてもらった経験は、とても得難いものになったのでした(図書係山と川では、選書をするにあたって事前にインタビューをさせてもらいます。本に関係ない個人的な話などをいろいろうかがっています)。
3年目を迎えるにあたって、今後の活動について考えていることを記していきたいと思います。
世間にお手軽な「オススメ」が溢れていることへの違和感から、その人に「ぴったりあった一冊を、時間をかけて選びたい」という思いでこの活動を始めました。選書をするにあたっては2時間ほどのインタビューを行い、自分たちが知らない、読んだことがない本も含めてそのひとにぴったり合う1冊を探しました。
活動を始めた当初に書いた記事はこちらです↓
活動を進めるなかで、ふたりの興味が本を選ぶことよりも「だれかの個人的な話を聴く」ということに比重が移っていくようになりました。
本を選ぶための手段だったものが、次第に目的になっていきました。
インタビュアーはユニットを組んでいる藤川さんがほとんど担当してくれました。わたしは横で(といってもオンラインですが)聴きながら、節目節目で気になったことをいくつか質問する役です。
「インタビューでは本に関係ない話をしましょう」と事前に話していたのですが、藤川さんの質問は幼少期の話、家族の話、好きだった先生の話など、本当に様々でかつ相手が「これ選書に関係あるのか」と思ってしまうのでは、というものばかりでした。でも、そこから始まった語りがとても生き生きとしているということがたくさんあって、わたしにはそれがとても面白かったのでした。
そこで語られるのは、個人的な事柄でありながらもどこかで自分にも響いてくるものでした。そんな話をもっと聴きたいと思うようになりました。むしろ、これが今までずっと自分がやりたかったことなのではないか、そんなことを藤川さんに話したりもしました。
ただ、ここまで書いてきたとおり選書をするのにとても労力と時間がかかり、結果としてなかなか多くの人の話を聴くことはできませんでした。自分で決めた枠組みに自分で苦しめられてしまっているような…
もう少し肩の力を抜いてやってもいいのかも、ということで先日話を聴かせてもらった方には、「一冊を厳選して贈る」という今までの形とはちがった形で本を贈らせてもらいました。
それがこちらです。
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『図書係からの手紙』というタイトルの一冊の本です。しまうまプリントのフォトブックのサービスを使って作成しました。
見開き1ページにひとつの言葉を記しています。インタビューを通じて想起されたその人に贈りたいと思った言葉を、本や音楽、広告コピーなどから引用しています。ここでは9つの言葉を選ばせていただきました。ここで紹介されている本などを、実際に手に取るかどうかはその人におまかせしたいと思います。人に薦められたものって「読まなきゃ(観なきゃ)」とか思ってしまって、それはそれで窮屈な気もしてしまうので。もっと気軽にとらえてもらえればありがたいです。
最後のページには山と川のキャッチコピーを載せることにしました。
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「生きのびるために 生きる言葉を。」
このコピーは藤川さんの手によるものです。
これからのこと
というわけで、誰かにインタビューをして一冊の本を贈るという活動は継続して行っていきます。その人にとってのオーダーメイドのブックガイドとも言えますが、紹介できる作品はひとりの人間の知識の範囲によるので、ごくごく限られたものであることはご容赦ください。
並行して、私設図書室ももっとたくさんの人に利用してもらえるような場所にしていきたいと思います。
悩んでいた図書室の名前は「図書係山と川の図書室」(そのまんま)とします。
図書係山と川の3年目はインタビューと図書室、この2つを柱にもっともっとたくさんの方に利用してもらえるように頑張っていきます。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
あなたの言葉を聴かせてください。
【付記】
山と川のロゴは藤川さんの先輩であるデザイナーの岩村さんが作ってくれました。本に手を伸ばす二人がいます。