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「FiNC」ブランディングプロジェクトの軌跡〜Better Together〜

どうも株式会社FiNC Technologies CCO(Chief Creative Officer)の小出です。FiNCでは現在執行役員としてマーケティングとクリエイティブの責任者をしています。

この度私たちが取り扱う「FiNC」というサービスのリブランディングを3月18日にFiNCブランドアンバサダーに就任した中村アンさんの記者会見を皮切りに正式発表いたしました。

今回リブランディングを行なったサービス「FiNC」ですが、昨年社名をFiNCからFiNC Technologiesに変更し、それからはこの「FiNC」という名称は弊社におけるサービスを指すものとして扱ってきました。

FiNCというサービスには我々のサービスの母体となっているヘルスケアプラットフォームアプリFiNCも含まれますし、サブスクリプションサービスのFiNCプレミアムや、ECサイトのFiNCモールなんかも含まれています。整理するとこんなイメージです。

我々は今回のプロジェクトを通してこういったサービスの整理だけでなく、ブランドとして、サービスを通してどういった発信をお客様に対して行なっていくのかを真剣に考えてきました。

今回に至るまで僅か5ヶ月(実質稼働は3ヶ月もないかもしれない)と、恐らくリブランディングをする会社の中でも他に類を見ない速さで進めた今回のプロジェクトですが形になるまで様々な葛藤があり、紆余曲折あって完成に至りました。

今回のリブランディングで完成までに行なった手順は簡潔にまとめると以下の4点です

1:思想をまとめ整理する
2:思想をデザインエレメントやシステムに落としていく
3:よりToCに向けた言葉に変換する
4:上記を踏まえてアウトプットの制作

私達は今回の中村アンさんとの発表を控えていたのもあり可能な限りそのスケジュールと合わせて発表を行いたかったので、完成に至るまでとてもスムーズに可能な限り周り道をする事なく進めていかなければいけませんでした。これらを短い期間でどう形にしていったのか、皆さんの何か参考になればと思い、書いていこうかと思います。

はじめに

まず今回のプロジェクトが発足したキッカケから書いていきます。

私たちのアプリは昨年1年間だけでおおよそ300万ダウンロードしており、その前年が100万ダウンロードだった事を考えるとおよそ3倍のユーザーを獲得した事になります。現在500万ダウンロード突破した事を考えるとすでに3ヶ月で100万ダウンロードしている事になるため獲得のスピードもかなり増えているのが分かるかと思います。

ただ私達が獲得してきたこのユーザー達は主にDR広告と呼ばれる各種SNS広告などを通してある程度のコストをかけて得てきたものになります。もちろんオーガニックで入ってきているユーザーもそれなりの数いますがほとんどはこのペイド広告で得たユーザーになります。

これらは別に悪い事ではなく、広告を出し、見てくれたユーザーが使ってみたいと思ってインストールしてくれているので企業としては当たり前のマーケティング活動ですし、いかに一人当たりのユーザー獲得単価を落として流入させられるかもマーケティングをする上で必要不可欠です。この辺りのPDCAを弊社のデジタルマーケティングチームが2年間かけてかなり効率化した事もあり、FacebookさんやGoogleさんにも事例化として取りあげられることも多く一定の成果を得られてきたと思っています。

ただし今後キャズムを超えるにあたってこのままお金を使ってダウンロード数を伸ばしていく事には限界があります。1人あたりのCPIが仮に300円だとしても100万人獲得するのにかかるお金は3億円。1000万ダウンロードにするために残り500万ダウンロードをペイドのみで獲得しようとすると15億円もかかってしまいます。2000万ダウンロード、3000万ダウンロードを目指すとなるとお金がいくらあっても足りません。

こういった中でしっかりと純粋想起(ハンバーガーといえばマック、コーヒーといえばスタバのような)をとっていきオーガニックの比率を高め意図的に、お金をかけずに獲得できるユーザーの数を増やしていかない限り事業としても大きな成長は見込めなくなってしまいます。

そんな中で弊社はVision Mission共にとても強みのある会社である自負はありますが、それらを多くの株主様や従業員、お取引のある会社様や採用時など充分に説明する時間のある場合においては私達の想いや、やりたい事を明確に今までも伝えてこれたかと思っています。

ただ、一番大切な実際サービスを使っていただいているお客様に関しては、このような想いをマーケティングをする上で端的に届けるのはなかなか容易ではなくとても大変です。潜在的には健康、美容、ダイエットに興味関心を持っていても行動出来ていない方達にどういう形で届けるとFiNCというアプリに興味関心を持ち注目してくれるか、考えて広告を作っていった結果が、現在DR広告で行なっているようなダイエット訴求や機能訴求です。それらは獲得の効率は良いのですが本来私たちがやりたい事と少しだけ訴求がずれてしまう場合がある点と、それ以上の訴求の視点がなかなか見つかりにくくなっているのも大きな課題でした。

私達は前記した通りこの形である程度勝ちパターンのようなものは明確に見つけていた一方で、本来私達が成し遂げたい想い、思想みたいなものをどうにかアプリを活用してくれるもしくはこれから使ってくれるお客様に対してもしっかり発信していきその上でしっかりと愛してもらえるサービスとして定着させたいと思ったのが今回のプロジェクトの発端だったかと思います。


思想を、整理する。

そんな課題感の中、弊社CEOの溝口と共にどのように進めていくか話し合いました。とても大きなプロジェクトになる事が容易に予想されたのと、内製の経験値だけで進めるのは時間を要するし初めから出来るだけリスクを軽減してスタートした方が良いという点で合意し、外部のブランディングを主に行なっているエージェンシーを活用しながらうまく進めていく事になりました。

いくつか候補の会社があったのですがスピード感とスタートアップの空気感を理解してくれるパートナーとして「Nagatacho GRID」や「T.LEAGUE」などのブランディングを手がけた、高木新平さん率いるNEWPEACEを選択しました。高木さんは弊社CFOの小泉から紹介を受けたのもありますが、同じくCTOの南野もたまたま昔の知人だった事もあり他の役員人の理解も早くスムーズにスタート出来たと思っています。

NEWPEACE社に加えてCDにBSPK™.incの石川達也さんを迎え入れて今回のプロジェクトはスタートしました。まず彼らと行なったのは思想の整理です。創業者である溝口が彼らのインタビューに対して思った事をそのまま伝え、成し遂げたい事、大切にしている事、沢山のキーワードを抽出してどういった会社であるのか、「FiNC」というサービスはどういったものなのか。その辺りを整理して行きました。

FiNCとは、ユーザーにとってどんな存在なのか?すべてを包括する「FiNC」とは一体どんなブランドなのか?このような問いに対して言葉の整理を行なっていきました。

その中で我々の昔から大切にしているVisionMission

この他にも様々なキーワードが抽出された中で結論、このVision Missionに加えサービスを作る際に意識している、「手間なく、楽に、楽しく、個人に最適化し、安価に」という言葉と共に集約されていくわけですがこのような言葉でまとまりました。

Visionにもあるように私たちは皆さんの人生の成功を願っていますしサポートしたいと思っています。健やかに、健康である事は人生を豊かにするための基盤だと思っていますしヘルスケア事業を私たちが行なっているのもそのためです。個人に最適化することの大切さ、全ての人にパーソナルAIを届けたいと想うMissionからあなただけのパートナーというキーワードが出てきています。スマートという表現は最近のスマートウォッチやスマートフォンなどテクノロジーを指す言葉としてより分かりやすくカジュアルに表現した言葉ということであまり弊社の中では使ってなかった表現ですが起用することにしました。テクノロジーによる助けもありスマートという言葉には手間が無くなることも含まれます。最後に楽しくするという言葉、これはこの後C向けのメッセージの中にも含まれてきますので詳しくは後述します。

こういった言葉を背景に、さらにシンプルにまとめ上げた言葉が次の言葉になります。

私たちは皆さんのパートナーとして一緒になって人生を健やかに楽しくしていく、そんな存在でありたいと想う気持ちがこの言葉には込められています。

「Better」=「より良い・笑顔」 「Together」=「一緒に・パートナー」

Wellnessという状態のブランドではなくBetter Togetherという行動のブランドとして世の中に私たちのメッセージを伝えていけたらと思っています。

整理された想いを文にするとこのようになります。


思想を、記号化する。

これまでで私たちの思想の整理は行なえたので、次にこの言語を記号化し、ブランドを伝えていく上で視覚的に必要なデザインエレメントを作成しました。

私たちがエレメントを作成する上で意識したポイントは2点です

・どのアウトプットを、どこで見ても、0.5秒でFiNCだと分かるビジュアル言語を構築していく。
・キレイなものを作るのではなく、脳に残すこと。

その上で整理された思想の「BETTER TOGETHER」からこのような形が生まれました

BETTERで表現されているのはSMILE(笑顔)、TOGETERで表現されているのはBUDDY(パートナー)です。SMILEは見たままですが、BUDDYは片割れだけでは完全な存在になれないもの、それはあなた「You」と形でもある「U」がかかってFiNC Uというシンボルが生まれました。このSMILEやUの形はかなりのパターン数から考慮され、最終的にこの形に落ち着いてます。

今までもFiNCのアプリケーションのアイコンやナビゲーション役として登場したフィンクちゃんも同様の笑顔でしたがその形自体には特に意味はなく、なんとなく可愛いからとデザインされたものでした。今回新フィンクちゃんとしてこのSMILEを使っていくのですが、しっかりと意味合いを持たせて「FiNC FACE」というものが生まれた事でフィンクちゃんの存在意義もより強まったように思います。旧フィンクちゃんには長い間沢山のユーザーのサポートを頑張って貰ったのもあり愛着が湧いている社員も多かったのですがこれからのブランディングのために英断となりました。さよなら旧フィンクちゃん、、お疲れ様でした。

また、これらは仮に当てはめているだけなので実際使われるかは分かりませんが、FiNC Uのエレメントもこのように各プロダクトや資料への展開なども考えられます。

「BETTER TOGETHER」という思想を記号化し、デザインシステムへ展開することで、 どんなアウトプットになってもFiNCの思想と機能に落ちる構造に仕上げていきました。

また普段私達が表現の幅を広げるためにデザイン上で使っているグラデーションにもより強い意味をつけたり、サービスロゴも今回のビジュアルをまとめる際により記憶に残りやすいものに仕上げていきました。

「上昇、体温が温かくなり、心がドキドキするようす」

健康において重要な体温(サーモグラフィーで温かいところを指す色味)や楽しくするためのワクワク感を伝えるために色の調整を行いました。

ブランドカラーに関してもグラデーションの両サイドのカラーを明確に使う事で今までのピンクだけでなく黄色の差し色が追加されました。

ロゴに関しても、ブランドの英語指定フォントをGothamフォントにしたのもありその形状をベースに、そのままでは綺麗にまとまり過ぎているのでより記憶に残りやすいようにあえて引っかかりを感じさせるような不規則性の調整を行い新しいFiNCロゴが生まれました。


BRAND VOICE

ここまでまとめて来た「BETTER TOGETHER」という言葉はインターナル向けには非常にまとまっていて、それをベースに記憶に残すためのデザインエレメントの制作も出来ました。ただ潜在顧客とのコミュニケーションにおいては、目に見えるデザインのエレメントだけではなく言葉というのもとても大切になってきます。より分かりやすいC向けに寄り添った言葉に変換する必要がありました。

そこで私達が持っている思想をベースに、今の時代感やユーザーの心理などを含めて発信する言葉を熟考しました。そこで行き着いたのが、例えばダイエットをするにしても、マラソンなどの運動をするにしてもSNSなどを活用してその準備期間や過程をアップして楽しんでいる(もしくは共有することで頑張っている)方達が多いように思えます。その反面今の時代は大半の情報が、結果論・方法論に集約され結果がすべてであるからこそ、すぐHOWTOになってしまうという実状もあります。

私たちはそういった結果に執着する事で制限されたり、コントロールされた世の中よりも今の時代に合った、その過程・プロセスを楽しむという事に着目しました。

制限(CONTROL)することから楽しむ(PLAY)形へ

まるでスポーツを楽しむかのように、健康活動や綺麗作りも楽しんでいけたら、そんなサービスを提供できたら、冒頭の言葉にも出てきましたが「人生をもっと健やかに楽しく」する事が出来るんじゃないかと私達は思っています。

英語の文法的にはおかしな部分もあるかもしれないですが、分かりやすさを優先して。例えばこのように健康そのものを楽しんだり、体つくりを楽しんだり、歩くことを楽しんだり。ターゲットによって言葉をうまく変えていけたらと思っています。

直近アプリのターゲットにしている女性達はキレイつくりに日々励んでいます。そういったキレイつくりを楽しいものに、ブランドとして彼女達の目的をエンパワーすることが出来たら素晴らしいと思い、このコピーを使って直近はプロモーションをしていこうと思っています。

この想いを文にすると以下のようになります


アウトプットの制作

このような形でまとめたものをベースに実際今回ブランドアンバサダーになって頂いた中村アンさんと一緒にクリエイティブの制作を行なっていきました。

如何でしょうか。今までのヘルスケアのイメージには無かった楽しさやワクワク感が表現されているのではないかと思います(実際この辺りのアウトプットに時間がかかったのでその手前の整理までは3ヶ月かかるかかからないくらいで行なっています)。

「カラダのすべてを、ひとつのアプリで。」

このキービジュアルの中にもありますが私達のアプリは、アプリひとつでカラダのすべてを知る事のできる唯一無二のサービスにしようと思っています。それらは冒頭の思想にもまとまっていますが、私達は一人ひとりのパートナーとして、最先端のテクノロジーを駆使し、あらゆる角度からヘルスケアをスマートに変えていき、すべての心とカラダに寄り添って楽しく健やかな毎日を皆さんと一緒に歩む事で叶えられると思っています。

ブランドのアウトプットはこのようなデザインや言葉だけでなく、サービスの体験を通してしっかりと形になっていくものだと思っています。このように外観をうまく固めても中身が無ければ何も意味を成さないのでサービスを通してしっかりとブランド作りをして行かなければいけません。

そういった意味ではここからが本番です。従業員一人一人がここに書いたことを意識してサービス作りに励んでいけたらと思っています。

長文でしたが最後まで読んでいただきありがとうございました。

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