過去は消せないけれど、イメージは変えられる。
俳優 窪塚 洋介さんの「ことば」
皆さんが産まれる数年前の2000年前後、当時私は大学生でした。ちょうどその頃に人気絶頂だった、俳優の窪塚 洋介さんの「ことば」を紹介します。
今の芸能界で例えると、菅田 将暉さんあたりが重なるでしょうか…?出演するドラマでは、主演じゃなくても圧倒的な存在感を放ち、一気に人気が出始めました。2000年に放送されたドラマ「池袋ウエストゲートパーク」で若者からの人気がものすごく加速して、その後も話題作に出演し続けました。そして、ドラマの主演や映画の主演が続き、映画「GO」が大ヒットして、日本アカデミー賞主演男優賞をはじめ、様々な賞を総ナメにしました。
そんな中で、作品ごとに全く違ったタイプの役を演じ続ける彼の一挙一動は、世間のから大きな注目を集めることになりました。スタイルが良く中性的な雰囲気で魅力的な男性を演じていたかと思えば、一気に丸刈りにして社会に強く訴える過激な役を演じてみたり、出演作の役が彼の存在感を日に日に塗り替えていくような感じにも見えていました。
そんな彼を、単純に俳優さんとして私はすごく好きだったので、当時わざわざ東京まで出向いて映画の試写会に行ったこともあります。ドラマも映画もほとんど観ていましたし、インタビューされた雑誌の記事にも目を通すほどでした。話し方だけでなく、彼の「ことば」のチョイスが好きだったこともあるかも知れません。若かりし私にとって、2歳年上で輝かしい世界で活躍する存在として、憧れの気持ちを抱く対象でした。
そんな風に芸能界で華々しい活躍を遂げていた最中、突如として入ってきたニュースに耳を疑いました。
「窪塚洋介、9階から転落したってよ!」
本当に驚きましたが、マスコミからは当時ちょっとずつ発言や言動が独特な人として扱われるようになっていた頃だったので、その出来事を機に、好奇の目で見られるような存在へと変わってしまったように感じました。奇跡的に一命を取り留めましたが、その後しばらくは活動する姿を見せていませんでした。しかし、徐々に映画を中心にまた活動を再開し、2017年には映画「沈黙」でハリウッドデビューも果たし、ここ最近は年々活躍する姿を見せてもらえる機会が増えてきました。ファンとしては嬉しい限りです。
(※ちなみに、レゲエシンガー・卍LINEとしても活躍しているようですが…曲はあまり聴いたことがありません。)
さて、窪塚さんについての紹介がだいぶ長くなってしまいましたが、そんな彼が最近答えたインタビューを読んでみると、↑に書いた転落事故のことも話していました。
「過去に起こったことは消せないけれど、イメージは変えられる。そう考えるとすべてがかけがえのない過去になって、前に進む力になる。だからこそ落っこちてよかったと、今は腹の底から思える。いい事も悪いことも含めて自分らしい生き方だった。ピンチはチャンスとよく言うけれど、本当にやべえときってすげえよくなるときのためのギフトなんです。」
「窪塚洋介、人気絶頂期の転落事故は「ギフト」 今年の目標はYouTubeで腸活啓蒙」10/1(木) 11:32配信 ABEMA TIMES テキスト:石井隼人
https://news.yahoo.co.jp/articles/29ac17ae74f08380bcb282f19aedfae8e72b498d
確かに、過去の出来事は消せません。彼が9階から落っこちたことも、ドラマや映画に出演したことも。でも、イメージはここから先の出来事次第で変えていけるんだなぁということを、改めて強く感じました。
そう感じさせられたのは、一人のファンだった(肯定的な見方をしていた)私でさえ、あの転落事故は結構なマイナスイメージを植え付けられたからです。当時、ワイドショーでも大きく取り上げられていたので、色々な話が飛び交っていました。「事故か?事件か?」というだけでなく、彼についての様々な憶測も出ていたので、俳優として相当なイメージダウンはあったはずです。内心では、『もう見られることはないんだろうなぁ…』と残念な想いを抱く私もいましたし。
それが、16年くらい経った今、また彼は俳優として輝いています。もちろん、『昔、飛び降りちゃった人でしょ。』なんて前置きがついてしまう場面もあるかも知れませんが、やっぱり改めて今見てみるとすごく魅力的な俳優さんだし、「ことば」に力がある人だとも感じます。だから、落ちてしまっていたイメージもまた変わってきたし、今は素直に一人の俳優さんとして観たい気持ちが強まっています。
このインタビュー後半にある「本当にやべえときってすげえよくなるときのためのギフトなんです。」という話も、妙にしっくり来るし、実際に”本当にやべえ”体験をした彼だからこそ、説得力があって勇気を与えてくれるメッセージだなぁとも感じます。私にも皆さんにも、おそらく”本当にやべえ”という場面は、これから先にもやってくると思います。その時に、『これは、すげえよくなる時のために、与えられたものなんだなぁ…』と前向きに受け止められたら、そう簡単には挫けない人間になれそうな気もします。著名人やスポーツ選手が世間に向けてメッセージを送るのは、こうやって私たちに勇気や希望を与えてくれるためなんでしょうね。
せっかくなので、作品紹介「GO」
上で紹介した「ことば」は、一人の俳優として窪塚さんが話したものです。その彼が出演した作品で、特に印象深かったものをチラッと少し紹介します。
・映画「GO」(2001、監督 行定 勲、脚本 宮藤 官九郎、原作 金城 一紀)
在日韓国人を描いた青春映画ですが、主人公・杉原の姿を通して、国籍とは・社会とは・恋愛とは・名前とは…などなど、色々なことを考えさせられる良い作品です。若かりし自分にとっては、すごく考えさせられるキッカケを与えてくれた名作だと思っています。
話の中でも登場する「ロミオとジュリエット」の台詞。【名前って何?バラと呼んでいる花を別の名前にしても美しい香りはそのまま。】というものが、妙に考えさせられました。名前なんて、単なる記号なんだなっていう話。「ライオンは自分のことをライオンだなんて思っていないし、それは周りが勝手につけた呼び名でしょ。だったら俺は俺でしかないし、むしろ俺であっても俺じゃなくても、どっちだってイイんだよ!チクショー!」という感じの話を窪塚さん演じる杉原が話していて、とても響きました。
他にも素敵な作品は沢山あるのですが、今回はここまで。